読書履歴2001年7月
新刊23冊+古本7冊 = 合計30冊
- 21-23[7/30]R.ジョーダン/時の車輪 第4部 竜魔大戦1-3(ハヤカワ文庫FT)
- 20[7/27]牧野修/アロマパラノイド 偏執の芳香(角川ホラー文庫)
- オカルトの取材で渡された本は実はパリでの連日殺人の犯人だった日本人によるものだった.
その本を受け取った直後からまわりで異常な事態が続出し始める.
過剰かどうかはともかくとして演出の大きさがどこまでが現実かどこまでがオカルトか分からない,
ホラーならではのあやうさを醸し出している.
臭覚によって感覚をコントロールというのにもいくつか前例はあるが,
このあやうさではかなりいい線を行っていると思う.
- 19[7/22]米山公啓/幻視(角川ホラー文庫)
- 各地で突然大量失血死をする人が連続する. 死者の間には共通点や接点が見られずウィルスなどの原因も見つからず解明は立ち往生するがやがて….
- ネタそのものの種明かしというより, その結果からもう一歩踏み込んでどうなっていくかという描写が欲しい感じでやや欲求不満. また話のつながりがやや粗い感じがするのが残念.
- 18[7/22]松岡圭祐/ミドリの猿(小学館文庫)
- 臨床心理士嵯峨はかつての上司で恩師倉石を犯罪の黒幕として調査を始める.
一方で狂気の集団恒星天球教を追うカウンセラー岬は行く先々での行動が裏目裏目に出て追い込まれていく. 倉石の患者に関わって3人が集う中で, 裏の事実が徐々に明らかになっていくが….
話自体は次作とセットで一つのためまったく完結していないが, 確かに物議をかもしそう.
特定の個人個人を誘導するのは可能だろうし多くの大衆の世論を誘導するのもそれほど難しくないだろう.
しかし多くの人々をまったくぶれなく完全に誘導するのはどうなんだろうね.
人間の可能性とかそういう問題ではないんだろうかな.
ただこれって映画版催眠の続編なんだそうで.
完全に小説でフォローする私としては読むなといわれているようで困りもの.
- 17[7/20]水野良/スターシップ・オペレーターズ 1(電撃文庫)
- 2300年,地球から1500光年離れた星域で「王国」に占領された惑星国家の防衛大学校生たちが,
最新宇宙戦闘艦を購入, その資金に戦闘をライブ中継するという行動に出た.
水野さんらしく世界設定などは慎重に練られていると思うが,
せっかくの「新鋭艦」自体がどうもオーソドックスなのがもったいない感じ.
細かい引っ掛かりも(重力加速度は地球上でも3桁目から違うとか)いくつか気にかかるのがあるし,
美少女が頑張ってる物語でもいいけど(主人公はちょっとヤンとフレデリカを足して2みたいな雰囲気あるし全体的にもステレオタイプからあまり外れていな印象はあるが),
願わくばもうちょっとあっと驚くようなアイディアが欲しいところかな.
ナデシコとはちょっと違うようなのでそっち系のカブリはあまり心配しなくてよさそう.
- 16[7/20]グループSNE/傭兵伝説クリスタニア 過去からの来訪者(電撃文庫)
- 前巻の続き(こらこら)
リュースってンな強かったんだっけ(もう忘れてる).
- 15[7/20]グループSNE/傭兵伝説クリスタニア 暗雲の予兆(電撃文庫)
- 暗黒の民との和解によりベルティアに設置された獣の牙だったが,
その密林地帯で不可解な事件が起きる. 真相解明に傭兵を派遣するリュースたちだが….
リプレイを読んでいないせいか情報がぽろぽろ落ちている感じの内容でちょっと読みづらい.
話はまだ導入だからそれほど大きく展開しないが, それぞれのエピソードの展開はまずまず.
- 14[7/19]深沢美潮/新フォーチュン・クエスト 7.待っていたクエスト エピソード2(電撃文庫)
- レベル18の冒険者でも解けなかったというクエストについに手を出した6人と1匹.
マップのスタート地点へ向かったのだが?
話の中の小さなエピソードややり取りなんかは楽しいアイディアや気遣いがちりばめられていて面白いのだけど, 肝心の本筋の方がどうもぱっとしなくなってきている感じ.
