海外移住情報 旅コラム


メキシコ
チェトマルの日本人を訪ねて






メキシコ、ユカタン半島のカンクン。空港からのバスは、一流ホテルが建ち並ぶリゾートエリアを廻り
ながら、終点でもあるダウンタウンのバスターミナルに止まった。
「実は、マヤ遺跡で有名なチェトマル(Chetumal)に友達の日本人女性が住んでいるんだ。メキシコ
人と離婚したものの、意地を張って日本に帰ろうとしない。家族の反対を押し切って結婚したから、
今どうしているか心配。もしメキシコに行く機会があるなら、会ってきてくれないか」

そんな友達の言葉がきっかけになって、アメリカ滞在中にメキシコ小旅行をすることにした。
雑然としたバスターミナルでチケットを買ったものの、あいにく4時間後のバスまで満席。
しかたなくイスに座って待っていると、50代の日本人Aさんに声をかけられた。

「偶然ですね、私もチェトマルに行きます。フリーで木材のバイヤーをしているので、買い付けですよ。
仏壇用の特殊な木がチェトマルのジャングルにあるというので、見に行くのです。もし見つかればか
なり高い値段で日本企業が買ってくれますから。でもジャングルの中を歩くのは大変ですよ。マラリ
ヤにもかかりましたし」
探している木がみつかれば、チェトマルに事務所を作る計画だというので、これから訪ねて行く日本
人をぜひ紹介して欲しいと頼まれた。事務所のスタッフとして雇用するなら、やはり真面目な日本人
が一番らしい。

8時間ほどバスに乗り、着いたのは夜中。右も左も暗闇の世界なので、Aさんと同じホテルに泊るこ
とにした。朝6時に起きてロビーに下りると、Aさんはすでにジャングルに出発していた。
昨夜は気がつかなかったものの、10ドルの宿にしてはとても大きい。
大きな風呂敷袋をかついだオバサンたちが多く、商人宿として繁盛しているらしい。みんな日本人が
珍しいのか、目が合うと親しげに話し掛けてくる。

めざす日本人女性が住むアパートは宿から歩いて20分ほど。宿の人に書いてもらった地図を片手に
歩いていると、親切な人がアパートまで案内してくれた。
部屋をノックすると、出てきたのはメキシコ人の若い女の子。先月引っ越してきたという。
日本から来たというとビックリして、アパートの全部の部屋を廻っては、日本人女性について知ってい
る人を探してくれた。

「彼女はよく知っているわ。とても仲良しだった。コスメル島に仕事が見つかったとかで引っ越したの。
住所はまだ連絡がこないから知らない。日本に帰りたかったみたいだけど、コスメルはリゾート地で
日本人の観光客も多いから、きっと楽しく生活しているわよ。わざわざ彼女に会いにきたの? せっ
かくだから、チェトマルを案内するわ。私は失業中だから暇なのよ。ベリーズやグァテマラに行くのな
らバスも出ているわよ」

目的の人には会えなかったものの、想像した感じでは元気そうなので一安心。街を案内してもらうと、
とても素朴で住みやすい環境。この街を選んで住んでいた理由が分かるような気がする。
きれいなビーチが目に飛び込んできたとき、もう少しここに滞在することに決めた。
宿に戻るとバイヤーのAさんも戻っていた。探していた木は見つかったらしい。
ただ、目的の女性と会えなかったことを伝えると、とても残念そうな表情。もし彼女の連絡先が分かっ
たら知らせることを約束した。