人 物
 橋本タケル(22)日本人留学生
クリスティン・バート(20)タケルの隣人
ロブ・シャノン(25)クリスティンの恋人
菅ヨーコ(21)タケルの友人
ジェフ・ウォン(24)中国人麻薬ディーラー
ボビー・ウィルソン(25)ジェフの商売敵
チャン ジェフの仲間
ジョー ジェフの仲間
リー ジェフの仲間
サム ボビーの仲間
ジェイ ボビーの仲間

*特に注釈のない台詞は全て英語です。



○TV画面
   CNNの街頭インタビューにヘラヘラ
   と答える女子高生風の女。
女子高生風の女「(日本語)信じられないって
 いうか、バカじゃない?」
   画面が切り替わり、茶髪の若いカップ
   ルがマイクに答える。
若い男「(日)そんな事あったんだぁ」
女「(日)アッタマおっかしいよねぇ」
   といって二人とも笑い出す。
   画面が切り替わり、総理大臣の記者会
   見が映しだされる。
総理「(日)今回の事件につきましては、まこ
とに遺憾であり 」

○タイトルバック
   「ニューヨークのサムライ」
   クレジット・スタート。

○ニューヨーク・タイムズスクエア
   ネオンがチカチカと光る広場。
   多種多様な人種がそれぞれ様々な服装
   に身を包み、歩いている。

○東京・銀座・有楽町マリオン前
   サラリーマンや学生風の若者などがマ
   リオンの前を歩いている。その様子は
   ニューヨークの風景とほとんど変わら
   ない。

○NY・地下鉄駅ホーム
   サラリーマンや、黒人の若者など大勢
   の人々が電車を待っている。

○東京・営団地下鉄駅ホーム
   構内に電車が入って来る。
   待っていた会社員らや女子高生などが
   一斉に車内に吸い込まれていく。

○NY・クイーンズ裏路地 (夜)
   見るからに物騒ないでたちの白人、黒
   人の若者が燃え上がるドラム缶の周り
   にたむろしている。

○東京・某公園 (夜)
   やはり物騒ないでたちの日本人の若者
   達がロケット花火を飛ばして遊んでい
   る。

○NY・ロックフェラービル (夜)
   広場に巨大なクリスマスツリーが飾ら
   れ、行き交う人々が見上げている。

○東京・新宿三角ビル前 (夜)
   同じように大きなクリスマスツリーが
   立っている。
   そのそばを行き交う人々。

○NY・アパート全景 (夜)
   クレジット終了。
   古めかしいレンガ作りの6階建のアパ
   ート。
   中から大ボリュームのラップ音楽が聞
   こえてくる。
   T「二日前」

○同内・4階廊下 (夜)
   奥の窓から光が差し込んでいる薄暗い
   廊下。
   フロアー中に大音響のラップ音楽がこ
   だましている。

○同・タケルの部屋・居間 (夜)
   一人部屋にしては広い1LDKの部屋。
   玄関からすぐ居間とキッチンにつなが
   っており、寝室と洗面所が居間と仕切
   られている。
   居間に置かれたアンティーク調の簡素
   な机に、標準的日本人体型の気弱そう
   な男・橋本タケル(22)が向かい、何や
   ら紙に一心不乱に書き込んでいる。
   ラップの大音響はこの部屋にも響きわ
   たっていた。
   イラつくタケル。口元がひくつき、耐
   えられない、といった表情でペンを置
   き、立ち上がる。
   そのままタケルは居間を横切り、部屋
   を出ていく。
   外から何やら英語でのやりとりが聞こ
   え、音楽が小さくなる。
   タケル、部屋に戻って来て再び机に向
   かい、レポートを書き始める。      
   静けさが支配する部屋にペンの走る音
   だけが聞こえる。
   机の左隣の壁から、女の甘えるような
   声が聞こえ始める。
   ふと顔を上げるタケル。
   甘えたような声は次第に大きくなり、
   明らかな喘ぎ声に変わっていく。
   ゆっくりと首を回し、左隣の壁を見つ
   めるタケル。あきれたような表情であ
   る。
女の声「Oh,Yeah,!Oh,Ohhh !!」
   次第に女の声が絶頂に近づいていく。
   タケルは成す術もなく、唾を飲み込み
   壁を凝視する。
   女の声は絶頂をむかえ、そして途切れ
   る。
   我に返るタケル。
   深くため息をつき、机の上に広げた勉
   強道具をカバンに詰め出す。
   隣の壁からは女の笑い声が聞こえてく
   る。
   タケル、カバンを持って立ち上がり、
   部屋を出ていく。

○同・エレベーター
   ドアが開くと、そこには革ジャンに所
   々破けたジーパンをはいた細い目の中
   国系アメリカ人、ジェフ・ウォン(24)
   が気だるそうに立っている。
   タケル、ジェフに軽く会釈して中に入
   る。
   ドアが閉まり、エレベーターが動き出
   す。
   タケルの事を、睨むように一瞥するジ
   ェフ。
   おどおどとしながら愛想笑いを浮かべ
   るタケル。
ジェフ「何笑ってんだよ。俺の顔がそんなに
 可笑しいのか?」
タケル「あ、いや。別にそういうわけじゃな
 いけど...」
ジェフ「そうやって人の顔色ばっか伺ってっ
 からナメられんだよな。おめえらのおかげ
 で俺らもアメリカ人になめられんだよ。あ
 いつらは何でも言うこと聞くってな。アジ
 ア人はみんな同じだと思われて迷惑してん
 だ」
   困ったような表情でジェフを見るタケ
   ル。
タケル「ごめんなさい」
ジェフ「何でもすぐあやまんじゃねえよ。バ
 ーカ」
   と言い残し、1階に着いたエレベータ
   ーのドアが開くと同時に出ていく。
   迫力に圧倒され怖じ気づいていたタケ
   ルが我に返り、出ようとしたところで
   ドアが閉まる。そのまま気押されたま
   ま上に上がっていくタケル。

○アパート全景
   やはり中ではラップ音楽が鳴り響いて
   いる。
   T「前日」

次回につづく


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