〜謎!?闇の美少女&凛!武闘派少女〜

その日の夜、車中で寝たせいか、誠は寝付けずに屋敷の中をうろついていた。すると、2階のテラスに誰やらメイドがいるのを見つけた。横顔を見るとアイリに似ている。
誠が声をかけようとしたその時、メイドは誠の気配に気がつき、踵を返してテラスから逃げるようにして駆け出した。<あれ、アイリちゃんじゃないのかな?>不思議に思う誠だった。
翌朝、朝食時にアイリがいるのに気づいた誠は声をかけてみる。
「ねえ、アイリちゃん、夕べテラスにいなかった?」
「え?知らなーい。アイリ寝てたもの。」
「あ、そう・・・」
他のメイドたちはくすくす笑っている。誠はますます訳がわからない複雑な気持ちだ。何としてももやもやを解消したくなった誠は、その日の夜、地下最下層に足を踏み入れた。
果たしてそこには、巨大なコンピュータシステムが配置され、数名のスタッフが慌しくキーボードを操作しているまさに電子の要塞と言った様相を呈していたのだ。そしてその部屋の中央部で一際キーボード操作の早いアイリに似た少女がいた。
「やっぱり来たな、花集院誠、否、桂木誠。ようこそ。我が闇組の中枢へ。」
「きみは、ゆうべの・・・」
「そうさ、あたしだ。おっと、あたしの名はエリス。エリス=エレ=ダールストン。MAID隊情報、諜報担当、闇組チーフだ。」
エリスと名乗っているアイリに似た少女は、冷徹な視線を誠に投げかける。
「あんたの動きは逐一トレースさせてもらってるよ。アイリがお前さんを守って欲しいってうるさいんでね。」
エリスは少しげんなりした表情だ。誠は思い切って尋ねる。
「アイリちゃんはどうしたんだ?」
するとエリスはおもむろにとあるレントゲン写真とCTスキャナの写真をモニタに投影した。
「これがあたいの頭の中だ。良くみな。脳みそが二つあるだろ?右のこっち側があたい。左のがアイリのさ。あたい達は夢の中で話をしてるんだ。今はアイリがおねむの時間だからあたいが少し動いてる。活動時間は短いが・・・」
「その分ここで一生懸命がんばってるんだね。ありがとう。でも、あまり無理はしないでよ。アイリちゃんが悲しむからね。」
「安心しろ。お前はアイリの“恋人”だからな。お前が悲しむと、アイリも悲しむ。そんな事はごめんだからな。必ずお前を守る。あたいとこの“KAEB”(カエブ)でな。」
「“KAEB”?」
「あたいが考えた世界最強のスーパーコンピュータさ。世界中のあらゆるコンピュータに侵入することが出来、世界中の情報を収集し、この屋敷とお前を守る電子要塞、それが“KAEB”さ。」
「へえ。じゃ、献立システムもエリスが考えたんだ。」
「ああ。ちょっとした遊びだがな。」
 

