第六回 「”ルパン三世”論

 

「俺の名はルパン三世。かの怪盗アルセーヌ・ルパンの孫だ。世界中の警察が俺に血眼。とっころがこれが捕まらないんだな〜。ま、自分で言うのもなんだけど、狙った獲物はかならず奪う神出鬼没の大泥棒。それが、この俺。ルパン三世だ。」

こんな自己紹介に胸躍るアナタ。
かなりアナクロですな。
そう、これはTVシリーズ第一作・通称「旧ルパン」のオープニングナレーションだ。

ルパン三世について軽く整理しておくと、1971年に放映開始された、上記緑の背広の「旧ルパン」はシリーズ始まったばかりでの演出家の交替(前任者は「ムーミン」などで有名な演出家・大隈正秋氏、後任はもう誰もが知っている日本一有名なアニメ作家宮崎 駿氏と高畑 勲氏)を経たものの視聴率は低迷。23話で終了となる。これが伝説のシリーズとしてファンにいまだに愛され続けている。
その度重なる再放送で人気を博し、1978年にあらためて日本テレビが企画制作したのがTV第二シリーズ・通称「新ルパン」。背広は緑から、原作マンガに近い赤に変更され、路線的には第一シリーズ後半の雰囲気に近く、ドタバタスラップスティックコメディになっている。
このシリーズは大ブレイク。155話まで放送され、その中の2編を宮崎 駿氏が演出している。
このシリーズ中に「ルパン三世」と「ルパン三世 カリオストロの城」の二作が映画化されている。特に「カリオストロの城(通称・カリ城)」は伝説的アニメ映画になり、映画史にその名を刻む。旧ルパン以上にファンが多いのが、この「カリ城ルパン」。
そして、1984年に再び読売TVが企画制作したのが第三シリーズ「ルパン三世PARTV」。絵柄も当初原作を意識したものになり、背広は今度は何とショッキングピンク!ルパンのファッションセンスにはピーコも度肝をぬかされたのではないか。
このシリーズは旧ルパン前半の雰囲気に近づけようと、世界設定もキャラ設定も旧ルパンに戻された。が、人気が今ひとつでず、苦しい展開を余技なくされ、最終的に52話で完結となる。
その後は1989年から年1回のペースで二時間スペシャルが放映され続け、常に新しいルパンファンを増産している。途中1995年にルパンの声優だった山田康雄氏が死去、ルパンの物まねをしていた物まね師・栗田貫一氏にバトンタッチされている。

全然軽くない整理だったが、大体わかっていただけたでしょうか?
このデータを見てもわかるとおり、一言にルパン三世といっても色々なルパンが存在し、脚本家や演出家によってまったく別世界のルパンが何人も存在しているのだ。
その中で特に崇拝されているのが、旧ルパンシリーズ大隈ルパンと宮崎・高畑ルパン、そしてカリ城ルパン。ファンも大隈派、宮崎・高畑派、カリ城宮崎派(たぶん最大派閥)、新ルパン派、PARTV派(おそらく最小派閥)と派閥がわかれている。

このことに一番影響を受けているのが、現在のTVスペシャルを製作しているスタッフだろう。若手スタッフの中には大隈系のハードボイルドルパンを創ろうと画策する者もいるし、カリ城大好きスタッフはニセクラリスを大量増産するし、もう何がルパンかわからなくなってきている。

第三者から言わせてもらえば、ルパンはもう古い。
もちろん自分もルパンが好きだが、今のルパンは死に際で泡食っているように見える。なんとも惨めなのだ。
ルパンが大手を振って?泥棒を繰り返したのは、もう20年以上前の時代だし、なんかルパンが携帯片手に走り回り、パソコンブラインドタッチしている姿は、時代にマッチした、というよりなんかこう、無理矢理やらされているようで、これも見てて心苦しい。
もういい加減、ルパン三世にラストを迎えさせてあげてはいかがでしょう?

そうでないとしたら、もしまだまだ続けるのだとしたら、もう旧ルパンやカリ城は意識せず(大体カリ城ルパンはルパンというより未来少年コナンだ)、新ルパン路線でやればいいんじゃないかな。
なんかもう、殺し屋集団とかマフィアとか敵が全然迫力ないんだよね。アクションシーンも、結局アニメの場合オーバーに描かないと実写に負けちゃうし、現に負けてるし。
リアルさを追求したりしないで、敵もゾンビとか宇宙人とかでいいと思うんだよね。新ルパンはそれで幅が広がっていったわけだからさ(フランケンシュタイン対ルパンのエピソードが結構好き)。
そういう意味では別に現代的である必要はないと思う。
アナクロでいいんですよ、アナクロで。

ま、それも栗貫が生きてる間ってことで。

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