読書履歴2001年2月


新刊23冊+古本1冊 = 合計24冊

23[2/27]宮部みゆき/蒲生邸事件(文春文庫)
タイムトリップの使われ方などが都合いい所だけ使っているみたいでなんとなく引っかかるが, この話の場合タイムトリップそのものは問題ではなくて歴史の流れの中の人間, が主題だろうから, そういう点ではペース数もあり内容の密度も十分な力作でありあるのに, でも不必要に肩の力は入りすぎていないような話の流れの組み方文体はさすがと思わされた.
22[2/23]陳舜臣,田中芳樹/談論 中国名将の条件(徳間文庫)
中国名将についての談論ではあるけど, これ条件についての話じゃないような気が. それはともかく, だいぶ忘れている身としては, せめて中国の年表だけでも載せてくれると助かるんだけどなぁ.
21[2/22]渋谷昌三/駆け引きと裏読みの技術(PHP文庫)
こうやってまとめて読むと, 分かってはいるつもりでも生かせていない事が多数, ということが良く分かる.
20[2/20]白石かおる/格闘少女スズ 上を向こうよ(角川スニーカー)
はじめに設定ありき, に読めるんだけど. だからなんか「スラム」とか「内気」とかがあまり実感,重みを伴わない感じが.
19[2/19]咲田哲宏/竜が飛ばない日曜日(角川スニーカー)
設定の説明や回顧部分のはさみ方の問題だと思うが, 流れ的に話の筋がしばらくつかみにくくて読みにくいところはある. ただストーリーからは少しクサイくらい「想い」が伝わってくるし, 描写がしっかりしていてすんなりキャラに思いを重ねやすく, 読書中の牽引力も読後に残る印象もなかなかよいのではないかと感じた.
18[2/18]日下部匡俊/四操兵の記 1.聖衣の剣王(ソノラマ文庫)
あとがきの「予備知識なしでお楽しみいただける」というほどお手軽ではないと思うな. まあだいたいの筋は分かると思うけど.
16,17[2/18]M.クライトン/エアフレーム―機体―(上下)(ハヤカワ文庫NV)
飛行中の事故を書いたようないわゆる航空小説ではなくて, 事件後の社内競争やマスコミとのやり取りを書いたものだが, 興味深く読めた. 事故の真相解明は当然話の中で重要な位置を占めているが, ただしこれは読んでいればさっさと見当がついてしまい, 別に謎解きそのものはそれほどメインではないのだろう. 話がかなりリアルである分, 結末も現実的になっているからある意味拍子抜けしなくもないが, あれで更にやり過ぎると逆にリアルさが浮いてしまいそうだからまあいいのだろう.
15[2/17]梶尾真治/おもいでエマノン(デュアル文庫)
…なんか想像を絶しているんですが. 梶尾さんなんだからやろうと思えばもっとリリックな作風に出来たと思うのだけど, 30億年の重みを考えると却ってあんなもんなのかもしれない. ところで要らんこと(?)を考えるならば, もし彼女の存在になにか意味があるなら, 彼女が人間をやっている限りは人類の未来は安泰と考えていいことになるのかな. そういう点ではポジティブな作品という事になるのかもしれないなと.
14[2/16]青木和/イミューン ぼくたちの敵(デュアル文庫)
話がSF的広がりを持つまでだいぶかかるが, 各キャラの若いなりの問題へのぶつかり方が痛くてあまり不満を溜めさせない. もう枯れてきているトシヨリには話の結末などに対する読後感の余韻がじんと残る感じでいいのではないか. もちろん若い人にもこの痛さには共感できるものがきっとあるのではないかと.
13[2/14]杉本蓮/KI.DO.U(デュアル文庫)
いちいち浮いたり沈んだり, 家族に関していろいろ考えるにはいいかも. ただオヤジの筋書き通りで終わってしまう点だけは気に食わないなぁ(個人的に). 状況が状況だけに確かにとれる行動はかなり限定されるであろうけど, オヤジの目的を考慮すると逆に彼の期待を裏切ってもうちょっとニンゲンの多様性を示して欲しかったと思うのは単に読者側の願望なだけかなぁ? それともそんなことすると却って話が発散して筋が見えなくなるかな?
