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エンターテインメント・レビュー

第一回 セガサターン用ゲームソフト

「VIRUS」

by Hudson

私がゲームをするようになって、もうかれこれ10年くらいになる。そのなかで一番印象に残ったソフトを作っていたのは常にハドソンだった。「桃太郎シリーズ」しかり、「天外魔境シリーズ」しかりである。PCエンジンがまだ健闘していたあの頃から、確かにスクエアのソフトは今と変わらない人気だったが、私にはどれもこれもどうでもいいものばかりだった。つまるところ当時の私はほのぼのとしたばかばかしい世界観のゲームがすきだったのである(さすがにボンバーマンとかはやったこと内が)。そしてその世界観をうまく盛り上げるシステムや演出を作り上げたハドソンの技術し感嘆したものだった。

そして今回の「VIRUS」...

正直言って最初は「これがあのハドソンが作ったゲームなのか?」と疑念を抱いてしまった。確かに世界観には特異なものがあるが、ユニークだった。キャラも主人公以外はわりと魅力的だと言える。しかしね。しかしあのバランスはいかんともしがたい。戦闘部分なんか「これ、バイトに作らせたんじゃないの?」と思ってしまうくらい、悪い意味でアバウトなのである。ボスキャラの弱点を見つけるまで全く攻撃できないし(アイテムはあるのだが)、その間でもボスキャラはリアルタイムで攻撃してくる。幾度となくくだらない所でゲームオーバーになったものだ。それがゲームの難易度だ、と言われればそうなのかも知れないが、せっかくのアドベンチャーゲームなのだからもうすこし別の部分で難易度を高くしてもらいたかった。

ストーリーも(ここが私の専門なのだが)今ひとつだ。確かに現実とネット上の世界の書き分けは面白い。キャラも先に行った通り魅力的だ。だが、ストーリーを持ったと言うことはドラマなのだ。ドラマとはキャラとキャラのコミュニケーションにより深みをましていく。だがこの「VIRUS」には肝心のそこがない。キャラ同士の結びつきが希薄なのである。主人公サージと兄貴、相棒のエリカ、ゲイリー大佐や謎の女ドナ等との関係はもっと整理できたはずである。どのキャラともそれなりの関係で終わってはドラマにはならない。

エンディングが二つあるのは面白いアイディアだと思った。いわゆるどちらのエンディングがベストというのではないからだ。しかし、内容ははっきり言ってつまらない。「終わってしまった」という充足感と、虚脱感がないのである。どっちでもいいじゃないかというのがやってみた感想では二つあっても意味がない。

グラフィックも「FF7」が出た今となってはなんとも寂しい。ポリゴンならいいってもんじゃない。3Dの迷路を歩いている時などは、なんとも空しくなってしまう。

とまあ批判ばかり書いてきたが、私の正直な感想は「惜しい」の一言である。システムでもCGでも、そしてストーリーでも細部にわたるまできっちりと煮込めば傑作に成ったはずである。もし「2」があるのなら、今度こそは細部にこだわって欲しい。


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