読書履歴2001年10月
新刊24冊+古本1冊 = 合計25冊
- 24[10/30]高畑京一郎/Hyper Hybrid Organization 01-01 運命の日(電撃文庫)
- 彼女とカフェでデート中だった貴久は黒い覆面犯罪集団と彼らを叩きにやってくるガーディアンの争いに巻込まれ, あっけなく彼女を亡くしてしまった.
しかしかたや警察がまったく捕まえられない覆面集団に一人立ち向かう謎のガーディアンは巷ではもはや「正義の味方」, 彼女の死は報われずに流されていく. そんな中貴久は一人復讐を決意する.
デートから事件までの流れはまあいいとして, その後の展開はやや安易かな.
改造人間に関するテクノロジーと主人公の大学院の専門がうまく噛み合って話が動くようならまあ普通の話になるだろうが,
今のところ話がまだ導入であることもあってこの作者らしい緻密な構成が功を奏しているのかいないのかさっぱり分からないのでとても評価できる段階ではないと思った.
しかしなんでああいう格好になるのかな. 力と引き換えという誘惑は強いにしても,
あまりなりたい形じゃないような気がこの作品に限らずするのだが.
- 23[10/30]渡瀬草一郎/パラサイトムーン 鼠達の狂宴(電撃文庫)
- 製薬会社の研究所の爆発で姉を失った冬華は姉が迷宮神群の研究者であり,
狩るものたちに対抗しようとして殺されたのだと知らないままその迷宮神群と狩るものたちの争いに巻込まれる.
なんで出てくるキャラがやたらと童顔という設定なのかよく分からないが,
ともかく話自体はよく練られていてしっかりした結末になっていると思う.
この手の作品にありがちな設定は小出しでミステリアスな雰囲気を残すものとは違い,
この巻でおおまかな設定はほぼ明らかになったと思うが,
魅力的な迷宮神群のアイディアが出せれば話は続きそう.
惰性に陥らなければしばらく面白いかも.
- 22[10/28]渡瀬草一郎/パラサイトムーン(電撃文庫)
- 高校生弓は父の生まれ故郷に初めて里帰りすることになり,
幼なじみの少年で人の感情の色が見える心弥と連れだってその離島に向かう.
しかしその島の住民は「波谷様」と呼ばれる「神」を信仰し現在も特別な力をもらっているのだった.
一方でこの種の神を「迷宮神群」と名づけ狩るものたちがいて, この島に向かっていた.
事態に巻込まれた彼らは….
離島でのオカルトものというよりは十分設定はしっかりしていそう. ガジェットはいろいろ既出のものが散見するがうまく消化して取り込んでいる印象がある.
クライマックスもオチもうまく出来ていて, それなりに楽しめたと思う.
前回とうって変わって今回のイラストはキャラの描き分けがイマイチのような気がするが,
まあ話の足を引っ張るようなことはないと思う程度.
- 21[10/28]真保裕一/トライアル(文春文庫)
- 競馬競輪競艇オート. ギャンブルにまつわるプロ選手の,
ちょっとした出来事を通して揺れる, 微妙な家族との間の想いを描いた短編集.
どの選手をとってもみな一線級には少し(だいぶ)力が足りないマイナー級の人たち.
でもやはりそれぞれの競技が好きで, 競技そのものもだが裏での作業の熱心さが職人的味を上手く出している.
成績がイマイチだったり伸びかけたりする中で些細な出来事から疑心暗鬼が生じるがそれが解けていく時の後に残る味わいがじんわりと実に秀逸. いい感じだった.
- 20[10/25]吉田直/Trinity Blood, Rage Against the Moons, From the Empire(角川スニーカー文庫)
- 人類と吸血鬼の闘争が続く時代, ヨーロッパはヴァチカンが支配していた.
その教皇庁の配下で吸血鬼に対処する特殊要員Ax派遣執行官の活躍(?)を描く. 西洋ファンタジー.
雑誌スニーカー連載版の文庫化第1巻.
文庫書き下ろし長編版の時に比べると読み切りに近い連載だけに話がさくさく動き小気味いい.
ただ, やはりメインキャラがトライガン被っていて世界がD被っていてその辺が惜しいのと,
話のオチが全般的にインパクト不足で, 途中は悪くないのだけどなんとなくきちっと締まらないで終わってしまう印象があるのがもったいない感じ.
- 19[10/24]岡本賢一/放課後退魔録 ロストガール(角川スニーカー文庫)
- ある晩高校生丈斗は妖怪と戦って傷つけられた夢を見, 起きてみると実際に傷がついていた.
そしてその朝2人の娘に「妖魔術クラブ」なる怪しい部活に勧誘されたのだった.
見えるようになってしまった彼に付きまとう妖怪の助言もあって,
高校のために地下校舎にはびこる妖魔退治を一度は断った丈斗だったが,
無謀にも突入し, ピンチに陥った2人からの電話で, 彼は真夜中の地下校舎へ向かう.
なんでうさ耳でピンぼけなのかよく分からない部員の娘にあまり魅力が生きてこない彼女,
おはぎが好きというのが分かっただけの妖怪に, 最後は吸い込んだいろいろな憎悪や妬みなどがなんで「浄化」思想に一気につながるのかもよく分からない,
なんとなく中途半端な印象だけが残ってしまった. 主人公はらしいかなという気はするが,
もう少し周りを練り込まないと魅力的にならないのでは, と感じた.
- 18[10/23]津守時生/やさしい竜の殺し方 5(角川スニーカー文庫)
- かつて人間と幻獣が共存した世界. 安定のために伝説の聖王とドラゴンの王が世界を陽界,陰界の二つに分けた.
