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〇レストラン (夕)
   由紀江と苗場、無言のまま食事をして
   いる。食器のぶつかる音が響く。
苗場「...あのさ」
   憂鬱そうに苗場を見る由紀江。
苗場「つまんない?」
由紀江「何が?」
苗場「今、こうしてんのが」
由紀江「え、...そんな事ないよ」
苗場「本当?ならいいんだけどさ」
   二人、再び黙々と食べ始める。

〇公園 (夜)
   由紀江と苗場、ブラブラと歩いている。
苗場「ね、座んない?」
   由紀江、うなずく。
   二人、ベンチの所まで行き、座る。
   由紀江、うつむく。
   由紀江をチラチラと見る苗場。
苗場「ね、どうしたの?何かあったの?」pfl7.jpg (11736 バイト)
由紀江「...うん」
苗場「言ってごらん。俺でよければ力になる
 よ」
由紀江「うん。あのね、友子さんがケガしち
 ゃったの」
苗場「ルームメイトの?どこ?」
由紀江「顔。横顔に大きな絆創膏貼ってる」
苗場「顔か...。大変だね、そりゃあ。女の
 子にとって大事な部分だもんな。いや、別
 に変な意味じゃなくて」
由紀江「跡は残らないらしいんだけど」
苗場「ああ、そりゃ不幸中の幸いだね」
由紀江「(泣きそうになりながら)幸いじゃ
 ないよ。横顔だよ!」
苗場「あ、いや、別にそういうつもりで言っ
 たんじゃないんだ。ごめん」
由紀江「お母さんとおんなじ所なんだもん
 ...」
苗場「由紀江さんのお母さん、ケガしたんだ」
由紀江「...お母さん、死んじゃったの」
苗場「えっ、あ...ごめん。悪い言っちゃっ
 たね」
由紀江「...」
苗場「友子さんがお母さんに似てるから、ケ
 ガしたのがショックだったんだ」
由紀江「うん...」
   沈黙する二人。苗場、ベンチの後ろに
   手を回す。
苗場「つらかったんだね。可哀想に...」
由紀江「うん」
   由紀江を見つめる苗場。
   見つめ返す由紀江。
   苗場、由紀江の顔に手を伸ばし、髪を
   とかす。
   おどおどと苗場を見ている由紀江。
   苗場、由紀江の顔を両手で包む。
   由紀江、緊張した面持ちで苗場を見つ
   める。
   苗場、ゆっくりと顔を近づける。目を
   つむる由紀江。
   唇を重ねる二人。更に抱きしめようと
   する苗場。
   パッと目を開ける由紀江。
由紀江「いやっ...」
   由紀江、苗場を突き放し、うつむく。
   苗場、尚も由紀江を抱こうとする。
由紀江「...やめて!」
   と、苗場を振り払い、小走りにベンチ
   から駆け出す。
   苗場、慌てて立ち上がる。
苗場「由紀江さん!」
   由紀江、走り去っていく。
   茫然と由紀江が走り去った方角を見つ
   める苗場。

〇アパート・由紀江の自室 (夜)
     玄関のドアの開く音。由紀江、小走り
   に部屋に駆け込んでくる。肩で息。
   由紀江の目の前に友子の左横顔の絵。
由紀江「お母さん...」
   電話の子機が鳴り出す。
   由紀江、子機を取る。
由紀江「...もしもし」
西田の声「もしもし。由紀江か?」
由紀江「あ、おじさん」
西田の声「どうだ。元気にやってるか?」
由紀江「うん。...あのね、おじさん...」
西田の声「(遮り)あのな。おまえ、ちゃん
 と友子さんとうまくやってるか?」
由紀江「え?...うん」
西田の声「本当か?」
由紀江「...何でそんな事聞くの?」
西田の声「いや、別に。あんまり迷惑かける
 んじゃないぞ」
由紀江「...」
西田の声「わかったか?...おいっ聞いてん
 のか!由紀江、返事しろ...」
   途中で電話を切る由紀江。
   絵の方を向き、ジッと眺める。
   憎々しい表情に変わる由紀江。
   そばにあった鉛筆を掴み、友子の横顔
   を刺す。
   友子の横顔に黒い傷が入る。

 

次回につづく


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