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悪夢のスロベニア〜ハンガリー徒歩越境







はじまりは、リュブリャーナにあるバスターミナル案内所の偽情報。
「ハンガリーのブタペストへの国際バスはないよ。鉄道が通ったからね。ただ国境の街まで行けばハンガ
リー行きのバスがあるからそれに乗ればいい」
バスの出発まで1時間。鉄道の出発までは8時間も待つ必要がある。
到着時間を聞くと、「10時間かかる」と言われ、そんなに時間がかかる距離でもないのに、と一抹の不安。
しかし、待ち時間にうんざりしていたこともあって、バスのチケットを買った。

国境の街に着いたのは夜の10時、予定より3時間も早い。バスターミナルで国際バスについて聞いてみ
ると、不安が的中。
「誰だそんなことを言ったのは…。ハンガリーまでのバスはあることはあるけど、定期路線じゃないよ。安
宿・・・? そんなの知らない。国境まで7キロだからとりあえず行ってみたら」
そんなやりとりを聞いていたターミナルのスタッフが、家に帰るついでに国境まで連れて行ってくれること
になった。国境までは10分もかからなかった。国境のゲートに入ると、スロヴェニアの国境係官が集まっ
てきた。

「徒歩で国境を越えるのか? ハンガリー側で迎えは来ているのか? LINTIという街まで10キロ、歩くか
タクシーを電話で呼ぶしかないよ。まったく、なんで鉄道で行かないんだ。ところで、ユーロは持っている
のか? ハンガリー側は両替所がないけど、ユーロがあればなんとか使えるよ」
そう言われて、歩いて5分の通関事務所へ行って、ユーロの少額紙幣を用意。

戻ってきて国境を出ると、今度は50メートル先にハンガリー側国境。ここでは完全な不審者扱い。
スタンプだらけのパスポートを持っているので、余計に怪しまれて徹底的に調べられた。
「入国スタンプ押してやるよ。街まで歩いていくしかないな」
国境係官が指差す先は、ほとんど真っ暗。答えはひとつ。ヒッチハイクしかないと思い、国境から出てく
る車の前に立ちはだかる。

「何でこんなところに一人でいるんだ。駅まででいいか?」
運よく最初の車でいい人に巡り会い、強引に乗せてもらった。駅に着くと、中はホームレスだらけ。
駅員も誰もいない。「これはヤバイ」と、大急ぎで駅を後にして暗闇の道をトボトボ。
もうどうにでもなれとヤケクソ気分。約30分歩いてパブを発見。時間はもう深夜の1時。
中に入ると、一斉に視線が集中。突然入ってきた東洋人を見て唖然としている。

とりあえず熱いコーヒーを飲んでから、お店のマスターに事情を説明。
「代金をユーロで払いたい」と言うと、ユーロを初めて見たとかで、計算に一生懸命。
両替にも応じてもらって、タクシーも呼んでくれた。
タクシーの運転手もとてもいい人だった。一番安い一泊10ユーロのレストラン兼ホテルに連れて行って
くれ、ブタペスト行きの時刻とバスターミナルへの地図も書いてくれた。
英語ができないホテル従業員との通訳もしてもらった。

こうしていろんな人の親切に支えられて、何とか無事にベッドで就寝。長い一日は終わった。そして普通
に列車で国境を越えていれば、一生立ち寄ることはなかった"LINTI"という街がとても好きになった。