読書履歴2001年12月


新刊17冊+古本0冊 = 合計17冊

17[12/30]三雲岳斗/コールド・ゲヘナ 4(電撃文庫)
王子暗殺に侵入した犯人は王子を前に「バーナード・シーカー」とだけ名乗り, 犯行を犯さずに引き上げた. バーンはこれを理由に逮捕され, 陸の要塞のような監獄へ連れて行かれるのだが, 当然アイスとフロスティはその救出にもぐりこむ. その中で明らかになっていく真犯人の意図は.
何時にも増してますます生き方が前向き一直線? ジュブナイルとしてはいいのかな. 話の仕掛け, 展開自体はいつも通り安定しているし.
16[12/29]図子慧/蘭月闇の契り(角川ホラー文庫)
幽霊屋敷にもぐりこんだ小学生4人組だったが, 彼らはその後.
小学生時代, 高校生時代, 大人になっての葛藤がそれなりに書き分けられていてまずまず面白かった.
15[12/25]深沢美潮/デュアン・サーク 8.氷雪のオパール 下(電撃文庫)
魔法戦士になりたいと願い, オパールと会ったデュアンだったが今回の戦いは. 一方アサッシンギルドから抜けるためにアサッシン殺しの殺害を迫られたランドの戦いは.
なんかあまり盛り上がらない. あまり話の展開に深みがないから頭を使わず読む分には楽だが.
14[12/23]半藤一利/ノモンハンの夏(文春文庫)
満州ソ連国境のノモンハンでの小競り合いがどういう過程で惨敗という結末へとつながっていくのか, 関東軍の暴走の様子や情報戦で負けていく様子, ソ連側の攻勢の意図を克明に描き出す.
情報の取捨の重要性が浮き彫りにとか, 関東軍の暴走のしだいがわかりやすくとかはもちろん, 結局自分のしたい方針のためなら詭弁屁理屈で武装して後は権力で押し通すというのは, ある意味今の政治力学と変わっていない. それが裏目に出ると学習していないということになるのだが, 押し通して話が済んでしまうからやはり政治は難しいのか簡単なのか.
13[12/18]真崎かや/声を聞かせて(EX ノベルズ)
主に日常からちょっと逸脱した系のホラー短篇集だが, いくつかは必ずしもホラーというよりはセンチメンタル系のストーリーとなっている. もっとも死人関係のセンチは一歩間違えば心理ホラーだから同じようなものか? 構成は基本的にはシンプルにまとまっていて悪くないかな. おそらくかなりマイナーだと思うが, 読んで悪くはないと思う.
12[12/17]てつまよしとう/GUNNER(ファミ通文庫)
東京都警航空機動隊のヘリパイロットと観測手のコンビ. パイロットの素晴らしい腕と観測手の強引ともいえる射撃の腕で今まで凶悪窃盗事件を解決してきた. そんな彼らが出くわしたある窃盗事件から裏にひかえる大規模な武器密輸組織の存在が浮かび上がった. しかし解決にひた走ろうとする彼らに外交上の問題などからいろいろな圧力がかかる. そんな逆境の中でもめげない彼らは….
やや話の展開が粗っぽい感じがあるがページ数の制限のせいだろうか. 武器オタクかという雰囲気もなきにしもあらずだが, 知らなくても分かる程度の説明はちゃんとついているのでまあ大丈夫. ただ最後のあの戦闘で突っ走って戦闘に飛び出すのが果たしていいのかどうかはちょっとフクザツな心境. 話が完全にカタがついた訳ではないし. フィクションとしてはありだと思うが, 悪い方の結末を考えるとシャレにならないからね.
11[12/17]海羽超史郎/天剣王器 Duallord Reversion(電撃文庫)
祖父に連れられてやってきた田舎で少年が出会った少女. そしていつの間にかいついた彼らの「師匠」2人. そんな生活の中, 15歳になった少年少女2人は国家最高機関天剣王器の選抜試験に町へ出るが, そこから彼らの運命が大きく変わる.
