海外移住情報 旅コラム


もう一つの生き方。日本を離れて。
ベトナム・ホーチミン編






「ベトナムに行くのか? ホーチミンに行ったらSによろしく伝えてくれ」
そう言うとSさんの住所を書いたメモを机の中からごそごそと・・・。

プノンペンを旅するバックパッカーの拠点になっているキャピトルレストラン&ホテル。
その隣にある一泊2ドルの"ラッキーゲストハウス"のおやじさんの言葉を思い出して、ホーチミンに
到着して一週間ほど経ってからSさんを訪ねてみることに。

共産政治の臭いも強いちょっと冷たそうな北の街"首都ハノイ"と違って、ホーチミンはバイクが走り
回る喧騒の中、経済開放施策の歪み?からかお金に貪欲な人が多い南の街。
Sさんが拠点としているミニホテルは安宿が集まるフォングーラオ・エリアの中心にあって、ベトナム
にしては珍しいにこやかな笑顔で接するフロントの女の子が印象的。

「実は結婚してベトナムに住んでいるんですが、入出国を繰り返していた時期はラッキーを常宿に
していたんですよ」といって現れたSさんと近くの路地裏カフェに。

「妻はメコンデルタのミトーにある小さな村で暮らしています。ホーチミンで家を買うお金もないし、何
よりミトーの田舎に暮らす人にとってホーチミンは大都市すぎますし・・・。僕がミトーに住めればベス
ト、でも収入源がありません。それで生活手段としてパッカーの人たちを対象にミトーを知ってもらう
旅行業務を始めようと今準備中なのです。といっても旅行ライセンスは取れませんので、こじんまり
としたプライベート営業です。幸いに住んでいるホテルのオーナーがフロントを使ったり看板出しても
いいと言ってくれているので助かっているんですよ。ホテルの集客にもつながりますしね」

30歳前後だろうか、ベトナムに出没する怪しい日本人とは異なる精悍なSさんと話している間に、
カンボジアやタイからやってきた顔見知りのパッカーたちが何人も通り過ぎていく。
ほとんどのパッカーはベトナム周辺国を廻っているために何故かあちこちで出会ってしまう。
偶然にもラッキーの同宿者が話の輪に入ってきた。

現地で生計を立てるのは大変なこと。しかしSさんの姿は極めて自然体、自分の置かれている環
境を活かそうとする姿にも好感が。
「妻が住んでいるミトーの村をパッカーの人たちに知ってもらえればと思って、村のホームステイや
バイクタクシーでミトーを廻るミニツアー、フォングーラオの路地裏マップも作ろうかと考えているん
です。ミトーといっても広いですから、普通のツアーや通り一遍の滞在では味わえない体験をして
楽しんでもらえればと・・・、もちろん料金はフォングーラオで一番安い現地価格で」

日本で暮らそうとは考えなかった?
「それはまったくなかったですね。パッカーとしてあちこち旅して廻っていましたし、いつかは海外で
暮らそうと考えていましたから・・・。ベトナム、中でもホーチミンはボッタクリで有名ですから街の評
価は二分しますよね。正直言ってむちゃくちゃな街です。でも日本のように自殺するようなストレス
はありませんし、のんびり暮らすにはいいですよ。軌道にのればホーチミンは誰かに任せて妻のい
るミトーに住むのが夢なんです」

あれから数年、Sさんは旅行雑誌でも取り上げられすっかりフォングーラオで有名に。フォングーラオ
路地裏マップも好評とか。
結婚を機に、現地で生計を立てようとする日本人のひとつの生き方がここにあった。