今回のもネタとしては無しとはいわないけど, それに「ガイド」が付くのはどんなもんだろう?
これが後に重要な役割をというのならまだ分からないけど,
少なくとも現時点ではこの作品らしい「わくわく」感を削いでしまっている感がある.
- 13[7/13]前田珠子/破妖の剣 外伝6 呼ぶ声が聞こえる(コバルト文庫)
- 護り手を失った捕縛師サティンとその新たな護り手となった鎖縛の物語,
主人公ラスの母親の話,未来の話….
相変わらずの口回り(?)で頑張るサティンがいい感じ. これぞ外伝.
一方未来が絡む話を外伝でされるのは個人的にはあまり好きではない.
話そのものもかなりあっさり目だし.
- 12[7/12]石原藤夫/ハイウェイ惑星 惑星調査艇ヒノシオ号の冒険(デュアル文庫)
- 惑星開発コンサルタント会社の調査課に属する二人がいくふしぎな惑星の数々を描く.
これはおもしろい. それぞれのアイディアが秀逸で, しかも難しくならず描写がユーモラス.
それを短編でシンプルに描き, 読みやすく楽しい.
- 11[7/10]藤原征矢/クールフェイス 4.スノーウィンド(ソノラマ文庫)
- 皇后の命を受け, 密かに敵国参謀へ平和を求める書簡を届ける役目を負った主人公たちだったが….
未来ファンタジーアクション第4作.
主人公は能力はあっても頭もちゃんと使うキャラだから必要以上に暴れないし,
リアの登場以降力を発揮できないせいもあって話がすっかり政治主導になり,
どうもかなり地味な展開になっている.
ライトノヴェルズとしてはもうちょっとハラハラドキドキできた方が楽しいのだが….
- 10[7/9]谷原秋桜子/激アルバイター美波の事件簿 天使が開けた密室(富士見ミステリー文庫)
- キャラクター世代のジュブナイルへのミステリー初歩としてはそれなりのねたではあるかなとは思ったが, いかんせん事件が起きるまでで全部の2/3,
解決するまで100ページも無しではあまりはらはらは出来ない.
いくらか引っかかる設定などもあってあまりすっきりした出来ではないかな.
まあ今回の前半はキャラ立てを優先したようにも読めなくはないし,
もし今後もシリーズが続くなら次からはもうちょっと本格的に事件して欲しいなとは思った.
しかしこれ, タイトルがちょっとまずいんじゃぁ? どうだろ?
- 9[7/8]立花隆/脳を究める(朝日文庫)
- 最先端の現場に取材しながら脳の謎がどこまであかされたかのリポート. 科学朝日連載分.
まだまだ謎は尽きず, そして面白い脳の研究についての話は, 専門用語があるにしてもそれなりに読みやすく, 同時に先端の研究に触れながら初歩的以上までまとめられていて,
興味あるけど今まであまり学習する機会のなかった人にはいい感じの本だと思った.
- 8[7/8]都築由浩/ミリー・ザ・ボンバー 3.絶叫!!ぱにっく・イン・宇宙水族館(青心社文庫)
- 直径400mの人工惑星は海の生物の研究鑑賞施設.
そこへ研修旅行でのりこんだミリィ達はパニックに巻き込まれる.
海は海でもそこは回りは宇宙空間でほとんど低重力の人工惑星,
それに宇宙船はしっかり水中用に改造するし, それをしっかり生かしているからグッド.
- 7[7/7]梶尾真治/さすらいエマノン(デュアル文庫)
- 地球生命誕生以来の記憶を持ち続ける女性のさすらいの旅のエピソード集第2段.
話がだんだんエマノン自身のことより自然破壊とか地球環境問題とかそっちにシフトしていっているため, 説教くさくなってくる. そういう意味では前作ほどは叙情的な味わいを堪能できない.
いいキャラなんだけどちょっと残念.
- 6[7/6]秋田禎信/魔術士オーフェン無謀編 11.もういいかげんあきらめろ!(富士見ファンタジア)
- おなじみ黒ずくめの魔術士の異世界ファンタジー, 本編前のなんでもアリ時代編第11段.
相変わらず暴走女性陣に振り回されています.
