父島のおがさわら丸専用埠頭。左側に停泊している船が東京竹芝と小笠原諸島父島との間を結ぶ定期客船「おがさわら丸」の船体。突然のスコールに濡れる桟橋の上を、気ままに島をめぐるために僕がレンタルしたスクーターで突っ走る。定期客船航路としては国内でも稀な長距離を航海するおがさわら丸は、しかし親しみやすい庶民船として伊豆諸島航路でおなじみの畳の大部屋や二階ベッド部屋、またもちろん個室の船室を有する。豪華客船ばりの大型フェリーによる沖合ホテルシップもいいが、小型の船として岸壁に接岸できるおがさわら丸にはホテルシップとしては島の陸地との間の往来がいつでも自由という長所がある。オプションで島のホテルに宿泊することも、予約が必要なことが多いが可能だ。環境問題優先の島の気風から飛行場のない小笠原諸島・父島にとって唯一の本土便である。片道28時間の航海。もしも本土の若者と島の娘とが恋におちたなら、これ以上の遠距離恋愛ストーリーはありえない。東京都内の島なのに。