12[2/11]三雲岳斗/海底密室(デュアル文庫)
最後のヤツがもっとびしっと決まって,それで推理も鮮やかだったらよかったのに. ただまあ理系ミステリーなネタとは別に, 孤独って…という話が(ちょっと極端そうな意見のような気もするけど)含まれていて, こちらの方が身にしみたかも.
11[2/9]瀧川武司/どかどかどかん(富士見ファンタジア)
話はともかくなんか擬音語が気が抜けるんですけど. ところでこの人, 数年前にスニーカーの学園小説大賞で奨励賞とった人? あっちでは出ないの?
10[2/9]伊吹秀明/零式スターパニック(ファミ通)
アイドルなのにあれだけ女優を強調したんだから…と思ったが何もないんだ. 肩透かし. しかしイラストが徹底して女の子という所が潔いね. おかげで最大の敵(?)なのにギエンなんてイラストにかすりもしていない(苦笑).
9[2/8]吉村夜/レスト&ハーウィン 星に願いを(富士見ファンタジア)
今回もジュブナイル的な構成で読みやすいと思った. ネタ的には一発芸だし解決法としてはすぐに見当のつくもののひとつでは有るが悪くはないと思う.
8[2/7]中岡潤一郎/ディープスターズ・クロニクル 神の雷に撃たれし男(ファミ通)
まだ話は前振りな訳ね. タイトルが全然生きていない. ところで君主の徳で正攻法突破っていうのはお手軽感動シーンにはなるのだが, こういう政治能力も問われる設定の場合, 人気とは別にそんな簡単に軍まで動かしちゃっていいんだろうか? 銃撃対象が「いい人なのを知っているから」発砲できませんなんてのがもしまかり通ったら, 軍が大事な時にきちんと機能するのか多いに不安である.
7[2/7]妹尾ふゆ子/NAGA 蛇神の巫(ハルキ文庫)
ちょっとしかけを「語り」過ぎかなぁ.
6[2/6]朝松健/凶獣原野(ハルキ文庫)
少々田中芳樹の夢幻都市を思い出したが, オカルトとしての筋立てはやはりこちらの方が上. エンターテインメント的にもしっかりしており, ホラーとはいえ結構楽しめる.
5[2/4]岡本賢一/ワイルド・レイン 3.覚醒(ハルキ文庫)
1巻はどうも話の展開,つながりがギクシャクしている感があって読みづらかったが, 2巻からはよくなった感じ. 風呂敷の広げ方とそれに伴う世界の展開はいいと思うが, それぞれの場面展開に伴うレインの心理の移り変わりに関してだけは最後までもう少し書き込んで欲しい印象が残った.
4[2/4]岡本賢一/ワイルド・レイン 2.増殖(ハルキ文庫)
3[2/4]岡本賢一/ワイルド・レイン 1.触発(ハルキ文庫)
2[2/3]小川一水/回転翼の天使 ジュエルボックス・ナビゲイター(ハルキ文庫)
航空管制やフライトプラン関係など, どこまでが現実に忠実でどこからが無視した大車輪で, 実際にはどの程度までこういう「違反」に目をつぶってもらえるものなのかよく分からない辺りが少々もどかしいが, やっていることが十分かっこよければそれはそれでいいのだろう. 話の展開自体はオーソドックスで非常にわかりやすい. 伏線も何も, 前置きがあれば, ああこれがきっかけでトラブルが起きるなと思っているとちゃんと期待に違わず起きる. でもトラブル自体がセンセーショナルだったり意表を突くものだったりする必要はこの話の場合ほとんどないのだから, これもこれでいいのだろう.
1[2/2]高瀬彼方/カラミティナイト(ハルキ文庫)
割とオーソドックスなサイキック系ファンタジーだが, それでもテンポがいい分か結構ぐいぐいと引っ張っていかれた. なお小ネタにかなり時節ねたが含まれているので賞味期限はあまり長くないかもしれない.