読書履歴2001年11月
新刊9冊+古本4冊 = 合計13冊
- 9[11/30]巽孝之/『2001年宇宙の旅』講義(平凡社新書)
- 世界に多くの影響を与えたキューブリック=A.C.クラークの映画,小説の背景,影響を,
改めて読解する.
作品の文化思想的背景からその後の他作品への影響へ,
多大な力を持った作品だった事は疑いようがないが,
こうして1冊の本にまとめられると改めて感心.
一部強引ではとも思われるような解釈も含めているが, 回りがとやかく言っていない辺りを見ると,
SF界隈ではそうはずしているとは考えられていないのかな. 奥が深いのかなんなのか.
- 8[11/26]清水文化/ラジカルあんてぃ〜く 3.ローマ金貨とドジ妖精(富士見ファンタジア)
- 巻込まれたトラブルの中でかつての恩師に再会したカーリンだったが,
その彼はがらっと変わっていた.
そのトラブルで手に入れたローマ金貨の処遇に困った彼女はそれを雪兎のところへ持ち込んだのだが.
相変わらずであるが, ドジな妖精たちが作る雰囲気が緊迫した場面を全部破壊していく.
これは作者の文体の影響もあるとは思うが, そのこと自体がいいか悪いかはともかく,
ちょっとメリハリ感を損なっている感じがする. 今回は必ずしも話が完結していないため終わり方もすっきりしていないが,
その辺の引き方ももうちょっと工夫して次の巻を早く読みたいって思わせる事が出来るといいと思うが.
しかしカーリンのキャラ, こんなんだったっけ? なんか一巻当初とは違うような気も….
- 7[11/25]北野勇作/昔,火星のあった場所(デュアル文庫)
- 人間と狸が火星の開発をめぐって争ったのだという. そんな世界.
そして火星は無くなってしまった. 人間側開発会社の社員だった彼が最初に駆り出された仕事はというと鬼狩りであった.
これがファンタジーノベル大賞の優秀賞でしたっけ.
難解ではないと思うが, いかにも一般受けしなさそうなSF設定だなと思った.
量子論的なネタはねえ….
- 6[11/24]年見悟/アンジュ・ガルディアン 復讐のパリ(富士見ファンタジア文庫)
- 体中に穴を空けて水に入れるという殺人鬼. 彼によって両親を殺された少女は復讐のために追いながら芸人としてパリへとやってくる. いろいろと不遇な境遇をかこってきた彼女だが,
いろいろな人から受け入れられていくが, ついにその殺人鬼と対面した時….
描写が丁寧でイメージがいい感じ. 個人的には多分に印象が椋本さんのイラストに引っ張られているが, それを差し引いても悪くないとは思う. 設定そのものがそれほど問題あるとは思わないが,
キャラの心理面での変化と人間関係がもうちょっと踏み込めればなぁとは思った.
- 5[11/12]伊東京一/BIOME 深緑の魔女(ファミ通文庫)
- 大地の96%を覆う樹海の中で何とか暮す人々. その樹海を渡ってある国に着いた森林保護者ライカは領主に異常発生した虫の駆除を頼まれる.
その頃その国では依頼されたハンターが次々に死亡するという事件が起きていた.
「この国は呪われている」という噂が飛び交う中, 引き受けた仕事のために調査進めるうちに,
これは人為的なものであるという様子が見えてくる. そんな中で彼女が対するものは.
彼女の行動力と同時にそれを支える洞察力の高さが仕掛けやアイディアに深みを持たせていていい感じ. ポイントポイントでの山のもって行き方, メリハリ感, テンポ感もよく読みやすい.
演出のサービスが所々鼻についてちょっと過剰かな, と思うかどうかはおそらく人によるだろう.
惜しむらくは設定が多分にナウシカとダブっている印象が強いのがちょっともったいない.
アイディアの根幹が同じ訳ではないからもうちょっとしっかり独自に作ればかなりいい作品になったのではないかと思った. しかしまあこれでもデビュー作としては悪くないのではないか.
そして2歩先読みした動きが取れるようなら, 話も2次元的に広がったんじゃないかと思うのだが.
- 4[11/7]堀川しんら/プラントハンター蘭(ファミ通文庫)
- 植物の遺伝子を支配する事によって世界の征服をもくろむ(?)超国家企業アロル社の陰謀に立ち向かい, 植物保護を進める国際植物保護団体キューに属する高校生の公認プラントハンター蘭.
ひたすら普通に生きる道を歩んでいた天才高校生椿はその蘭と劇的(?)な出会いをしたのだった.
ドラマ企画書部門最優秀賞の小説化という事で, 無意味にどたばたしてあまりすっきりしない部分とか, 描写的にちょっと拙いかなと思う部分もない訳ではないけど,
話のポイントはそれなりに魅力はあるかなと思った.
もっとも巷の植物に目をつける事自体はいいけど, 行政に食い込むとかは別として「金のかかる」肥料を一般的な手入れに使う気になる人がそれほどいるような気もしないので,
気づかれないほどスピーディにそこまで支配できるのかという気はするが.
- 3[11/5]安斎育郎/不思議現象の正体を見破る(KAWADE夢新書)
- 透視占いノストラダムスこっくりさん金縛りその他いろいろな「超常現象」.
いとも簡単に信じてしまう人が多いなか, これらにどのようなトリックが隠されているかを解説.
単純な「信じない派」からきっちり踏み込んでトリックを具体的に解説してあるから非常に読みやすい. 引っ掛かりやすい人は一度読んでおくとよいかも.
- 2[11/3]石黒マリーローズ/「聖書」名表現の常識(講談社現代新書)
- 欧米の日常の言葉, 文章の中に頻繁に入り込む聖書由来の言葉.
これら既に文化となっている表現の数々を説明する.
こうしてみるとやはりキリスト教が宗教と同時に文化として根づいている事がよく分かる.
アメリカ大統領に非キリスト教とがなるなんて黒人がなるのと同じくらい想像つかなそうだ.
- 1[11/1]前田珠子/イズァーカ商会へようこそ(コバルト文庫)
- 困った時の人材派遣のご用命はイズァーカ商会へ,
ということで優秀な仕事達成率を誇る3人組は指名を受けて休暇を返上させられ,
ある特殊能力を持つ人物を護衛する事になったのだが?
どうも話の緩急があまりはっきりしないなという印象が残った.
説明口調が多い分そういうところが出にくかったであろうことと,
動きの速い部分でなんとなく説明が粗いだけで話が動いてしまってメリハリがたりなく感じた辺りが原因だろうか. 話の密度は上げて欲しいがそれがあまり説明調の文章によるものとなると,
ライトノヴェルズとしてはやはり読みにくい.