読書履歴2001年8月


新刊24冊+古本3冊 = 合計27冊

24[8/26-]D.シモンズ/ハイペリオンの没落(上)(ハヤカワ文庫SF)
23[8/31]秋山完/天象儀の星(ソノラマ文庫)
プラネタリウムにまつわる表題作をはじめ, 難しい未来のハートフルな逸話を集めた短編集.
ジルーネおそるべし. 他の登場人物が素朴だったり純真だったりまっすぐだったりするのに一人….
簡易時間もの的な天象儀の星をはじめ, ストーリーはみな柔らかい雰囲気に満ちていて浸れるのだが, ところどころストーリーや台詞のつながりに違和感があるところがあって, その辺がちょっと残念だった.
22[8/30]C.ゴールデン&N.ホルダー/ヴァンパイア・スレイヤー 死霊の王(ハヤカワ文庫FT)
ヴァンパイアスレイヤーシリーズ第2段. 久しぶりに仕事がなく油断していた彼女は, ハロウィーンの夜にまつわる不吉な伝説に巻き込まれる.
前作に比べぐっと話の書き込みがしっかりしたと思ったら, これは小説オリジナルでしかも作者が違った. どちらの影響が大なのかは知らないが, 今後もせめてこれくらいの密度は期待したい. ただいくつか映像にすると面白そうと思う場面でもあまり文章としては鮮やかな描写ではないかな, みたいな印象の残るところがあるので, やはり小説である以上小説の利点を生かした書き込みをしてもらえるといいなという感じがした.
21[8/29]R.T.クジック/ヴァンパイア・スレイヤー 聖少女バフィー(ハヤカワ文庫FT)
FOX TVで放映中のアメリカ版美少女ドラマ(?), バフィー恋する十字架のノベライズ第一弾. 各世代に一人現れるヴァンパイアスレイヤーの女子高生の活躍と悩みを描く.
ただいかにもノベライズらしく筋だけを追うとかなり粗っぽい話になってしまっており, 小説としてはかなり物足りない. 小説ならではの展開をつけるかどうかはともかく, もう少し情景描写や心情的な部分まで踏み込んでしっかり書き込んでほしかった.
20[8/29]笹本祐一/ARIEl 17(ソノラマ文庫)
オルクスに乗り付けた岸田博士はハウザーとの会談に臨みうまく丸め込み, 艦隊開放日への参加をとりつける. 一方その艦隊開放日実施の裏でうごめく陰謀を阻止するため, オルクスはハウザーの姉シンシアを招聘する.
オルクス側の目標の関係で相変わらず情報戦とだましあいというか狸のばかしあいみたいなのが続く展開で, なかなか初期からの読者はすかっとしないかもしれない. アクションシーンがあるかどうかはともかく, もうちょっと状況的に追い込まれる場面が続いたりさせてみると面白いと思うのだが. 一方で今回はスペースシャトルが10秒差で2台一辺に上がってみたりというそういう見せ場を作ってみたりしている. ってそれはそれで見てみたいけどこの話に妙にリアルなロケットとか出てくるとなんか違和感あったりして. バイクや飛行機だとそんな違和感ないのに.
19[8/29]笹本祐一/ARIEL 16(ソノラマ文庫)
第三艦隊が火星軌道上で「艦隊開放日」を実施するというニュースに振り回されるオルクスの面々. 一方情報収集によりこの事実をつかんだ岸田博士はこの機会を捉えてトップ会談をもくろむ.
久々にSCEBAI側から動いた感じ. でも絢ちゃん存在感ないぞぉ. 展開を丁寧に書きすぎるせいで逆に話の進みが遅くなり, なんかあまり軽いテンポ感が出てこないのがちょっと惜しい気がするのだが.
18[8/28]R.アスプリン/マジカルランド 大魔術師,故郷に帰る!(ハヤカワ文庫FT)
ポッシルトゥムの女王に財政の再建の依頼とともに, 結婚か王位就任かを迫られたスキーヴ, どうも今回は女難の気配.
