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〇富士美大 
   学生達で賑わっている。

〇同・カフェテリア
   友子と香、空になった食器とトレイを
   前にくつろぐ。
友子「昨日は本当にごめんね」
香「ねぇ、あの子、やっぱヘンだよ」
友子「うん...」
香「引っ越しちゃいなよ」
友子「でも、家賃払っちゃってるし、そう簡
 単にもいかないのよ。第一、学校で顔を合
 わす事だってあるじゃない」
香「とんでもないのと関り合いになっちゃっ
 たね」
友子「でもうまくやっていけると思うの。う
 まくやれば」
香「でもさ、むずかしいんじゃない?なかな
 か」
友子「...」
香「志村君にも悪い事しちゃったよね」
友子「...あの子、すごく気にするのよ」
香「志村君との事?」
友子「うん。好きなのか、とか聞かれちゃっ
 て」
香「やっぱあたしの言った通りレズなんじゃ
 ない?」
友子「どうなのかな」
香「(時計を見)あ、もう時間だよ。志村君
 には友子が謝ってたって言っとくからさ」
友子「お願い」
香「行こ」
   二人とも席を立つ。

〇同・広場
   芝生の広がる学生広場。カップルや写
   生をする学生達がちらほらといる。
   由紀江、木陰に腰を下ろし、風景を写
   生している。
   苗場、スケッチブックと鉛筆を片手に
   由紀江の隣に座る。
苗場「ヨッコラショッと。ここは眺めいいね
 ぇ」
   苗場を見る由紀江。
苗場「あ、俺の事知らない?ひょっとして」
   うなずく由紀江。
苗場「あちゃぁ、同じクラスとってんだけど
 なぁ。俺って意外と知名度低いんだね」
由紀江「...」
苗場「俺、苗場ってんだ。よろしく」
由紀江「...木村です」
   と、ぎこちなく頭を下げる。
苗場「デッサン専攻?」
由紀江「うん」
苗場「やっぱり。俺もなんだ。この前の顔の
 やつ、結構うまかったよ」
由紀江「あっ、あの時の」
苗場「いやぁ、何か見ちゃ悪いみたいだった
 んでチラッとしか見てないけどね。だいぶ
 モデルの彫刻とは違ってたみたいだけど」
由紀江「あの彫刻を描いてたわけじゃないか
 ら」
苗場「そうなんだ。いいねぇ、なんかこうポpfl4.jpg (11902 バイト)
 リシーってのを感じるね」
由紀江「描かないの?絵」
苗場「え?もちろん描くよ。俺もデッサン専
 攻だって言ったじゃん」
由紀江「(クスッと笑い)そうじゃなくて、
 今」
苗場「あ、ヤベ、描かなきゃ。終わっちゃう
 よ授業」
   笑う由紀江。
   並んで写生する二人。

〇アパート・友子の自室 (夜)
   数枚の額入りの絵が飾られ、ハロゲン
   ランプがほんのりと部屋を照らしてい
   る。落ち着いた感じの部屋。
   パジャマ姿の友子、鏡台の前に座り、
   髪をとかしている。ノックの音。
友子「どうぞ」
   由紀江、静かに入ってくる。
由紀江「ねぇ」
友子「ん?何?」
由紀江「一緒に寝ていい?」
友子「(慌てて振り向き)えっ?」
由紀江「一緒に寝ようよ」
友子「え、あ、いや...別にいいけど。ど
 うして?」
由紀江「何かさみしくて」
友子「...あ、そう。でも狭いよ。シング
 ルだから」
由紀江「いいよ、別に」
友子「じゃあ...どうぞ」
由紀江「やったぁ!」
   由紀江、ベッドに飛び込む。
   大きなため息をつく友子、立ち上がり、
   ハロゲンランプの光量を絞ってからベ
   ッドに入る。
由紀江「おやすみ」
   由紀江、友子にくっついて寝る。
友子「ねぇ」
由紀江「うん?」
友子「...お母さん、どうして亡くなった
 の?」
由紀江「(ぶっきらぼうに)交通事故」
友子「お父さんはどうしてるの?」
由紀江「病気で死んだ」
友子「えっ?...じゃあ育ててくれたのは?」
由紀江「埼玉のおじさん。もう寝よう。私疲
 れちゃった」
   由紀江、友子から離れ、逆方向を向い
   て寝る。
   天井を見つめる友子。

 

 

次回につづく


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