GigaHit

エンターテインメント・レビュー

第十弾

PS用ゲームソフト

METAL GEAR SOLID

KCEI作品

「スナッチャー」、「ポリスノーツ」等重厚なドラマティック・アドベンチャーの作り手である小島秀夫氏による一級のゲームである。
何と言っても「敵と戦うのではなく、逃げる又は見つからないようにする」というゲーム性が面白い。自分はこのゲームに慣れるまで、数え切れないほど無茶な戦闘を仕掛け、殺されたものだ。敵の真傍に隠れ、敵が気づかずに行ってしまうまでの緊張感、見つかってしまった時の焦りなど、とにかく計算しつくされたデキに、思わず「難し過ぎる!」とやめてしまおうと思った事も正直あったが、すぐ「いや、待て待て」と考え直させるほどこのゲームは絶妙なバランスで構成されている。
ストーリーはどうかというと、あまり濃くはない。少なくとも小島氏の前作&前々作に比べれば、ドラマ性など皆無に等しい。とにかくこのゲームでは敵に見つからずに潜入し脱出することが最大の目的なのだ。ドラマ性の介入する余地はあまりない。それでも、ラスト近くで明かされる、ソリッドと敵の親玉リキッド、更には謎の男NINJAらとの愛憎関係は、さすが小島氏だ、と感嘆させられた。ドラマ性が欠如しているのではなく、ただ単にアクションゲームという特性上ギリギリまで抑えてあるのだ。だから、このゲームは立派にドラマしている。
全体的に映画的な構成なのだが、ただ一つだけ気になったのは、話の視点だ。これはゲームだから仕方ないのだろうが、「一方、その頃××は...」といった視点の変更が皆無なのだ。終盤でヒロインのメリルを助け出すわけだが、(実はオタコン編があるのはつい最近知った)メリル側のストーリーが描かれないため、緊張感に欠ける。「早く助け出さねば」といった焦りが感じられないのだ。ここらへんに、唯一ドラマとしてのテンポのなさという弱さを感じる。ゲームのテンポを取るか、ドラマのテンポを取るか。今の時点ではまだ、難しい部分もあるのだろう。

とにかく久々にハマれたゲームだった。
小島氏の次回作を期待してしまう。


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