「おっと、つい話し込んじゃった。エリス、俺はそろそろ寝るね。おやすみ。」
ふと覗いたディスプレイには最近オープンしたばかりのテーマパークのホームページが開かれている。やはりエリスも女の子、興味があるのだろう。誠は今度の誕生日に連れて行こうと思った。
「あ、そうそう、MAID隊全員の誕生日を後でいいから俺の部屋にメールしておいてくれないかな?頼んだよ。エリス。」
「利用目的は?」
「イベント開催のためとでもしておくよ。じゃ。」
「了解した。」
誠はコンピュータルームを後にし、寝室に向かう。途中で麻利亜と行き会う。
「どうしたの?桂木君。」
「あ、いや、ちょっと眠れなくてね。」
「お部屋まで送ってあげる。」
「そうか、悪いな。」
二人は赤い絨毯の敷いてある廊下を歩き出す。
「ねえ、桂木君。」
「何?」
「腕、組んでいいかな?」
「それよりも、俺はこうしたいな。」
誠は右腕を麻利亜の腰に回した。自分が本当にして欲しいことを誠はしてくれる。回された手の温もりを麻利亜は胸をドキドキさせながら楽しむ。
「桂木君って不思議ね。」
「どうして?」
「だって、いつも私の予想を超えて、して欲しいことがわかるみたいなんだもの。」
「それだけお前の想いが俺に強く伝わってる証拠だよ、たぶん。」
「桂木君・・・ばか、恥ずかしいじゃない。そんな。」
「ホントだろ?」
誠は自分で言っていて歯の浮く台詞を連発していることに気づいていた。しかし、今自分の右腕の中には今時分の一番大切な人がいることに変わりはない。そんな事は因果地平の彼方にすっ飛んでいた。麻利亜もまた、このまま誠のペースで事を運ばれでもしたら誠に抱かれてしまうかも知れない、でも、お役目を果たさなければならない、頭の中はパニックだ。
「ちょっと中庭に出てみようよ。」
一階の廊下から中庭に出る誠たち。月明かりが芝生を照らしている。噴水の脇にある長椅子に腰掛け、月を眺める。遠くからは虫の鳴き声が噴水のBGMに彩りを添える。
「静かだねえ。」
「ええ。」
「不思議なものだな。考えてみれば、俺、麻利亜と一日中一緒にいることになるんだぜ。」
「そうね。」
「これって、下手な夫婦より幸せなことかもしれないな。」
「どうして?」

「学校でも、ここでも、いつも麻利亜と一緒。俺は麻利亜ガそばにいてくれるだけでなんだかいい気分になれる。麻利亜はどう?」
「それは、勿論嬉しいわよ。だって私、桂木君のこと、好きだし。今だって、ほら、胸がどきどきしてるの。」
麻利亜は誠の手を取り、自分の胸に押し付ける。
「私ね、不安なの。桂木君のお役に立ってるのか。」
「ああ、十分だよ。」
そしてベンチの背もたれにもたれて夜空を見上げるのだった。二人の距離は確実に接近している。麻利亜はそう実感していた。

その頃、花集院家と双璧を成すライバル社、土御門財閥は次期総裁継承者を招き、その絶対条件を提示していた。
「お爺さま、土御門家次期総裁継承者、まかりこしましてよ。」
「うむ。よう参った。ささ、巴、お前の美しい顔を見せてくれ。」
御簾越しに声を掛ける老人は現当主の土御門泰蔵、78歳だ。
「まあ、お爺さまったら、相変わらずね。で、今日は何の御用ですの?」
少し怪訝そうに後継者の土御門巴は、御簾の奥に声を掛ける。
「うむ、巴、心して聞くが良い。先ほどのテレビは見たかの?」
「はい。花集院の新総帥ですね?]
「そこで巴、お主は奴をその美貌で虜にし、我が土御門家の婿にせよ。それが巴に課す新当主への条件ぞ。」
「な!なんですって!あんな軟弱男と!?」
声がひっくり返った巴だった。婿取りと言えば自身の結婚を意味する。テレビで流れた誠の姿は、司会にサインをねだり、終始へらへらとした笑顔で応対をし、全く持って緊張感のないイメージで巴に映っていた。彼女はそんな男は大嫌いだったのだ。泰蔵はその男と結婚しろと言う。一番嫌いなタイプの男との結婚。彼女にその言葉は重くのしかかった。更に泰蔵は続ける。
「ふっ。出来ぬと申さば、否、それだけの器量なくしてお前に家督はやらぬ。よいな。」
その言葉を耳にした巴は
「冗談じゃございません事よ!わたくしに不可能はありませんわ。」
自分の本心を偽るように自信満々とした態度で返答をし、当主の部屋を後にした。

