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〇同・由紀江の自室 (夜)
   ベッドの上で布団にくるまり、目を見
   開き放心状態の由紀江。

〇(回想)霊安室
   白い布にスッポリと覆われた遺体。
   中年男に連れられた少女の由紀江(8)、
   茫然とその遺体を見つめている。

〇アパート・由紀江の自室 (夜)
   由紀江の目から涙がこぼれる。

〇(回想)霊安室
   白い布をめくる男の手。
   茫然とそれを見る由紀江。

〇アパート・由紀江の自室 (夜)
   震え出す由紀江。

〇(回想)霊安室
   少し露出する遺体の横顔。かすかに血
   糊が見える。

〇アパート・由紀江の自室 (夜)
   小さな悲鳴をあげ、頭から布団をかぶ
   る由紀江。

〇住宅街
   晴天。閑静な住宅街。
   左頬に中くらいの大きさのバンドエイ
   ドを貼った友子、小さな紙を手に歩い
   ている。
   友子の目、一軒の家の表札に止まる。
   西田と書いてある表札。
友子、駆け寄り、呼鈴を鳴らす。
インターホンの声(女)「はい」
友子「先程お電話しました鳩中ですけど」
インターホンの声「少々お待ち下さい」
   汗を拭く友子。西田邸を見上げる。
   西田邸は大きくも小さくもない新興住
   宅である。
   玄関のドアが開き、中年の女−西田栄
   子(44)が出てくる。
栄子「まあ、遠い所をわざわざ。さ、どうぞ」
   栄子、門を開ける。
友子「失礼します」
   友子、栄子に促され、邸内に入る。
〇西田邸・居間
   小奇麗な六畳の和室。中央にテーブル
   が置かれ、西田健三(46)&栄子と
   友子が向かい合って座っている。
西田「そうですか...。いや私もあなたを
 見た時はびっくりしましたよ。由紀江の母
 にそっくりでしたからね。由紀江も可哀想
 なやつでして。母親は交通事故で死に、父
 親も後を追うように自殺してしまって」
友子「自殺、だったんですか...」
西田「ええ。それでまあ、自分達が引き取っ
 て育てたんですが。一年目くらいだったか
 な。あの子が9歳の時、事件が置きまして」
友子「事件?」
西田「ええ」
栄子「あの子の小学校の先生だったんですが、
 あの子にとても優しくしてくれましてねぇ。
あの子も慕ってたんですけど、その人には
 同僚に恋人がいましてね。それを知った由
 紀江は...」
〇(回想)学校・階段
   男教師、鼻歌まじりに階段を下りてい
   く。その後ろを少女の由紀江がこっそ
   りとつける。
   由紀江に気付かず下りていく男教師。
   唾を飲み込み、思い切って男教師の背
   中を押す由紀江。
教師「うわぁー!!」pfl6.jpg (8594 バイト)
   落ちる男教師。
   そのさまを茫然と見る由紀江。

〇映画館
   由紀江と苗場、並んで座っている。
   映画の悲鳴で我にかえる由紀江。
   その由紀江を心配そうにチラチラと見
   る苗場。
苗場「(小声で)どうしたの?」
   作り笑いを浮かべ首を横に振る由紀江。
   それっきりうつむいてしまう。

〇西田邸・居間
   友子と西田夫妻、うつむき、だまって
   いる。
友子「...そんな事があったんですか」
栄子「その人は頭の骨を折る大ケガを負って
 しまい、女の先生もそれを期によその学校
 に転任してしまいました」
西田「それからこいつと話し合って、由紀江
 を精神科に通わせる事にしたんです」
友子「精神科...」
西田「ええ。両親が死んだショックからきて
 るんだと思ってましたし、他の先生やお子
 さん達に迷惑がかかるような事があっては
 いけないと思いまして」
栄子「お医者さんの話しでは母親の遺体の傷
 を見た事があの子に相当なショックを与え
 たんだろうという事だったんですが」
友子「遺体の傷、ですか」
西田「左頬が完全に欠落してたんですよ」
   息をのむ友子。

 

次回につづく


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