今回もお気楽に読める. ただ話がどちらかというと女難側に偏っていてあまりいつもほどピンチ! という印象がないのも事実. なんか御気楽な話に近くなってしまったか. ところでこのシリーズもついに翻訳が原作に追いついてしまった. とすると次が出るのは原作が出てから. しかも最近原作はなかなか出ないらしい. しばらく待ちぼうけとなりそう.
17[8/26]若木未生/オーラバスターインテグラル 月光人魚(デュアル文庫)
大学生ながら一応作家である主人公の周りで人が突然消える,水になるなどの怪事件が起こる. 主人公本人やその周りの人々の青春の悩み, 苦悩のねじれなどを鮮やかに描き出していく伝奇小説.
コバルトのオーラバは読んでいないのでどの程度関連性があるのかは知らないが, 派手なアクションなどはなく, どちらかというと「元悩める青少年」を対象に書かれたような, ちょっと思い出すとほろ苦系の仕上がりとなっている. 高校やんきー&大学闘争系的な古い若さの暴走とは違い, 上遠野浩平的なちょっと覚めた視点から見て共感が得られてしまうような現代の歪みともちょっと違う, でも大学生活の悩みの中で歪んでいく自分を見ながら続く物語はそれなりに来るものも. 特に事件の謎解決に重きを置いた構成ではないのでミステリ的どきどき感はほとんどないが, なんとなくほろ苦い余韻の残る作品である.
16[8/26]大原まり子/イル&クラムジー物語(デュアル文庫)
銀河郵便屋コンビ, イル&クラムジーは宇宙人の搬送を依頼され, その宇宙人と落ち合うため, ある惑星へ向かう. しかしそこはあるゲーム会社が買い上げた星で, 惑星全土を用いて階級ゲームが繰り広げられていたのだった.
非常に簡単に言うなら, イルがゲームに巻き込まれて右往左往する話. それだけ. 宇宙人の特徴のアイディアはまあいいとして, 雰囲気も悪くはないし, 落ちもまあそんなもんかって感じではあるが, あとはなんかクラムジーの尻を追っかけてるだけって感じもややあり, しかもクラムジーって普段は男型してるからうーん.
15[8/25]浜辺祐一/救命センターからの手紙 ドクター・ファイルから(集英社文庫)
救命救急センターに勤める医師が, 急な命に関わる事態にあたっての人間模様, 家族の内実などを朴訥と描き出すエッセイ集.
ネタになっているのは四肢不随, 植物人間, 自殺と事故など, 代表的なものだが, 処置に当たる本人の記述ということで生々しい. その一方で荒い言葉使いといろいろな悩みが若い研修医を登場させての意見の対比を用いたり, 手紙形式として最初と最後に丁寧な挨拶などが入ったりして, 全体としてはあまり極度な暗さを感じさせないいい読後感を残す作品に仕上がっている. ぎりぎりの状況で関わる人の本質が見えてくるというのは, やはりこういう現場からの話ではリアルで迫力があり, でも押し付けがましくなく, 考えるよい機会になると思う.
14[8/25]星野亮/ザ・サード いつか時が流れても(富士見ファンタジア)
ザ・サードと呼ばれる3つめの目を持つ人々が科学技術を支配する砂漠のひろがる世界で, 何でも屋として暮らしを立てている居合いの達人でかわいい女の子のエピソードを連ねたシリーズ短編集.
やはりこの作品は主人公あってこそというのが改めてよくわかる. 本人が出てこなくても里親まで彼女そっくり. 他のキャラに魅力がないとはいわないしアイディアがしっかりしていることも認めはするが, 何といっても主人公の彼女の魅力があってこその作品だと思う. それだけに彼女の活躍が「パターン化」してくると, キャラが立っているのだからもはやいいという考えと, ちょっともったいない気もするという考えと, 両方が浮かぶ. そんな願い, バランス良くうまく両方かなえてほしいなどというのは欲張りか.