翌日、学校から帰った誠は、アイリに誘われて庭の散策を楽しんでいた。3000万坪と言う敷地は岩場あり、渓流あり、山林ありの風光明媚なたたずまいで、メインの庭は造園専任メイド達が日夜手入れをしている。屋敷から南東の方向にある花壇の辺りに差し掛かったとき、けたたましい排気音とともに、屋敷内の警報が鳴り響いた。
「侵犯機影補足!第1種防衛体制発令!各対空機銃及び対空ミサイルスタンバイ!」
梨絵のアナウンスを尻目に、その排気音は次第に大きくなり、上空には多数の武装ヘリ部隊を率いる大型VTOL飛行艇がホバリングを始めていた。屋敷の各所からあらゆる砲門やミサイル発射台が競り上がり、上空に狙いを定める。
「これより防衛行動を開始します!屋外へ出ている人員は至急邸内へお入りください!」
「お兄ちゃん、中に入らないと。」一番嫌いなタイプの男との結婚。彼女にその言葉は重くのしかかった。更に泰蔵は続ける。
「ふっ。出来ぬと申さば、否、それだけの器量なくしてお前に家督はやらぬ。よいな。」
その言葉を耳にした巴は
「冗談じゃございません事よ!わたくしに不可能はありませんわ。」
自分の本心を偽るように自信満々とした態度で返答をし、当主の部屋を後にした。

翌日、学校から帰った誠は、アイリに誘われて庭の散策を楽しんでいた。3000万坪と言う敷地は岩場あり、渓流あり、山林ありの風光明媚なたたずまいで、メインの庭は造園専任メイド達が日夜手入れをしている。屋敷から南東の方向にある花壇の辺りに差し掛かったとき、けたたましい排気音とともに、屋敷内の警報が鳴り響いた。
「侵犯機影補足!第1種防衛体制発令!各対空機銃及び対空ミサイルスタンバイ!」
梨絵のアナウンスを尻目に、その排気音は次第に大きくなり、上空には多数の武装ヘリ部隊を率いる大型VTOL飛行艇がホバリングを始めていた。屋敷の各所からあらゆる砲門やミサイル発射台が競り上がり、上空に狙いを定める。
「これより防衛行動を開始します!屋外へ出ている人員は至急邸内へお入りください!」
「お兄ちゃん、中に入らないと。」
アイリに促されて誠は屋敷に向かうが、アイリだけを屋敷の中に入れて誠は警戒態勢の続く庭の真ん中に出ていた。誠はこれから起こることに興味津々だ。ヘリコプターの音のする方向をじっと見つめている。
その頃、情報管制室では誠のトレースをしている担当者が庭にまだ誠がいるのを確認、館内放送回線を開いた。

「誠様!危険です!お戻りください!」
「大丈夫さ。心配するな。」

やがてヘリコプターの一団が視認出来るところまで近づいてきた。その機体には撫子の花びらにアルファベットでKの字が上書きされた花集院家の紋章が施されていて、明らかに警戒するべき対象ではないことが判断できた。

「ほらね。」

目の前にひときわ大きいヘリコプターが着陸する。エンジンがアイドリング状態になると、側面のタラップが降りてくる。他のヘリコプターからどっと胸元から鎖帷子を覗かせた黒い軍服調の制服の上に白いエプロン姿の集団がそのヘリコプターの前に整列する。誠の前に開いたタラップからは朱色の絨毯が中から伸ばされ、黒いネクタイをした指揮官を思わせるタイトミニスカートのスーツにやはり白いエプロンを着けた制服を着たすらりと背の高い純和風の美女が現れる。誠は彼女の正面に立っていて、彼女を見上げていた。その視線の先には、あまりにも短い丈のスカートの中の、白い三角の布があった。彼女は凛として左手に愛用の日本刀を持ち、仁王立ちの姿勢のまま、屋敷を見据える。誠に下着を見られていることなど、まるで気にしていないようだ。彼女の持論で、ミニスカートの方が、行動しやすいらしく、更には仕える者になら幾ら見られても、職務と割り切れるらしい。
整列している集団は一斉に右手を挙げ、敬礼の姿勢をとる。まるで軍隊か警察の観閲式のごとき風景だ。タラップの上の美女は隊列の様子を確認すると、タラップを降りるため、下を見下ろす。そこで初めて誠の姿を目にした。

