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エンターテインメント・レビュー

第十三弾

Playstation用ゲーム

「Final Fantasy [」

株式会社スクエア作品

今年度、いや、32Bit機になって以来の期待を背負って登場したファイナルファンタジー8。
もうかなりの人がこのモンスターソフトをプレーしただろう。
「今世紀最高のRPGだ!」という人もいるだろうし、「たいした事ないじゃん?スクエア、最近おっかしいんじゃない?」という人もいるに違いない。そのくらいこのゲームは人を選ぶ。
難易度が高いわけではない。ただ単に内容、システム、ムービーにいたるまで、人によって好き嫌いがあるのだ。

で、自分のこのゲームへの感想だが、はっきりいって一言でいうのは難しい。
ある意味で今世紀最高のゲームであることは間違いない事実だ。
プレイステーションの限られた性能を最大限にまで引き出したCGムービーとポリゴン画面のスムーズかつシームレスな移行、考え抜かれたジャンクションというレベルアップシステム、ポケットステーションとの連動など、このゲームには確かに見るべき点がいくつもある。

だが、そのどれもがうっとおしいというのもまた、事実である。
CGムービーは確かに舌を巻くほどきれいだが、これは見せられるだけである。何かと話題の次世代プレイステーションだってあのCGムービーをそのままゲーム画面にすることなど出来ない。映画ならいざ知らず、インタラクティブであるべきゲームでは、ただの絵に描いた餅 でしかない。

ムービーとゲーム画面のトランジションはかなり力を入れたことが窺え、脱帽するが、かといって絶賛できるほどメジャーなことではない。

そして何といってもジャンクションシステムは面倒くさすぎる。
ある程度はがまんしよう。
だが、プレイの仕方によっては「もう一回はじめから」というのではうっとおしすぎる。「もう一回はじめからやっても面白い」という自信が窺えるが、これは単なるスタッフの自信過剰な思い込みにすぎない。

率直に言おう。技術はすばらしい。だが、実際のゲームの中身ははっきり言ってお粗末だ。

まず何と言ってもストーリーがくだらなすぎる。
孤独な男が、仲間に囲まれることによって、そしてその中のヒロインに惹かれ、そして目覚めていく。

「ああ、スコール!愛してる!!」
「リノア!今まで気づかなかったけど、俺はおまえがいないと駄目なんだ!」

このような台詞はもちろん本編には出てこないが、ストーリーを説明するにはこの台詞を並べるだけで十分だ。要するに無骨な男とキュートな愛らしいヒロインの恋愛物語だ。
それはそれで、別に悪くはない。ただ、表現があまりにもオリジナリティにかけるのだ。上記の台詞を並べるだけで説明できるとはそういうことだ。
キャラもぜんぜん魅力がない。暗くて意固地なスコールというキャラにはまったく感情移入ができなかった。それでもそういったキャラに感情移入させる方法はある。最初から、鬱屈した部分を抉り出し、仲間たちとの葛藤を描けば、プレイしているこちらも鬱屈してくる。そこに仲間たちとの和解や、その中のヒロインとの新たな恋などを投げ込めば、こういったキャラにもしっかりと感情移入できたりするものだ。だが、なぜか彼にはよき理解者が最初から大勢いたため、自分の内面との葛藤などは描かれない。鬱屈しているにもかかわらず、それを乗り越える必要のないキャラクターなのだ。これではプレイする側はたまらない。キャラの内情が伝わってこないからだ。
「スコールって無骨なんだね」
で終わってしまう。
「やっぱりゲームはまだまだドラマとは言えねぇよ」
その通りと言うしかない。 これが最高のゲームでは、ね。

スクエアのCGデザイナーの技術はすごい。だが、映像演出のセンスはどうか?
ラストのくそ長いバトルの末流れてくるエンディングCG(テロップの前ね)は一生懸命かっこよく作ってはいる。いるが、キャラの心情描写や韻をふんだ演出などは一切ない。確かにスコールはしかめっ面でリノアを探している。リノアはリノアで思いっきり心配そうな顔でスコールを求めてはいる。だが、二人のほとばしっているはずの感情は画面からは伝わってこない。当たり前の演技をキャラにさせても、所詮CGである彼らにはうまく表現できないのだ。 動きだけがモーションキャプチャーでリアルに映っているだけに、はっきりいってかなり滑稽なムービーだった。そう、あのエンディングは「どうですか!我が社の技術は!?すごいでしょう!」というスクエアの叫びに他ならない。
技術はすごい。すばらしい紙芝居だったとは思う。でも、映画ではない。映画を越えるなど、おこがましい。
スクエアのスタッフにはもっと勉強してもらいたい。

唯一気に入った部分はというと、これもエンディングのムービーの一部なのだが、テロップ部分で流れるホームビデオ風のCGムービーだ。これはその後のキャラクター達のパーティーの模様を描いているが、某アイドル風のリアルなセルフィや、思いっきりロビン・ウィリアムスを意識したシド学園長が出てきたりと結構楽しめた。何と言ってもホームビデオなので映画演出のセンスは必要ない。こういう映像ではさすがにスクエアのCGスタッフの技術が冴えていた。

とにかく、それぞれ各スタッフの技量は鬼気迫るものがあるにも関わらず、実際のゲームの出来が「ふ〜ん」という結果になってしまう原因は、それら最高のスタッフをまとめる演出家が不在だからだ。CGデザイナーやプログラマーは、ゲーム制作のノウハウをよく知っているから確かにベテランの技術者は制作工程のディレクションには向いているだろう。だが、映像演出やストーリーテリングは見よう見真似何かの片手間には出来ない。そんな甘いものではない。
「パラサイト・イブ」のレビューでも書いたが、スクエアに今一番必要なのは優秀な映像作家である。
ゲームに特化した映像演出家や脚本家を育てない限り、スクエアのゲームはブームの終焉とともに廃れていくだろう。

最後にFF8の一番すごかった部分。
それはゲーム画面をまったく出さず、CGムービーだけで押し捲り、挙句の果てに大枚はたいてマスコミを席巻した脅威の宣伝戦略だった。これは他のゲームも少し手本にしてもいいだろう。

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