○四階・廊下 (朝)
   奥の窓から光りが差し込んでいる。
   T「当日」

○タケルの部屋・居間 (朝)
   タケル、机に向かい卒論を書いている。
   顔は青白く、目の下にうっすらとクマ
   が出来ている。
   ドアをノックする音がする。
タケル「開いてるよ」
   ドアを開け、ヨーコが入ってくる。
ヨーコ「(日)どう?がんばってやってる?」
   かったるそうに振り向くタケル。
タケル「(日)ヨーコか。早いな。まだ八時だ
  よ」
ヨーコ「(日)きのうは何もすることなかった
  からね。早く寝ちゃった。で、どうなの?
 進み具合は」
タケル「(日)まだだよ。後20ページくらい
  かな」
ヨーコ「It's far behindっ て感じだね」
タケル「(日)まぁね。だからパーティーには
  行けそうもないよ」
ヨーコ「(日)じゃ、あっちのパーティーにも
  行かないんだね?」
タケル「(日)うん」
   ヨーコ、タケルの顔をジッと見つめる。
   タケル、目線をそらし、再び卒論にむ
   かう。
ヨーコ「(日)うそつき。行くんだろ?あの子
  の方に」
タケル「(日)日本人会とはあまりつきあいた
  くないんだよ正直言って」
ヨーコ「(日)あたしだって好きじゃないよ、
  あの連中」
タケル「(日)あのさ、俺がどっち行こうが勝
  手じゃない」
ヨーコ「(日)ならあたしもどっち行ったって
  いいんだね?」
   タケル、手を止め、まじまじとヨーコ
   を見る。
タケル「(日)ちょっと待て。どーゆー意味、
  それ?」
ヨーコ「(日)あたしもそっちの方に行くって
 事。アメリカ人の方が面白そうだもん」
タケル「(日)勝手に連れてくわけにはいかな
  いよ」
ヨーコ「(日)じゃ、話通して」
   見つめ合うタケルとヨーコ。
   タケル、辛そうにため息をつく。

○廊下・クリスティンの部屋前 
   タケル、ドアをノックする。その後ろ
   にヨーコ。
   誰も出てこない。
   再びノックをするタケル。
   二度目のノックの後、ドアが開き、ロ
   ブが顔を出す。寝起きである。
ロブ「...何だ?」
タケル「クリスティンは?」
ロブ「留守だ。何か用か?」
タケル「えーっと、あの」
ヨーコ「(日)この人でもいいじゃん」
   と、タケルを促す。
ロブ「何話してんだ?」
タケル「いや、あの、ちょっと卒論チェック
 して欲しかったんだけど、彼女がいないん
 なら 」
  ヨーコが割り込む。
ヨーコ「あの、あなたでもいいんだけど」
   ロブ、ヨーコを見、少し顔がほころぶ。
ロブ「どのくらいあるんだよ?」
タケル「ああ、まだ途中だから」
ロブ「見せてみな」
   ロブ、タケルの手から五ページほどの
   紙の束を取り上げ、読み出す。
ヨーコ「(日) よかったじゃん」
   と言うヨーコにタケル、ぶっきらぼう
   に頷く。
ヨーコ「(日)パーティーの件、ことづけ頼んで
 よ」
タケル「(日)わかったよ、もう」
   タケル、あくまで不服そうである。
   ロブ、ざっと卒論に目を通し、タケル
   に突き返す。
ロブ「間違いだらけで読めないな」
タケル「え?」
ロブ「ちゃんと英語で書いてくんなきゃよォ。
 これでよく大学入れたな」
   笑い飛ばすように言うロブ。
   タケル、悔しそうにロブを睨む。
ロブ「まったく、英語出来ないくせに留学す
 るなんざ大した度胸だぜ」
タケル「アメリカ人だって」
   押し殺したような声で抗議しようとす
   るタケル。
   そこにヨーコが割り込む。
ヨーコ「どーもありがとう。ところで、今夜
 パーティーあるって聞いたんだけど」
ロブ「ああ」
ヨーコ「あたしも行っていいかどうかクリス
 ティンに話しといてもらいたいんだけど」
ロブ「来てもかまわないぜ。ありゃあ、俺の
 パーティーだ」
ヨーコ「本当?」
   嬉しそうな顔でロブを見つめるヨーコ。
ロブ「もちろん。そいつだけじゃ色々大変だ
 ろうしな。第一つまんないし、君も来るん
 なら大歓迎さ」
   ロブ、タケルに対するのとは正反対に
   愛想良くヨーコに接する。
ヨーコ「本当?嬉しい!」
   ロブ、タケルに向き直る。
ロブ「ま、直したらまた来な。見てやるから
 よ」
   無言でロブを見上げるタケル。まだ悔
   しそうである。
ヨーコ「ホントにどーもありがとね!」
   ヨーコ、嬉しそうにロブに感謝する。
ロブ「いいって事よ。じゃ、今夜な」
   と言ってタケルを一瞥し、ヨーコにウ
   インクをしてドアを閉める。
ヨーコ「(日)よかったじゃん。良さそうな人
  で」
タケル「(日)どこが」
   と吐き捨てるように言う。
ヨーコ「(日)そうカリカリしない。でも学部
  生でも英語には苦労するんだねぇ」
   タケル、ヨーコを睨みつける。
ヨーコ「(日)なんだよォ、あたしに怒んなよ
  ォ」
タケル「(日)これ、パーティーまでに間に合
  うかどうかわかんないぞ。英語出来ないか
 ら俺」
ヨーコ「(日)またぁ」
タケル「(日)その時はヨーコ一人で行ってく
  れ」
   タケル、きびすを返し、自分の部屋に
   戻る。
ヨーコ「(日) イジケないでよ、もう!」
   不満顔でタケルに続くヨーコ。