「これはっ!ご主人様自らのお出迎え、誠に恐縮にございます。」

一足飛びにタラップを降りる。彼女の腰まである長い髪がふわりと流れる。

<綺麗だなあ・・・>

誠は見とれていた。彼女は猫のような柔軟な体捌きで音もなくふわりと誠の目の前に降り立ち、片膝をついて敬礼をする。

「天使みたいだ。」

思わず口にした誠の一言は彼女の心に”女”の灯を燈した。見る見るうちに耳まで赤くなる。彼女にとっては今まで修羅のごとく修行をし、自分が女である事など忘れていたから、天使と言う言葉は実に心地よい響きとして彼女の胸に染み渡った。

「き、恐縮です。ご主人様。私、警備担当、焔組チーフ、早瀬衛でございます。」
「初めまして。桂木 誠です。君がいればここは安全この上ないんだね。よろしく頼むよ。」

誠は衛を半ば見下ろす形になっていて、片膝を付いて更にめくれあがった衛のスカートの中身を気にしながら、握手を求めようと右手を差し出す。<ん?待てよ、左手に刀を持っているんだから、右手は利き手だ。滅多に出さないのかな?>そう思った誠は差し出した右手に換え、左手を改めて差し出す。この誠の行動は、自分が信頼して余りあるものだと、衛は思った。

「利き手へのご配慮、痛み入ります。粉骨砕身、ご主人様をお守りいたします。ご安心ください。」
「衛さん、左手は心臓に近い。これで僕と君は一心同体。君は僕の楯と剣になった。そうだね?」
「おっしゃるとおりです。そのお言葉、深く私の胸に刻み、精進いたします。」

衛は思った。見た目はごく普通の男だが、自分の邁進してきた武道の心がわかる男なのだろうと。左手での握手はまさに主従の誓いを立てるものなのだ。衛は感動していた。更には部下の前にてこの態度を見せることで、部下達への範となる。

「とりあえず、対空警戒の訓練はうまく行ったみたいだね、衛さん。」
「痛み入ります。イレギュラーポイントを自ら演出なさるとは。」

衛は更に誠への信頼を深めた。屋敷の玄関から麻利亜とアイリが駆けてくるのを見やった誠は、衛を部下の下へと促す。

「さて、衛さん、部下のみんなが待っているみたいだよ。行ってあげな。」
「畏まりました。では後ほど。」

麻利亜とアイリのところに向かう誠の背中を見送りながら、衛はすっと立ち上がり、号令をかける。

「ご主人様へ敬礼!あれぞ我らが主なり!」
「はっ!」

誠はこれほど頼もしい人たちなら安心だと、背後で聞こえる軍靴にも似たハーフブーツの踵が打ち合わせられるザッと言う音と、少女達の気合の入った声を聞いていた。

「焔組か。すごいな。」
「ええ。早瀬さんたちは戦闘のスペシャリスト。桂木君はややもすると、テロリストやら暴漢やらの襲撃を受ける事もあるの。それからこの屋敷も危険に晒されるかもしれない。そんな時に早瀬さんたちが活躍するのよ。」
「ふーん。」

誠は麻利亜たちと屋敷のテラスで焔組のヘリコプターが地下格納庫に収容されていく風景を眺めながら感心していた。

その日の夕食後、誠は麻利亜から警備本部の場所を聞いて、訪ねることにした。

「あのー、衛さん、いる?」
「これは誠殿。」
「仕事中だったかな?」
「いいえ、構いませんよ。どうぞ。」

衛はインターホンに飲み物を二つ用意させるよう指示を出すと、誠を応接ソファーに招く。隣の部屋に続くドアが開くと、熱い紅茶を入れたポットとカップをワゴンに乗せて焔組の一人が入ってくる。