電撃ゲーム小説大賞選考委員奨励賞. 一種のボーイミーツガールだが世界の作り方, 魔導設定などのテイストは同年受賞作のウィザーズブレインに近いかも. ただ書きこみの十分さと世界の深さで負けたかな. 逆にそれがあるいみジュブナイルとしては読みやすさになっているといえなくもない気もするが, やはり少し物足りない. それに最後のクライマックスがあんなんでいいんかな.
10[12/16]鈴羽らふみ/アルシア・ハード 翼を継ぐものたち(ファミ通文庫)
少し未来の地球. 科学の発展とともに異星人と接触し魔法にも少し目覚めた世界で, 女子高生友佳里は見習い飛翔魔法使いとして修行中. まもなく魔法世界ルイールに正式に魔法使いとなるために旅立とうとする彼女だったが, 銀河帝国の戦艦が現れて事態が動く.
さわやかな印象の残る青春ファンタジーといった感じだが, 前向きの若々しい姿勢を貫いたのはいいとして, やや話の書きこみが不足した印象が残った. つまりちょっと物足りない. 話が堅くなる必要はないけど, もうちょっとしっかり舞台を書きこめばより魅力的な世界が広がったんじゃないかなという印象が残った. また話の盛り上げ方にしてもやや平凡. なんでもかんでも持ち上げればいいってもんではないけれど, もう一歩読者を引き付ける工夫を考えて欲しかった気もする.
9[12/15]上遠野浩平/紫骸城事件(講談社ノベルズ)
300年前に悪意を極める魔女が呪詛を集めるために作った城. 魔術師ギルドの魔道大会の会場となっていたこの城に魔道師が集まったその時, 不可解な連続殺人がはじまる.
前回より少し読みやすいがおどろおどろしくなってネタは筋がややしっかりした感じか. まあまあ.
8[12/12]樹川さとみ/楽園の魔女たち〜間違いだらけの一週間〜(コバルト文庫)
高級住宅街の一角に店を構えた4人だったが, さっぱり客が来ない. 倹約生活を送っていたところへ初めて訪れた客は家出娘だった.
今回もテンポ良く進む展開と会話の掛け合いが面白いが, ネタ的にはかなり小ぢんまりとしていていつもほどクライマックスの盛り上がりがない. ほとんどない. そんな訳でやや肩透かしを食らった印象が残った.
7[12/11]乙一/きみにしか聞こえない-CALLING YOU-(角川スニーカー文庫)
切ない系の短編中編読み切り3編を収録.
切ないというか, 何気なくココロの痛みに触れて痛いんだよね. オチの後のまとめ方も余韻の残し方がうまい. あまりこういう書き方が出来るライトノヴェルズ書きっていないと思う. というか本来ティーンズに読んでもらいたい作品だとは思うけど, ライトノヴェルズ読みに受けやすい作品ではないと思う辺りがちょっとむずかしいところ. ボツボツでいいからぜひ良作を書きつづけていって欲しい.
6[12/09]三雲岳斗/ランブルフィッシュ 2.中間試験暴走編(角川スニーカー文庫)
格闘トーナメントのチームでも瞳子と組む事になったヤンキー男は中間試験2回戦で同じ編入生でエリート自衛官だった男と当たる. その死闘の裏でさまざまな人間の思惑がうごめく.
本来は前作の続きとしてクライマックスになりそうな部分がこの巻に来たため, 美味しいところが多くてこの巻としては楽しめた. キャラがそこそこ多い割に結構シンプルに絡んでいる印象が(いまのところ)あるので人数の割には読みやすいが, 若干物足りない気もなくはない. 女性キャラ陣は魅力的ではあるが相変わらずというか今回もいかにも三雲さん的なキャラで, あまりバリエーションはないかも, という気はしないでもないが.
