その凄惨な場面に一人の少女が生き残っていた。
くり広がられる悲惨な光景をそのつぶらな目が見ていた。
目は恐怖に見開き、救いを求めてさまようが、誰も彼女を救えるものはいなかった。
戦いを放棄した一角人種にとって同種の亜人種が襲ってくるとは夢にも思わなかったのだろう。
瞬く間に壊滅に近い状態に追いやられてしまった。
元々一角人種は亜人種の中においても、それほどの戦闘能力を持っているわけではない。戦うより癒し系の魔法を使う種族であるため、戦う術をほとんど持たないのだ。
一角人種の村がその異形なものに襲われる前は、争いのない平和な村だった。温厚で争い事を好まない一角人種は、どの亜人間達もがその道を選んだように、外界との接触を絶ってひっそりと種を継続させていた。
短命で生殖能力に欠陥がある亜人種は、やがて種が継続出来ずに歴史の表舞台から消えて行く運命だと言われている。
この世界は人間界、魔界、亜人間界の三つで構成されており、それぞれの界には結界が張られており、互いの界には行き来出来ないようになっている。だが、その昔、何者かの手によってその結界が破られてから、魔族の非情な侵略が続けられていたのだが、そんな魔族でも決して亜人種の国に侵攻することはなかった。
何故なら亜人種は魔族と同等の力を持っていたが為、戦いが長引けば両種族の滅亡を物語っているからだ。
よって、お互い牽制しあっているだけで、決して剣を交えることはななかった。
しかし、今一角人種の村を襲っているのは魔族ではなく、あきらかに同属の亜人間種だった。人間界と魔界との争いに一歩身を引いて傍観者に徹していた亜人種が魔族側に付くのは考えられないことだった。
ゆらめく陽炎に混じって異形なものが立ちあがる。
目は煌煌と輝き、口は大型の肉食獣を思わせるほど大きく裂け、無数に並ぶ牙は次なる獲物を求めるかのようにさまよっている。
漆黒の暗闇の中に一筋の煙が天に向かって立ち昇る。
あたり一面は紅蓮の炎に包まれ、灼熱の熱波が吹き荒れる。すべてのものをその真っ赤な焔の舌で嘗めつくすかのように荒れ狂っていた。