「失礼します。」

ソファーに座った誠と衛の前に手際よくティーカップがセットされていく。

「いやあ、見事なものだね。あ、良かったら君も一緒に飲まない?」

話をするなら大勢の方が楽しいものだ。そう思って声をかけた誠だったが、衛はそれをいさめる。

「誠殿、ここでの飲食については、私の外には誠殿しか許されておりません。どうかお許しください。」
「そっか、規則なんだね。わかった。じゃあ、またね。」

空になったワゴンを押して、衛の部下が引き上げると、衛は話を切り出す。

「こんな夜更けに、どうなされましたか?」
「いやねえ、この屋敷にいると、なんだか運動不足になりそうでさ、どうしたものかなって思って。」
「それならば、花組もしくは星組のジムスタッフの範疇と思いますが。」
「普通の運動じゃ、ホウメイさんのご馳走はこなれないんだな。これが。そこでだ、衛さんに相談なんだけど、武道をやってみたいんだ。毎日とはいかないと思うけれど、週に最低一回は稽古をつけてもらいたいんだ。焔組のみんなとは今日会ったばかりだし、みんなの事を分かりたいんだ。どうかな?」
「なるほど。では定期的に行う私達の訓練に時折参加されてはいかがかと思いますが。様々な武道が体験できますよ。スケジュールは後ほど持参いたします。お好きなときにいらして下さい。きっと部下達も励みになりましょう。」

衛は積極的に自分達焔組のことを理解しようとする誠に感銘を受けていた。衛はいつの間にか厳しい顔つきを緩めている。実に柔和な表情で、衛の秘めたる美しさが際立ってくる。

「じゃ、いろいろ大変だろうけど、よろしく頼むよ。紅茶、美味しかった、ご馳走様。」

誠は何だかこれ以上衛と一緒にいると、よからぬ事をしてしまいそうで、怖くなって部屋を後にしていた。

<ふう。緊張した〜。やばいやばい。吸い込まれそうだ。>

深呼吸をして気を落ち着ける誠、そこに尽志三姉妹が通りかかった。

「あ!誠先輩見っけ!」

三つ子は喜び勇んで誠に三方から抱きつく。背中に、腕に、三姉妹の張りのあるバストが押し付けられる。

「誠先輩、どちらにいかれます?お手洗いですか?」
「浴室ですかあ?」
「それとも寝室ですかあ?」

三姉妹にウルルンとした目で見つめられ、緊張して背筋が硬くなっていた誠はうっかり口を滑らせた。

「背中が凝っちゃって。マッサージを頼めるかな?」

マッサージと言えば三姉妹の右に出るものはいないほどの得意分野だ。三姉妹は嬉々として声を合わせる。

「かしこまりました〜〜〜。マッサージルームへご案内しま〜す。」
「よ、よろしく。」

離れの浴室に隣接したところにサウナと併設してマッサージルームがある。それぞれに脱衣所とシャワールーム、サウナには水風呂と普通の浴槽、そしてなぜか衣裳部屋が設けてある。

「何で衣裳部屋があるの?」
「それはですね、誠先輩が好きな衣装を選んでリクエストすれば、私達メイドが着用して、ご奉仕させていただくの。うふ。」
「ちなみに、水に濡れても平気なように撥水性の薄い生地で出来てますの。」
「あらゆる衣装が揃ってますのよ。さあ、誠先輩、どれにいたしますか?」

