太古の昔世界は一つであったが、人の心に魔が育まれ、やがてそれが現象化し
 世界は分裂された。
 魔族、人間界、亜人間界と別れ、それぞれ、拮抗を保って平和が継続
 されていた。
 さる昔、魔族界の中で光り輝く子が生まれ、平和を脅かす不吉な前兆とされ、
 幽閉の谷に捨てられた。
 それから数千年と言う時が巡り、幽閉の谷に幽閉されていた子をあるひとりの
 魔法使いが解き放ってから、それぞれの世界の拮抗が破れ、混乱と、殺戮の時代が
 やって来た。

 何故魔族の中に光り輝く子が生まれたのか、世界の拮抗を破って戦乱の世を
 生んだのか、それは人々の記憶の奥深くうずもれ、今となっては知る由も
 なかった。
 ただ、光り輝く子の伝説を巡って、それぞれの界では疑念と思惑が交差する。
 魔族界ではそれが大魔王と言い伝えられ、人間界ではこの混乱を終焉させる
 救世主とも言い伝えられている。

 魔族の階級制度は厳しく、ごく少数の高級魔族によって管理されている。
 結束は一枚岩ではなく裏切り、殺戮など日常茶飯事。人間界に寝返る者も
 おり、魔族同士で仲間割れを絶えず演じているが為、人間界への進行は
 一向にはかどらない。

 そんな魔族とは別に亜人間はどちらの世界にも交渉関係せず、中立の立場を保っている。
 自分達の聖域に進入しない以上関与しない態度を守り通している。
 比類ない力を持っているがため、その繁殖能力は制限され、人口はそんな数は
 いない。
 やがては種を継続出来ないがため、消え去る運命の種族達なのかもしれない。
 一説では呪いをかけられているという説があるが、これもまた定かではない。

 人間界には大きな大国が確認されているだけで2つある。
 ひとつは軍事国家のアルメキア(仮名)。ここの国王はまだ若くかなりの策略家と聞く。
 もうひとつはキャナル王国(仮名)。かなり長い歴史を持つ国。
 長い戦乱の中、皇室はその力を失い、今は数人の元老院の議員で構成されている。
 国軍は元老院委員の親族で構成された騎士団。辺境の地にあるがため、これといった
 侵略を受けたことのなので、いまだに実戦経験のないエリート軍団。

 国の抽象となった皇室の王女には親衛隊が付いており、そのほとんどは傭兵や
 流れ者で構成されている。あらくれたその容姿や立ち振る舞いに国民は彼らに不信感を
 抱いている。
 その中に魔族の血をひくガッシュがいた。

 一方現実の世界では、朝一人の少年がある家の前で立っていた。
 いつも一緒に学校に行く幼馴染を待っていたのだ。
 今日彼女が寝坊したため、かれこれ30分も玄関の前で待っていた。
 一人で行くなり、玄関のチャイムを押すなりすればいいのに、何もせず、子犬がご主人様を
 待っているように大人しく立っている。

 玄関から遅れて出て来た少女になぜチャイムを鳴らして起こさないとか、先に学校へ
 行けばいいのになど融通が利かないことで怒られ、遅刻しないようにと二人一緒に走り出す。
 少年は運動が苦手なので、今にも死にそうだ。そんな少年を見て少女はもう少しなんとか
 ならないかと思う。
 不良にからまれるのがいやだから一緒に学校に行ってと涙を流す少年を見ているといつも
 イライラさせられ、自分が守ってやらなければいけないとつい思わずにはいられない。
 顔は美少年で頭脳明晰だが運動神経はゼロに等しい。いつも幼馴染のスカートに隠れ、
 あまり人と話をしない。女の子で話をするのは幼馴染の少女だけで他の女の子と話をすると
 アレルギーが発生する。

 そんな情けない少年がやがて戦場の混乱の中に放り出されることや、少年の変わりにガッシュが
 この世界に来ることは当の本人も幼馴染も想像することは出来なかった。
 そう、一人の転校生が来る前までは。