第18回 「”今回の選挙は重要だ”??論」

テレビでよく聞く言葉である。
だから今回は政党の公約をよく研究して、投票に行け、と。

メディアの人達がこんなこと言ってるんだから、ホント話にならない。

総選挙は、昔も今も、そして今後も「政権選択の選挙」で、重要でない総選挙なんてない。
民主主義の国家なんだから、政党の政策を調べて、一番自分に合った政党とその候補に投票するのは当然のことで、「今回」に限ったことじゃないんだから、まったくメディアにも困ったものである。
小泉劇場とやらに、メディアも乗せられている証拠だ。

総選挙は、前に書いたとおり、政権選択の選挙である。
今回の場合は、自民党+公明党か民主党その他を選ぶかという選択肢の中で、9月以降の日本の政治を国民が決めていくのである。

ここで問題と考えなければならないのは、「小泉さんは好き」という層が多いことである。
この層は、必ずしも自民党支持ではない。
小泉さんが自民党の総裁だから自民党を支持しようとしているのだ。
だが、自民党というのは非情にトリッキーな党なのだ。
国民新党や新党「日本」をつくった郵政民営化法案に反対した人達は、自分の意思を明らかにした人達で、わかりやすいがゆえに、自民党にいられなくなった人たちである。
でも、この人達以外はすべて小泉総裁を支持しているか、というと必ずしもそうではないのが自民党という政党の特色なのだ。
青木参院会長は、旧橋本派で、小泉政権が出来たときは反対派=守旧派の急先鋒だった人だが、自民党政権維持を条件に表面上小泉支持に回った人のひとりで、今後の小泉政権の行方を握る人物でもある。
こういったうわべ小泉支持の自民党議員はかなりいる。おそらく自民党の半分以上の議員は、いつ反小泉になるかわからない人たちだと考えなければならない。

ここで話しを元に戻すと、日本は議員内閣制だから、小泉さんが好きだからといって小泉さんを首相に直接選ぶことはできない。
小泉さんを首相にしておくためには、自民党に勝たせなければならないわけだが、その自民党が前に書いたとおりの政党だから、「小泉好き」という理由で選挙に挑むのは愚の骨頂といわざるを得ない。
日本は大統領制じゃないことすら理解していないということだからだ。

だから、総選挙は「首相が好き」とか「出馬してる議員さんが好き」で投票すると、場合によっては自分が全く望んでいない政権が誕生してしまう危険性があるのだ。

テレビのコメンテーターが言うように、各党のマニュフェストなる政権公約をよく研究して、人ではなく政党を選ばなければならないのが二大政党制時代の総選挙である。

だから、「小泉首相万歳」という人で、尚且つ自民党の政策に満足できれば、自民党の候補及び自民党に入れればいい。
「小泉さんはきらいじゃないけど、今生活苦しい。変化がほしい」と思う人は、他の政党の公約を研究するなり人に聞くなりして、自分の意見に近い政党と候補に入れればいいのだ。

日本の選挙制度は、今こういうことになっているんだ。
そして、今回の選挙で今後の日本が決まるかといえば、そうではない。
ほんの数年の間の政権政党を保障するだけにすぎない。
例えば、小泉自民党は、盛大に大きな構造改革を唱えているが、これは数年で出きることではない。
保守合同で自民党が誕生してから50年かけて政官財の癒着が日本に定着したのだから、最低でも日本の改革には10年以上かかると考えなければならない。
首相は政党の代表で、ほとんどの政党の代表には任期があるから、一人の首相ができることにはおのずと限りがある。
その人が退陣しても、後継者が改革を継続してくれなければならない。
そういう政党こそが、政権の座につくべきであると考えている。

まだ、日本の民主主義は発展途上にある。
例えば、1955年の保守合同で自民党が誕生して以来、1992年〜93年の11ヶ月の細川連立政権〜羽田連立政権を除いて、ほぼ50年間自民党の独走政治体制が続いている。
50年政権を担えば、当然腐敗しても再生する力はなくなるだろう。
また、その50年の間に世界情勢は大きく変化した。
それに対応する能力も、今の自民党にあるとは思えない。
でも、依然として自民党の支持率は高い。
一番自民党の不支持率が高いときでも、政党支持ランキングでは常に比較第一党だった。
非自民政権だった細川政権時代でさえ、である。
あの時でさえ、世論調査で60%近い国民が、もっとも望む政権を「自民党を中心とした連立政権」だったのである。これは今でも変わっていないのではないか。
日本国民は、臆病なのである。
色々腐敗もあった、不景気もあった、醜い権力闘争もあった、でも50年つき合ってきた自民党政治に別れを告げるのが怖いのではないだろうか。
しかし、それでは民主主義国家としては欠陥である。

アメリカを例にあげよう。
アメリカは大統領制だが、選挙が政権選択であることには違いない。
アメリカ国民は、保守層の割合が多く、歴代政権も、保守の共和党政権が多かった。
だが、保守が好きなアメリカ国民も、共和党大統領の政治に不満を感じたり、スキャンダルがあれば、次の大統領に民主党政権を選んだ事も多々あった。
例えば90年、当時のブッシュ共和党政権は湾岸戦争の勝利で、「強いアメリカ」好きのアメリカ国民に大きく支持されていた。だが、政権末期の92年ごろから国内経済の不振や雇用問題で失政をしたブッシュの支持率は急降下し、93年の大統領選で、民主党のクリントンに敗北した。
保守的な人でさえ、政治には臨機応変に対応するのが民主主義のあるべき姿なのだ。

こういった民主主義が日本に定着するには、あとどのくらいの時間を要するのだろうか。

9/11は総選挙の投票日である。
皆さんが選ぶ政党が、この閉塞感溢れる日本に明るい日差しを照らしてほしいものだ。

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