扉の脇にパネルが設置してあり、衣装を選ばないと中には入れないようだ。

「どれどれ?」

セーラー服にバニーガール、キャンギャル風のワンピースにレオタード、ナース服&スクール水着&体操服、場末のイメクラもびっくりの品揃えだ。アニメやゲームに登場するキャラクターのコスプレ衣装も完備している。その数裕に200点を超える。しかも全て屋敷の中で見たことのあるメイドたちがモデル着用している写真がついている。きっとこのパネルを全部持っていれば、世の中のそっち系の人たちはおかずに困らないであろう。パネルの下の方に”スペシャル”なるボタンがある。

「なに?これ。」
「それは選んだ後のお楽しみです。」

ミミが意味ありげな笑みを浮かべながら答える。

「どれになさいますか?」

しばし考えた後に、誠は”スペシャル”のボタンにタッチする。

「これでいいのかな?」
「はい。」

そのスイッチは誠の近くにて奉仕するチーフクラスのメイド全員が集結するものだった。地下シューターで麻利亜を始め、アイリや梨絵、名栗に桐子、風組の美由やミレイ、裕香、衛が衣裳部屋に集合、三姉妹も加わり、全員トップレスにGストリングスのマイクロショーツに着替え、(衛だけは愛用の日本刀を紐で肩に背負っているが)マッサージルームとシャワールーム、脱衣所の配置に付く。誠にすれば内容が良くわからないのだから仕方がない。スピーカーから聞こえる三姉妹の案内に従って、脱衣所に入る。

「お待ちしてました。」
「梨絵!名栗ちゃんに桐子ちゃん。」
「誠殿、警備は任せよ。」
「こ、これは一体!?」
「スペシャルの奉仕であります。ささ、服を脱いで中に進まれよ。」
「は、はは・・・」

誠は4人の格好を見て、みなそれぞれに魅力的なプロポーションだと感心していた。衛の成熟したボディーラインに、これからまだまだ発育しそうな梨絵たちのライン、透けたショーツの生地から見える見事に処理されたアンダーヘア、余計なところが凝ってきそうだ。

「さ、こっちこっち。このカプセルに入って。」
「なんだい?これ。」
「名付けて、”当主専用脱衣マシーン!”あたし達金組の自信作よ!」

自信満々に梨絵は誠を半透明のカプセルの中に押し込むと、両サイドにある操作ボードの前にいる名栗と桐子に合図をする。

「システム起動!」
「了解!」
「サブシステム起動!」
「おっけー。」
「プログラムロード!」
「プログラム転送、オールグリーン。」
「エネルギーチャージ、オールグリーン。」
「よし、スキャニング開始!」

不安そうに様子をうかがう誠を尻目に、股間に小さな透けた布を着けただけのメガネっ子達が操作ボードを動かしている。先ほど入ってきた入り口のドアの前では肩幅に足を開いて腕組みをした衛がじっとその光景を見据えている。組んだ腕の上には見事に膨らんだ双丘が乗っかっている形だ。

「大丈夫?」
「動かないで!」

足元からリング状の物体がゆっくりとカプセルの外面を登ってゆく。恐らくセンサーの類らしい。身を乗り出そうとした誠を梨絵は制止する。身を硬くした誠は直立不動の姿勢になる。

「データ収集完了、次のステップへ。」
「誠様、右手にあるマスクを着けてください。」
「あ、ああ。」

カプセルの天井からぶら下がっているマスクを口に当て、ゴムバンドを後頭部にまわして固定する。その様子を確認した梨絵は次の指示を出す。

「緩衝ジェル注入!」

足元の床が網状になり、ずぶずぶとジェルが誠の体を包んでゆく。<うう〜、気持ち悪い〜。>体を包んでゆくジェルの感触に頭がくらくらしてきた。着用しているマスクのお陰で呼吸は出来る。全身をジェルに埋もれても恐怖感がない事を知ると、少し安心する誠だった。

