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もう一つの生き方。日本を離れて。
中国・大連編






「こんなはずじゃなかった。中国は麺文化の本家、イタリア・パスタも受け入れられると思ったのに……」
こう話すのは、旧満州の中国・大連(Dalian)の日本人イタリア料理店オーナーのFさん。

グルメな中国南方地域は肌に合わないと、ロシア人街もあってエキゾチックなたたずまいを見せる街並み
が気に入って大連初のイタリア料理店を開店したものの、ガラス張りのオシャレなイタリアン・レストランを
外から覗くだけで決して入ろうとはしない中国住民。開店以来、店を訪れた中国人は数人を数えるだけ。

同じくコーヒー需要を期待して進出したUCC珈琲も大失敗したとか。UCCは日本企業の事務所が集中す
る日系の森ビル内にアンテナショップとして喫茶店を出店するものの、訪れるのは日本人が大半。
オフイス・コーヒーの進出計画も頓挫してしまった・・・。

Fさんは進出の際の苦労話についても語ってくれた。
「日本人スタッフ3人で出資して会社を作り、査証や許認可の取得にもとても苦労したんです。それよりも
痛かったのは、施工の見積もりはもらったものの、約束どおりの金額で工事ができなかったこと。外国人
ゆえにカモられたことですね」

それでも大連に出店して後悔はしていないらしい。
「今でも南方にすればよかったとは思っていませんし、いずれ大連も日本のように外国の食文化を日常
的に楽しむようになると思いますよ。実際に中国に来て、麺に対する奥深さもわかりましたし、パスタ料理
人として勉強にもなります。何よりも大連の街が肌に入っているので、ここに住んでいるだけでも満足して
いますよ」

幸いなことに、この街に住んで、思いもしなかった需要もでてきたという。
大連は香港からの中国人商用族が集まる街。上海、北京と並んで近代化を進めているために、商魂たく
ましい香港ビジネスマンの来訪が多い環境だ。
そんなことから、香港人の舌を満足させるためにホテルからイタリア料理の講習会を頼まれたり、実際に
パーティー料理の立案や調理を依頼されるケースも増えているとか。

また一番の需要は、日系企業や日本人駐在員家庭からのケータリング注文。大連湾岸にある産業開発
地区には日本の海産物加工工場が集中し、かなりの数の日本人駐在員が勤務している。
日本人にはすでに家庭の味となったイタリアンを食べないで我慢はできないらしい。家庭からの注文は、
イタリアン以外にもバースディケーキから日本式お弁当の注文にまで発展。大量のお弁当注文が日系企
業から舞い込んでくることもある。
大連にも日本料理店はいくつかあるものの、日本人経営者は撤退し、中国人オーナーに代わってしまっ
た店も多い。「お弁当を頼むなら日本人シェフに」といった心理が働いているのかもしれない。

「日本企業や日本人家庭の台所的存在になることは、日本人として嬉しいことです。パスタを好んで食べ
る大連の人々の姿を夢見てがんばります」

パスタと大連の街並みに魅了された、日本人のひとつの生き方がここにあった。