東京近辺はとてもアメリカ軍基地の多いエリアでもある。赤坂プレスセンターにはアメリカ陸軍ヘリポートがあり、都下の横田基地はアメリカ本土級の都市風景の見られる3000メートルランウェイのある空軍基地でありアメリカ本土やハワイからの空輸便が多く飛来し、厚木基地には横須賀基地のドックを唯一の海外母港とする米空母に艦載のジェット戦闘機が集まり、もちろん横浜の埠頭の一角にも、僕が乗っている晴海発のチャーターフェリーが向かう小笠原諸島父島の南に浮かぶ硫黄島にも実質米軍基地ともいえる軍用の飛行場があって、アメリカ海軍のF14やF18などの戦闘機がタッチアンドゴーのフライト訓練を繰り返している。ところで写真は、個室の船室が多く世界クラスの豪華客船並の規模そしてインテリアとを誇る大型フェリーのデッキから写した、アメリカ海軍横須賀基地の風景。独特な形状をしたアメリカ軍基地らしいハイライズ(アメリカ軍人ファミリー向けコンドミニアム)が海辺に数多く建ち並んでいるからすぐに「日本の中のアメリカ」の風景だとわかる。基地の中はアメリカの法律が適用されるれっきとしたアメリカの租界。基地滞在者向けのラジオ放送は基地の外の一般日本人でも楽しめる。天然のトコナツで知られる小笠原諸島という島々も1968年まではアメリカ領で、The Bonin Islandsの英語名で呼ばれていた。トーキョーベイエリア西部にはアメリカ軍関連施設が星座のように点在する。そしてそれらの延長線上、アメリカ領グアムまでの間にある硫黄島も実質的には米軍関連施設なのであり、記録に残る最初の定住者がアメリカ人だったという小笠原諸島はいわば日本におけるアメリカ国境すれすれに位置するアイランズなのだといえよう。僕らのアメリカはトーキョーからは驚くほどに近い。

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