最近毎度書いている通りほとんどインパクトがなくなってきてしまい,
オチもあまり切れていないなぁという印象が強いが,
キリランシェロ捜索報告書にまつわる「こんな俺に誰がした?」はちょっとウケた.
インパクトはしょうがないけど, やはり適宜笑わせて欲しいよね.
- 5[7/5]小林光恵/ナースがまま ぴかっと新米篇(幻冬舎文庫)
- 毎度おなじみ小林光恵の看護婦ものエッセイ.
今回も少しどじで元気で前向きな新人さんの1年目のネタをまとめたお話.
主人公のキャラクターは他のシリーズ(?)と似たようなものだが,
この作品の場合同期になかなかいい友人がいる設定で, またドジといっても毎度問題を引き起こして泣き笑いというパターンよりはより日常的な印象が強い,
わりと普通に近いお話かと.
- 4[7/4]田中啓文/銀河帝国の弘法も筆の誤り(ハヤカワ文庫JA)
- 異星人からのファーストメッセージは禅問答? 宇宙服の中で嘔吐してしまった宇宙飛行士の運命? 超光速で移動する宇宙人の攻撃に対し, 呪いによる情報伝達で対抗?
駄洒落と悪趣味とSF的アイディアで綴るあやしいSF短編集.
帯が「私たちはこの本を推薦できません」という文字とともに20名の作家名を並べた実に怪しい本だったのだが,
うーん. 確かに駄洒落攻撃に晒されて脱力したい人や悪趣味な描写に無意味に喜べる人以外は,
心が広いと自信がなければ「お勧めできません」, かな(苦笑)? あまりマジメな意味でなくて.
- 3[7/3]上遠野浩平/ブギーポップパラドックス ハートレスレッド(電撃文庫)
- 生命活動を文字どおり「停められた」人たちがいる. その敵の正体がなかなかつかめない.
世界の危機に反応しブギーポップが自動的に浮き上がる.
でも「世界の敵って?」分からなくてもなんとなく違和感を感じ, それと戦う霧間凪, 九連内朱巳.
若い時代のやや屈折した思いを悪と善の境界付近で描き出す現代ファンタジー.
…なんてあらすじが正しいかどうかよく分からないが, 今回はその後のなじみキャラの若い頃(?),
の話ということもありいつもほど若者の描像が鮮やかに伝わってはこなかった印象が残った.
また, 話が時代的に前後する関係と「特徴」的にキャラ数がかぎられているせいもあるかもしれないが,
一度出て話がついたキャラがあちこちに出てくるのが習慣になってくるとあまり新鮮味がなくなってくる.
シリーズファンとしてはこういうきっかけが, という楽しみがあるが,
ちょっと食いたりない印象もなきにしもあらず.
- 2[7/2]篠田節子/ハルモニア(文春文庫)
- 精神障害者の社会復帰施設へ音楽療法の手伝いでチェロを弾きに行っていた東野は,
音楽に才能を示す女性の指導を頼まれる. しがないプロのチェロ弾きである自分に対し,
圧倒的な才能であっという間にうまくなっていく彼女に足りない「自分の音」を出させようとする東野だが, そのまわりでは事件が…. 音楽にまつわるミステリアス小説.
プロの自分をあっという間に追い抜いていく「弟子」.
その彼女が真似る音は彼が嫌いな一般受けの強い異端プロ奏者. そしてその彼女の障害の原因は….
チェリストと心理療法士と一般の人々の思惑がすれ違い,
その間にはさまれつつ徐々にこの世のものならぬ力を発揮していく障害者.
意見のずれから状況が悪化していくのが切なくとにかく痛々しい.
- 1[7/1]R.J.ソウヤー/フラッシュフォワード(ハヤカワ文庫SF)
- 2009年, ヒッグス粒子を発見すべく行われた大規模な実験は予想もし得ないことに数分間全世界の人間の意識を数分間だけ21年後に飛ばしてしまった!
人々はそのビジョンをもとに行動を起こすが.
未来は変更可能なのか, 時間テーマSF.
やはりソウヤー, SFながら人のドラマがしっかりしていて読みやすい.
最後にひろげる風呂敷が例によってなにやら馬鹿でかく, 規模の広がり方にちょっと戸惑うが,
それでも設定はしっかりしているし, 落ちもキレイ.
今回は日本人が絡んでいるが, 変な偏見もなさそうで悪くなかった.