13[8/20]アーサー.C.クラーク/3001年終局への旅(ハヤカワ文庫SF)
海王星軌道で拾われた物体はなんと1000年前の彼だった. 1000年後の世界をリアルに描き出すと同時に, モノリスをおいた種族の動向も….
どちらかというともうストーリー自体はたいしてない. とにかく3001年の世界の鮮やかで緻密な描写と世界の雰囲気を楽しむのが吉, な作品であった.
12[8/19]R.K.レスラー&T.シャットマン/FBI心理分析官2 世界の異常殺人に迫る戦慄のプロファイル(ハヤカワ文庫NF)
宮崎勤からオウム, 連続殺人犯, セックス殺人犯, 果たして多重人格? 彼ら犯人の心理を描き出すプロファイリングの分析結果を本人がまとめた作品.
読むとわかるが, プロファイリングの結果は鮮やかな一方で, それ自体が犯人の逮捕にはなかなかつながることはない. やはり警察の地道な証拠集めなどの努力が必要なんだということは忘れてはいけないね. その一方で, 犯行の心理に基づいた捜査, 安易に心神喪失,PTSDや多重人格で責任を回避しようとする状況を暴くため, などのことに道筋を与えるには, そして自信をもって捜査,審理を進めるにはまたとない物であると思う. また同時に, 確実とは言えなくてもある程度パターンから犯罪を未然に防ぐための指標にもなるであろう.
そういう視点で見るとそれなりに面白い.
11[8/18]清水文化/気象精霊記 4.海底火山とラッコ温泉(富士見ファンタジア文庫)
千島で観測された異常なエネルギーの蓄積から火山の爆発をコントロールするよう出動した気象精霊たちだったが, やはり裏では気候変動誘発局の思惑に, 組織内の対立も目立ってきて…?
どうもここのところ一人称の描写が上手く機能しなくなってきている感じがする. 主人公の彼女の場合真面目でいい娘(?)なんだけど, 頭の切れるタイプでもイメージ豊かなタイプでもないのでちょっと状況把握能力や自発的思考行動能力に限界が出てきている感じがするんだよね. これが映像や3人称だったりすると状況もみえるから, わからないなりにいろいろやっているのが見えて楽しめるのだけど, 小説だと他に情報がないからそこからイメージが広がらず, 後で彼女が知った結果,情報としてしか現れてこない. そんなところがもったいないかなと.
後, 例によってスペードとか星とかのマークは不要だと思う. 語尾の微妙なニュアンスを断ち切るため, かえって表現を狭めているようなイメージがある.
10[8/17]水野良/魔法戦士リウイ 8(富士見ファンタジア文庫)
3人娘の意識に気づいたマイリーの最高司祭は自分自身を見つめさせる意味も込めて, 5人にかつて自分の果たせなかった試練を課す.
しかし抜けられない理由があーんなことやこーんなことってやつがいるのはもちろん構わないけど, そんなことに目が行った途中他の価値観がどっかへ行ってしまったような話になってしまった感じがするのはおれだけか? 重要なことではあるけどね.
9[8/16]水野良/魔法戦士リウイ 7(富士見ファンタジア文庫)
アイラのリウイに対するあからさまな行動が3人の娘に大きな波紋を及ぼす異世界冒険ファンタジー第7段.
意識したとたんがらっと変わりますな3人とも. いや, 話は短編の組み合わせだが意識しなくてもずいぶん変わったなぁ, 最初の頃とは.
8[8/14]西谷史/伊奘冉(EXノベルズ)
若い頃は巫女として能力を振るった白壁家の女性が子宮癌摘出の手術中に突然目覚め, 失血で重態に陥る. その後白壁家の周りでは変事が続くが, 異常な発光や雷などの現象から, 娘と仕事の同僚が電磁気異常が原因でないかと疑い調査をはじめる.
