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エンターテインメント・レビュー

 第二回 劇場公開済邦画

「誘拐」 

配給 東宝

 

 この作品は去年の城戸賞(脚本コンクール)受賞作を映画化したもので、近年まれに見る本格的な刑事ドラマとして評された邦画である。

 友人も絶賛していたので、私も期待に胸をふくらませて見た。ビデオでだけど...。結果論だが、それが正解だった。

 確かに前半50分の身代金受け渡しの部分は派手で、見応えのあるものだったが、この作品が映画していたのはそこまでだった。

 その後の展開は、まだ見てない人もいると思うので詳しくはふれないがまるで火曜サスペンスでも見ているかのようであった。陳腐な謎解き、主人公=永瀬正敏の捜査の中途半端な描写(わずか10分たらず)、ラストの腹抱えて笑いたくなるような、お涙頂戴的浪花節、そしてあきれるくらい以外な犯人...。とにかく全体的に詰めが甘すぎる感がある。とくに犯人像があまりにも短絡的すぎる。公害訴訟を背景にしたのはいいが、それが直接の犯人像に結びついていくのでは芸がない。ひねりが全くないサスペンスなど、今時テレビの二時間サスペンスでもやらない。つまりテレビ以下の出来なのである。これで¥1800も取られたのではたまらない。作り手はもう少し観客の身になって仕事をしてほしいものである。

 「これが城戸賞を受賞したホンなのか」と呆然となってしまったが、仕方ない。日本のこの業界がお客の方を向いていないのは何も今に始まった事ではない。まだ素人から脚本を募るだけでも一応の進歩である。まあ、でもなんだかんだ言っても、高い敷居をまたいだ人間の勝ちである。プロになれるんだから。だから負け惜しみのような事を言うのはやめて、このホンを書いた新人の作家(名前忘れた)を応援したい。今回は仕方ないとして、これからはお客の方を、向いて仕事をしてくれる事を祈る。アイディアは決して悪くないんだから。

 私も「FJ」で遊んでばかりいないでコンクールを狙おうと。