○八階・ジェフの部屋・キッチン
   ダンボール箱がドサッと床に無造作に
   投げ出され、中の煙草の草のような物
   が詰められた無数のビニール袋がいく
   つかこぼれ落ちる。
   物が無造作に設置された汚いキッチン
   で、ジェフをはじめとする中国系の男、
   チャン、ジョー、リーら四人がそのビ
   ニール袋の数を数えている。
ジェフ「(中国語)そっちはどうだ?」
チャン「(中)間違いない。ちゃんと揃ってん
 ぜ」
ジョー「(中)こっちもだ」
ジェフ「(中)おいリー!」
   袋を恍惚の表情で眺めていたリー、ビ
   クッとしてジェフの方を見る。
ジェフ「(中)何してんだよ、おまえ」
リー「(中)たまらねぇ匂いなんでよ。ついさ
 ぁ」
ジェフ「(中)売りもんだ。手ぇつけんじゃね
 ぇぞ」
リー「(中)わかってるよ」
   おどおどと答えるリー。
チャン「(中)しかし、アメリカ人もバカだぜ。
 こんなもんに金と命を賭けんだからよ」
ジョー「(中)バカでも大事な客だぜ」
   ジェフ、鼻で笑う。
ジェフ「(中)せいぜいヤツらの脳味噌をグチ
 ャグチャにしてやりゃいいのさ」
   凶暴な目つきのジェフ。
   チャン、ジョー、リーの三人、つられ
   て笑いつつ、数えた終わった袋を箱に
   戻し始める。

○四階廊下 (夜)
   薄暗い明かりの灯る廊下。かすかに音
   楽と騒ぎ声が聞こえてくる。
   タケルとヨーコ、タケルの部屋から出
   てくる。

○同・エレベーターホール (夜)
   エレベーターのドアが開くと、中には
   見るからに凶悪そうな黒人、ボビー・
   ウィルソン(25)と彼の仲間の黒人二人、
   サムとジェイが立っている。
   タケルとヨーコ、そこに入っていき、
   ドアが閉まる。


次回につづく


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