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ISBN:4-04-270501-4
書名:彼が彼女になったわけ 角川文庫
著者:デイヴィッド・トーマス 著、法村里絵 訳
出版者:角川書店
価格:\854 (刊行時)
えっと、イギリスの小説です。
雑誌に載せる広告を取ってくる営業マンのブラッドリーくんは、親知らずを四本とも抜いてしまうために病院に入院したんだけれど、目がさめたら、なんと女の身体になっていた! 別によくある意識交換モノのナンセンスコメディがはじまったんじゃなくて、なんと、性転換手術を受ける患者と、間違えて手術されちゃったのだ。前代未聞の患者取り違え事件にマスコミは殺到するわ、仕事は失うわ、もう大変。だけど、男への再転換手術は不可能と診断されたブラッドリーくんにとって1番大変だったのは、自分が女として扱われるという事だった・・・
訳者の人は巻末の解説で、性同一性障害(自分の肉体の性別に違和感を観じて苦しむこと)と絡めて語っていたけど、響谷はちょっと違う読み方をしました。
もう男の身体を取り戻せないと判ったブラッドリーくんは女としてジャッキー(ジャクリーン)という名前で人生を再開しようと決意するんだけど、なれないことだらけで悪戦苦闘。化粧、服、男の下品な冗談、歩き方、しゃべり方、ちょっとしたしぐさetc...
いかに女らしく振舞うかということを周囲からも求められ、自分でも努力するジャッキー。でも、響谷は思うのだ。なんで、女の身体を持ったら女らしくなくちゃいけないの?(あるいは男の体を持ったら男らしくしなきゃいけないの?) 最初に読んだとき、響谷はこの展開がいやだった。でも、実際にはそういう圧力が世の中にはあるんだよね。性転換しようがもとからその身体を持っていようが、その身体の性別にふさわしい行動をあるときはやんわりと、あるときは無理やり求められ、いつしかそれが当然と思うようにならされている。そのことに違和感を感じる人は「変な人」として処理される。
そういう視点で読むと、だんだんブラッドリー/ジャッキーのことがかわいそうになって、でも、そこに自分が重なって見えてきたりして。
と、こう書くとすごく暗い小説みたいだけど、実際にはユーモアもあふれていて、読みやすい小説なので、ぜひ一度読んでみてください。
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