GigaHit

エンターテインメント・レビュー

第八弾

セガサターン用ソフト

この世の果てで恋を唄う少女 YUNO

elf 作品

この作品をやることになったきっかけは、自分がよく訪れていた掲示板で評判が高かったからで、それがなければ恐らくプレイすることはなかったであろうソフトである。
そして内容だが、概ね評判通りだった。新システムのADMSシステムはアドベンチャーゲームにとっては画期的な発明である。ストーリーの分岐点が一目瞭然にわかり、しかもブックマーク(と、あえてここでは言っておこう)をつけていれば戻って別の分岐を進むことができるのである。もっとも分岐を全てクリアーするのがこのゲームの一つのゴールだから、当然といえば当然のシステムではあるのだが、パズルみたいで単純に楽しめた。
このゲームは、アドベンチャー好きのゲーマーなら、絶対にやっておくべきソフトである。

と、さんざ持ち上げたところで、今度はケナしたいと思う。
このゲームは、ゲームデザイン界では神様扱いの剣乃ゆきひろ氏がデザインしたゲームである。だから、評判の高さもシステムよりもむしろストーリー性の高さから来ている。
確かに、他のゲームに比べてストーリーは格段に面白い。だが、自分はこの人のヒロイン像についていけない。この人のゲームでは、必ずといっていいほど女が死ぬ。主人公を守るために、である。そこに感動する人もいるのだろうが、自分は正直不満である。感動は、する。忠犬が主人を守って死ぬのと同じようなシチュエーションだから。でも、女としてはどうか。女は犬とは違う。犬は、主人の命を危めるものから主人を守る場合、肉弾戦しかない。だから、命を懸けるしかないのである。でも、人間には頭脳がある。女は、主人公を救うのに体をはる必要はないのだ。生き延び、それと同時に愛する人を救う算段をたてる能力を持っているのだ。自分のためであれなんであれ、簡単に死んでしまう人間に、自分は魅力を感じない。正当なシチュエーションであれば納得はいく。しかし、大抵死ななくてもいいところで自殺してしまうのである。例えばセーレスというキャラは、自分を連れ去ろうとする帝国兵に逆らう主人公をいさめるために舌を噛み切る。まったくもってナンセンスな行為だ。彼女は他にとるべき道が無数にあるのだ。そしてその方がストーリーもふくらんでくる。陳腐なお涙頂戴シーンを挿入するために、全体的なストーリーの流れを悪くしてしまっている。この人の作品は度々こういったウェット過ぎる展開が出てくる。そこがこの人の人気の原因なんだろうが、自分には理解できない。そして、これは18禁ソフトだから仕方ないのだろうが、恋愛描写が強引すぎるのである。何故あんなに主人公はモテるのか?どうもプレイしていて納得できない。「そんなに簡単に寝るのか、おい!」的なシーンが続出する。ここらへんが、ギャルゲーが「オタク文化」と揶揄されてしまう原因であろう。
正直もったいないのだ。これだけストーリー展開に凝っていて、しかも新しいシステムを搭載している名作なのだから、陳腐な女性蔑視的殉死や超強引セックスがなければ、広くのユーザーに受け入れられたであろう。
剣乃氏は改名して、今度プレイステーションでゲームを出す。もちろんPSなだけに、セックス的な描写は一切できない。おのずと表現に規制が加わるだけに楽しみである。彼は万人向けするストーリーを作れる天才なのだ。だから、今度の作品には多いに期待したい。


nextj1.gif (1779 バイト)