「カプセル内、ジェル充填100%!緩衝ジェル循環開始。」
「おっけー。さーて、第3ステップ、行くわよ!粒子破砕波、照射!脱衣、再構築開始!」

桐子の報告を受け、梨絵は続いて名栗に指示をする。どうやらジェルはこの粒子破砕波から人体を守るためのもののようだ。名栗がスイッチを入れると、ヴォーンと言う低い音と共に、足元から誠が着ている物や靴が消えていく。隣に設置してあるカプセルの中に、このジェルは繋がっていて、破砕された粒子が移動、隣のカプセルに再構築されてゆく。1分ほどでそれは完了し、ジェルが抜かれ、誠はカプセルから開放される。

「お疲れ様。そのままシャワールームへどうぞ。」

誠は梨絵たちに連れられ、シャワールームに入る。ここには美由たち風組のメンバーがいた。梨絵たちと衛も一緒だ。

「ジェルを落として、体を温めましょうね。」
「まこちゃんとシャワーなんて、久し振り。ね、ミレイ。」
「そうね。」

蛇口をひねり、ぬるめの湯を出して頭から全身に勢いのよいシャワーが浴びせられる。風組のメンバーと金組のメンバーがあちらこちらから手や体を使い、ジェルを落とそうとする。合計十二個の手と乳房がぬるぬると体に押し付けられ、こすられる。誠は完全に健全な男の反応をしてしまっていた。遠目に衛はその光景を見て、胸を高鳴らせていた。<役目がなければ、誠殿に触れられるのに・・・。>悔しい思いをしながらも、衛はなぜか、湯も浴びていないのに濡れている自分が恥ずかしく思えてきた。股間に食い込むショーツの紐が手を貸してもいたのだ。
悶々としている衛を尻目に、美由たちは楽しそうに誠の体の感触を楽しんでいた。
やがて全てのジェルを流し終えた誠は、マッサージルームに連れて行かれる。そこには麻利亜とアイリ、ヒトミ、フミ、ミミが待機していた。広い部屋の真ん中にエアーマットが敷かれ、枕がセットされている。アロマオイルが焚かれ、部屋には芳しい香りが漂っている。

「こちらにうつ伏せになってください。」

麻利亜は誠の手を取り、エアーマットに案内する。全員の視線は誠の一点に集中していた。誠はマットにうつ伏せになる。

「よ、よろしく。」

そう言ってからだの力を抜く。

「皆さん、精一杯頑張りましょう。」

ちゃぷちゃぷと何かを体に塗りつけると、麻利亜の声で一斉に誠の全身にメイド達の手と言わず体のあちらこちらが這いまわり始める。気が付くと着けていたはずのショーツはなく、全裸になっている。マッサージとは名ばかりで、まるで泡の国の何とかプレイ状態だ。誰かわわからないが腕を取られ、つるっとした感触があると、次の瞬間、麻利亜が誠とマットの間に滑り込んでいた。両足は広げられ、誠が少し体をずらせば受け入れオッケーの、そんなデンジャラスな状況だ。フミは誠のものを手にして、ミミがその先端を麻利亜のそこにあてがうと、ヒトミが誠の腰をぐいと押す。

「あうん・・・」

麻利亜が切ない声をあげる。誠はそこに暖かい感触を覚えた。体に塗りつけたもののせいか、スムーズに誠のそれは麻利亜の中へと挿入されてしまったのだ。いかんと思ったが後の祭り、誠は麻利亜の感触の虜になってしまった。

誠がマッサージルームから開放されたのはそれから3時間を過ぎてからだった。アイリは別として、全員と誠は結合をしていた。麻利亜たちは全員満足した表情で、誠はげっそりしていた。

「衛さんまで来るとは思わなかったよ。」
「主の全てを知らなくてはお守りする事は出来ぬゆえ。」

顔を真っ赤にして衛は答える。

「たくましゅうございました。では、今宵はこの辺で。」

捨て台詞を言うと、衛は素早い身のこなしで屋敷の中に消えていった。

第4話