ほすとの世界・第一話 〜現れたのは男の子!?〜

ここは東京のとある駅前の商店街。
人通りも結構あって賑やかなのに、なぜか一軒だけ、閑古鳥の鳴いている小さな雑貨屋さんがありました。

「あ〜あ。今日もお客さん、なしかなあ。これじゃ明日のご飯もわからないわ。」

お客さんのいない店内で、一人呟く女の子がいます。
彼女は高校を卒業したお祝いだと言われ、両親からこの店”思い出博物館”を任されたのはいいけれど、お店の経営なんてやった事も無いわけで、何をやっても空回り。開店当初から少しずつ客足は遠のき、今では週に一人は来ればいい方で、大概は冷やかしさんばかり。
店内にはそれなりにいい品物もあるのですが、彼女の思い出の詰まった品物も陳列されています。
今日も一人レジの後ろでため息をついていました。

「今日はもういいや。閉めちゃお。」

日もまだ高いというのに、彼女は店じまい。レジに入っている僅かばかりのお金を持って、町をぶらつくことに。こんなことでいいのでしょうか。

そんな彼女の唯一の楽しみは、ゲームセンター。ストレス解消にゲームが一番性にあっているのでしょう、彼女は店内に入ると、中で稼動しているゲーム機の物色を始めます。あれも、これもやった事のあるものばかり。中には自分のイニシャルが登録してあるゲームもあります。

「あら?これは初めてみたい。”メモリーキャッチャー”?」

店の隅っこの方に、見慣れないマシンを見つけた彼女は、引き寄せられるように近づき、それを見つめます。
何の変哲も無い景品モノのキャッチマシンですが、ディスプレイで質問に答えると、その結果によって、獲得する景品が違うようです。

「ふうん。やってみよ。」

ポケットの中から小銭を出すと、投入口に入れました。ディスプレイに質問が表示されます。質問は全部で20問。それはなぜか、彼女の過去がわかっているような質問で、彼女は少し不思議な気分になっていました。
やがて全部の質問をクリアすると、中の機械が動き出し、小さな札の入ったカプセルが出てきました。どうやらこれを受付の交換所に持っていくと、景品と交換してくれるようです。
彼女はカプセルを交換所に持っていくことにしました。交換所にはタキシードを着た係りのおじさんがいます。

「おや、景品の交換ですかな?お嬢ちゃん。」
「は、はい。これが出たんです。」

少女はすごすごと先ほど獲得したカプセルを差し出します。係りのおじさんはカウンターの下をがさがさとまさぐって、景品を取り出しました。

「これだよ。はい。」

差し出された景品は、中央に直径1センチくらいの緑色に輝く丸い玉がはめ込まれた十字架のペンダント。
受け取った彼女は思わず見とれてしまいます。

「わあ、きれい。」
「そうかい、きれいかい。」
「ええ。だって、緑色に透き通ってるんだもの。」

彼女の言葉に、おじさんは確信しました。<この女の子こそ、主に間違いは無い。>と。
そう、中央の玉は普通の人が見れば、濁って何の変哲も無い緑色に見え、適格者は透き通って見えるのです。

「こいつを持ってれば、いいことがあるよ。」

おじさんはなんだかにこにこして、彼女に話し掛けます。彼女は受け取ったペンダント、”ロザリオ”を早速首から下げると、

「ありがとう。」

と、ゲームセンターを後にしました。

「何だか不思議なおじさんだったな。」

その日の夜、夕食を終えた彼女は、ロザリオを眺めては中央の玉を見つめていました。

「どんないいことが起きるのかな?」

そう呟いた瞬間、突如、その玉は輝きだします。

「きゃ!な!なに?」

慌てた彼女はロザリオをベッドの上に放り出しました。すると、輝く玉の中から、6人の男の子達が次々と現れました。

「よ、待たせたな。ご主人様。」
「お待たせしました。ご主人様。」
「大事にしてくれてありがとうございます。ご主人様。」
「まいどおおきに。ご主人はん。」
「おいらに任せな!ご主人。」
「頑張ろうぜ。ご主人様。」

いきなり現れた美少年達にご主人様と呼ばれ、彼女はびっくりドッキリ。
はてさてこれからどうなるのでしょうか?

第2話へつづく。