イザナミの命を題材に超常現象と人間の愛憎を描いていくが, ちょっとキャラの動きがギクシャクして見えるところがちらほらある. 歴史や神話の料理はある意味ユニークだが, リアルとフィクションの間あたりの落とし所でちょっと頭を抱えたくなるようなこともある. その辺がちょっと惜しい. 西谷さんの作品はだいたいキャラの心理描写の粗さと話の展開時のつなぎが難点になることが大い気がするが, 今回はページ数も十分にあってティーンズ向けの制約もないのだからもうちょっと丁寧に書き込めればよかったのになぁと思った.
7[8/12]妹尾ゆふ子/チェンジリング 碧の聖所(ハルキ文庫)
「世継ぎの君」としてあちらの世界へいった美前だったが, 待っていたのは歓迎ではなく裏の真実と戦いであった. 巻き込まれた彼女が目指すところは. 完結編.
なかなかよかった. 結局のところしたことは妖精界にいって帰ってきただけだが, ケルトの神話とフィクションをうまく組み合わせて魅力のある世界を構築し, 話をあちこちと振り回しながら事態を明らかにしていく過程がいい感じ. 主人公の女性自身が英雄だったり大活躍したりする訳でなく悩み方も現代風で好感が持てる.
6[8/8]妹尾ゆふ子/チェンジリング 赤の誓約(ハルキ文庫)
小さい頃から妖精を見ることのできたOL美前は無言電話からトラブルに巻き込まれる. そんな時助けに現れた不思議な金髪の少年との巡り合いにより事態の真実が明らかになり, 美前は判断を迫られる. 現代ファンタジー前編.
雰囲気的にはやや魔性の子(小野不由美)がダブるが, こちらはケルト系の実在神話と重ねている. 特殊能力がありそれで現代社会になんとなく順応できずに生きていたらそれは実は彼女の出自が異世界の…, と書くとなんか現代の悩める女の子の理想の典型パターンその3くらいのイメージもあるが, それだけに事態に巻き込まれてしまった彼女がこれからどう一瞬一瞬を判断して生きていくか, 後半が興味深いところ.
5[7/8]R.ジョーダン/時の車輪 第4部 竜魔大戦8.聖都炎上!(ハヤカワ文庫FT)
大河ファンタジー第4段. 聖剣カランドアを手に入れたアル=ソアは黒アジャの手に落ちかけていたティアを掌握するとともに聖都ルイディーンへ向かい, アイール人をまとめにかかる. このアル=ソアたちをおびき出そうとする闇の信徒や光の子は故郷トゥーリバースを混乱に陥れ, ペリンがその収拾に向かう. 更に邪悪なものがタンチコでうごめいているという話を受けてナイニーヴとエレインはタンチコへ向かい, 闇セダーイや黒アジャに立ち向かう.
ついにというかアル=ソアが自分で動くようになってきた. とはいえ周りの女どもはなかなか手強く(?), そちらもばたばた. 闇セダーイがだいぶ動き始めてだんだん事態も本格的になってくるため話を読むのがわくわくする. まあいつも通りあまりクライマックスは盛り上がりに継ぐ盛り上がり, とはいかないが.
4[8/7]R.ジョーダン/時の車輪 第4部 竜魔大戦7.白い塔の叛乱(ハヤカワ文庫FT)
3[8/6]R.ジョーダン/時の車輪 第4部 竜魔大戦6.闇が巣くう街(ハヤカワ文庫FT)
2[8/5]R.ジョーダン/時の車輪 第4部 竜魔大戦5.狼の帰郷(ハヤカワ文庫FT)
1[8/2]R.ジョーダン/時の車輪 第4部 竜魔大戦4.聖都ルイディーン(ハヤカワ文庫FT)