「土鍋」

脚本・監督 ブレード・ムラタ

1992年NOVA Entertainment作品

 これは自他ともに認める、自分の代表作。
 単に出来がいいというだけでなく、自分の中で和製コメディを確立できた、いわばターニングポイントに位置する作品。シナリオも映像ものっけられないのが残念だが、この作品はたいていの人に楽しんでもらった。もう村田といえば「土鍋」といった具合に。

 これの撮影は大変だったよ。
 何せ真夏の夜に鍋をやる設定だったから、昼間の撮影では窓にラシャ紙はりつけて、カーテンをして、完全に密室状態にしてガスコンロに火をつける。そうすると一気に温度が40度近くまであがるんだ。
 もうみんな汗でずぶぬれ。

 土鍋の精=池原 健の撮影は何度もやったな。やっぱ暑かったこともあってかなかなかOKテイクが出ず、また彼も最初は演技かたかったから。

 土鍋で炊いた鳥鍋は昼飯時に全部食べちゃった。だから撮影で使ってたのは食べ残し。

 一番苦労したのはローラ=諏方典子の首飾りが鍋に落っこちるシークエンス。この首飾りをつけるのを忘れて撮影してたがために、撮りなおすのも面倒だったし、結局大介=仁井田秀雄がローラの服のしたから首飾りを無理やり引っ張り出して引きちぎるカットを加えた。この首飾りが飛ぶカットは何度も撮影したな。

 やっぱり一番よかったのは不二子=泉関奈津子と仁井田君がちゃんとした夫婦に見えたこと。このお二人の演技には文句のつけようがありません。 
 諏方さんは、台詞を言っているとき以外はうつむいちゃってて編集で演技がつながらなくて苦労したっけな。泉関さんの弟役の本田さんもいい演技してたし、演出の稚拙さを除けば、これは今までで最高の作品。

 色々あったけど、みんなでひとつのものを作り上げる、という創作行為を楽しめた作品だった。