いつしか、ジョウイは眠りに引き込まれ落ちていた。朝陽がくっきりとその端正な相貌を照らし、神々しいばかりの気高さに映し出していた。シードとクルガンは、刹那それに見惚れる。 「眠っちまったか」 「最近、よく眠れない様子でいらしたからな」 「クルガン、おまえのベッド貸せよ」 「貴様には貸さん」 「冗談きっついぜ。運ぶぞ」 そうっとシードが、彼らしからぬ優しい手つきでジョウイの肩と腰を抱き上げた。その額にかかった髪をそっと払ってやり、軽いなあとつぶやく。 「寝不足は大丈夫か」 へ、とジョウイを抱えたシードが振り向いた。その目が丸く瞠かれている。 「どういう風の吹き回しだよ。おまえ……酒が脳まで回ったか?」 「黙れ。今度の作戦にはおまえの働きが不可欠なのだ。体調でも崩されると計算がたたん。徹夜で考案した策だ、そんなことで無為にされてはかなわん」 「まかせとけ。そっちこそもうじいさんなんだから徹夜がこたえるんじゃないのか」 シードのいつもの物言いに、クルガンは苦笑さえもせずに返答した。 「ならば、仮眠させてもらおうか。あとは任せるぞ」 「あ、ずっりー! てめっ、この期に及んで一人だけ寝ようなんざいい度胸だ!」 「……騒ぐな。ジョウイ様が起きてしまう。おまえのベッドを借りるぞ」 「こら、待てクルガン! 畜生、後でおぼえてろ! ああ、ジョウイ様をひとりで置いてくわけにもいかねーし、くそう……」 シードがジョウイを放り出すわけにもいかず、また起こしてしまわないように精一杯小声でぶつぶつ文句を言ってるのを背に、水さしだけ持って戻ってやろう、と思いながらクルガンは自室を後にした。 理性(ロゴス)と情熱(パトス)を同時に強い光で併せ持つ心優しき皇王。 その輝きは、何ものの矛盾さえも、そう自身さえも赦さず、苦悩はきっとやまない。何者も癒すことなどできない。だからこそ強く惹かれる。 右手(めて)に血刀。左手(ゆんで)に手綱。 その、潔白なまでの、孤高の美しさ。 我らの勝利を導く者。 その右手に。 その左手に。 どうか、数多の幸降らんことを。─── |
18thDecember.2000