5[12/08]三雲岳斗/ランブルフィッシュ 1.新学期乱入編(角川スニーカー文庫)
公営ギャンブルになっている二足歩行型大型ロボット「レイドフレイム」による格闘戦のための人材養成学校に通う瞳子はロボットの設計者. 彼女は全寮制であるこの専門学校に夏休み明けから転入してきたヤンキーの男と同室になってしまった. その日から彼女の生活は波乱に満ちたものになる.
前半のつかみがとてもベタ. 後半は半分オーソドックスだがやっぱりまだベタ. あまり斬新さはないものの設定はまあ普通で展開はきっちりしていてキャラはそれなりに魅力的で中身にそんな問題がある訳ではなく, それなりに楽しめるのだが今回はお約束がちょっと鼻につきすぎた印象. またシリーズものとしてエピソードが完結せずあからさまに話を次回に引っ張ってしまったため, その点いつもほど1冊の中での話の切れがなかった気はする.
4[12/06]吉村夜/マンイーター(富士見ミステリー文庫)
親友を自殺に追い込まれた武士は, 復讐を望みつつも自分では手を下せず, ネットで引っかかった復讐請負に依頼する. しかしこれが恐怖の始まりだった.
これはなかなか怖かった. 後半畳み掛けてくる恐怖の中にカノジョの力が入ってくる辺りがジュブナイル的かとは思うが, ジャンルとしてはミステリーというよりはハルキホラーあたりがあいそうな感じのホラーもの. 傑作ではないにしてもこれをミステリー文庫の中で出すというのは読者を逃しそうでもったいない.
3[12/05]秋田禎信/閉鎖のシステム(富士見ミステリー文庫)
終業後に起こった停電. 残業の人々と2人の高校生が巨大ショッピングモールの地下に閉じ込められた. 点くはずの非常灯も点かず, 守衛も見当たらない. そんな真っ暗な中で殺人が?
これも特にまともに(?)推理をしている訳ではなく, 推理モノミステリーとはだいぶ違う感じ. 話がうまければどちらかというとパニック系になるのだろうが, あいにくと本題とは全然関係ない会話を延々と続けるだけで話は半分どこかへいってしまった感じ. どこへ行ったんだ(笑). このある意味「意味不明な会話」はこの作者の持ち味の一部ではあるので, こういうのが好きな人だけにはいいかもしれないが, 全体的にはイマイチだった.
2[12/02]庄司卓/アイシア(電撃ゲーム)
孤児として拾われた新見翔は平凡な高校生時代を送るある日突然起きた振動と光に巻込まれ, 異世界アイシアに飛ばされたのだった. 彼はそこで混乱に巻込まれ, 自分の本来果たすべき役割というものを知る事になる.
ゲームのノベライズだが, なにより分量的にかなり厳しい. 主だったキャラクターを一応登場させてストーリーも一通り追ったためゲームを知らなくても舞台などはよく分かったが, その変わりにエピソード当たり, 登場人物当たりの密度がどうしても薄くなり, かなり駆け足になってしまった印象が強い. ストーリー的にはかなりお約束の詰め込みの印象が強く, キャラも展開もややステレオタイプではあるが, ツボは適宜押さえている感じはした.
1[12/02]霜越かほる/ヴァージン・ブラッディ 妖しの女教師(スーパーダッシュ)
高校入学から五日目, 浩二が前日に声をかけて弁当を作ってもらう約束をした女の子がいきなり死亡する. その2週後, 彼は写真部の先輩で教育実習の担当でもあった女教師と彼女の実家を訪ねたあたりから事件に巻込まれる.
まず帯で思わずひく. そしてイラストでひく. 霜越ファンでないと買えんぞこれ. 話の前半はすんなり入るのだが, どうも後半どろどろしてくる辺りから過剰サービスなのか話的にしっくり来ない印象がした. もうちょっと自然に書いた方が面白かったかも.