
動けないマナをしばらく見ていた龍戦士は、その視線を空に移した。
群れの中から無数の槍が飛んでくる。
地上に降りた龍戦士は、 間一髪それを避け、手に持っていた斧を大きく振り回し空に放った。
鋭い悲鳴とともに一匹の龍種族が地上に落ちてくる。 間髪いれず、もうひとつ手に持っていた斧で、その龍種族の首を跳ねる。
当たりに血飛沫が飛び散り、瞬く間にその一体を血の海に染めた。
仲間割れ?
何が起きたのかマナには理解できなかったが、どうやら彼等龍種族の標的は自分ではないことだけは
理解できた。
逃げなければ。はやくこの場を逃げなければ。
そう思っても、その場から動こうとしない。恐怖の余り、身動きができなくなっていたのだ。
空中からさらなる無数の槍が飛んでくる。
雨あられと降り注ぐ槍をその大きな体に似合わないスピードで龍戦士は巧妙に避けて行く。
地上に突き刺さった槍を掴み、空中の龍種族目掛け放り投げる。
鋭いスピードを持ってその槍は空中にいる龍種族の一匹を捕らえた。
錐揉みをして地上に落ちる龍種族を目差し、とどめを差すべく猛スピードで落ちた場所に移動するが、
行く手を阻むように次々槍が龍戦士目掛け飛んでくる.。
龍戦士は斧を大きく振り回し、それらの槍を次々振り落として行く。
数の上では空中を舞っている龍種族の方が有利に見えたが、実質はその逆で、地上の龍戦士の方が
圧倒的な強さを誇っていた。
一匹の龍戦士に無数の数の龍種族が手をこまねいていたのだ。
と、その時、先程地上に落ちた龍種族が起き上がり、龍戦士に向けて槍を放つ。
が、傷突いた体から放たれたその槍は目標の龍戦士を大きく反れ、身動きができないマナを目指し
真直ぐに飛んで行く。
「!」
鋭い音を発して、反れた槍は龍戦士の腕に突き刺さった。
信じられないことに自分めがけて飛んで来た槍を、間一髪でその龍戦士が自分の前に立ちふさがり、己を盾にして、それを受け止めたのだ!
とっさのことで振り払えなかったのだろう。その槍は龍戦士の腕に深々と刺さっていた。
目の前で起きたことをマナは信じられない思いで見ていた。
傷付いた龍戦士は、大きな咆哮を上げ、手に持っていた斧を、その槍を放った龍種族めがけ放り
投げる。
瞬く間にその龍種族の首は空中高く跳ね上がる。
傷付いた龍戦士はその大きな翼を広げ、空中高く舞い上がる。
次々と地上に龍種族が落ちてくる。
湖をその血で真っ赤に染める。
これ以上はさすがに不利だと睨んだのか、残る龍種族は我先にと一目散に退散して行く。
湖に静寂が戻る。
血の匂いが当たり一面充満している。
累々と散らばる龍種族の死体を見ながら、一体何が起きたかマナにはわからなかった。
死んだパンサの傍らにうずくまり、マナは震える体を腕で抱きとめ、必死に我にかえろうとして
いた。
マナの目前に先ほどの龍戦士が舞い降りる。
腕に深々と槍が突き刺さったままだ。
その姿をマナは放心した状態で見上げることしか出来なかった。