その時ドラゴンの王は人間の王とその子孫が危機の時には自分か自分の子孫が必ず助けにいくと誓ったのだった. そうして訪れた乱世に, 当代の幻獣の王が誓約した相手は美貌の男騎士だった.
という訳で, ホモっ気のある話をスニーカー文庫に入れるという怪挙(?)と相成ったのだが,
それもやはりファンタジー世界がしっかりしているためだろう.
ホモという面と同時に誓約による「絆」が強く出ているためと,
同時に出てくる女性キャラが元気でまとめて笑い飛ばしてくれるため,
こちら方面に対する嫌悪感がある場合でもあまりいやみはないのでは.
私の場合はその手の部分は途中から適当に想像をごまかしたが.
硬軟緩急の取り混ぜが自在で話のめりはりがあり, 設定とキャラもしっかりしているからファンタジーとしては十分面白い. 途中からは主人公ペアが強すぎて戦闘そのものはたいしたことないが,
幻獣王の憑依魔法の設定をよく生かして時代をさかのぼった愛情&絆の深さをしっかり描いていると思う.
- 17[10/22]津守時生/やさしい竜の殺し方 4(角川スニーカー文庫)
- 16[10/20]津守時生/やさしい竜の殺し方 3(角川スニーカー文庫)
- 15[10/17]津守時生/やさしい竜の殺し方 2(角川スニーカー文庫)
- 14[10/17]津守時生/やさしい竜の殺し方 1(角川スニーカー文庫)
- 13[10/15]賀東招二/フルメタル・パニック! 終わるデイ・バイ・デイ 下(富士見ファンタジア文庫)
- なんだかんだいいつつお互いを信頼しあうようになった二人だったが,
そこに訪れたのは突然の宗介への撤収命令だった. しかしその直後に事態は動く.
前半はこの長編の流れらしくなくかなり和んだ雰囲気で,
後半に一気に落とすために狙っているなぁという感じだったが,
その割にその後半は路線がどちらかというと宗介とアーバレストの問題に敵の動きが見え出して,
という感じで微妙にずれたような気がする.
ミスリルの機構がはっきりしてきていろいろ問題のある内部事情も覗いてきた.
こういうところは書くならきちんと書かないと薄っぺらになってしまうので書き出した以上はしっかりやって欲しいと思った.
それはともかくかなめは強かった. 彼女はすごい. いやはや.
- 12[10/15]賀東招二/フルメタル・パニック! 終わるデイ・バイ・デイ 上(富士見ファンタジア文庫)
- 11[10/13]吉田縁/月光少女アンティック・ナナ 満月の長い夜(富士見ミステリー文庫)
- 失踪した叔父が直前に「絶対に開けないでくれ」という言葉とともに預けていったスーツケース. それを高校生のカオルはあっさり開けてしまった. 中から出てきたのはアンティークドール.
しかしこの人形, いきなり名乗って「人の悲しみを狩る」などと言い出す始末.
こうして彼は何やら巻込まれていくのだった.
これをミステリーと呼ぶ程謎とその種明かしが魅力的かはともかくとして,
心の中をずけずけ覗かれるのも覗かされるのもどちらも痛いだろうと思う.
それ以外では情景の想像はしやすいのだが, そこからイメージがもう一歩広がっていくような描写密度があるとよかったかなと思った.
- 10[10/12]矢崎存美/ぶたぶたの休日(デュアル文庫)
- ぶたぶたも人の父親. 休日は買い物に家族で外食. もちろん普段は仕事もばっちり.
会った人の心を癒す都会ファンタジー第3段.
- どんな話でも終わりにはやさしい雰囲気を漂わせてしまうぶたぶたというか,作者というか,
ついついふっと微笑んでしまいそうな素敵な話.
- 9[10/11]矢崎存美/ぶたぶた(デュアル文庫)
- 山崎ぶたぶた. 彼はバレーボール大のピンクのかわいいぬいぐるみ.
そしてなんとしゃべり働くのだ. そんな彼と東京で出会ってしまった人々との物語の連作短編集.
ある意味大人の童話でもあるような, ほのぼのとした話. はやりの「癒し系」かな.
とても読みやすいし落ち着いて読める. いい感じ.
- 8[10/9]小中千昭/深淵を歩くもの(デュアル文庫)
- 脚本家である作者の短編を集めたちょっと幻想怪奇なホラー作品集.
日常的な風景からホラーの世界へ踏み入れてしまうところの幻想的な雰囲気にこの人が脚本で見せる色が覗く感じ. ネタはバラエティに富んでいるがとくに外れもなくその雰囲気を楽しめた.
- 7[10/7]樹川さとみ/穢土(EXノベルズ)
- 恋人美弥子に死なれた天野は遺品の壷を売ってしまうがその中には漆黒の髑髏が.
これを得た占い師が変死し, 事件を追うルポライター細田が天野に接触,
「本当の美弥子は別人である」と告げる. 天野は美弥子の過去を確かめようと決心する.
うーん. 結構面白かったとは思うのだが,
なんとなく最後の詰めが甘いというかもうちょっと書ききってもいいような感じが.
もうちょっと女神の過去をうまく書けばフィクション世界がぐっと豊かになったような気がするけど, そういうのはあまり作者の意図にはなかったのだろうか.
- 6[10/6]野尻抱介/ふわふわの泉(ファミ通文庫)
- 化学部の部長浅倉泉は文化祭の準備中落ちた雷により出来てしまったダイヤモンドより堅く空気より軽い物質「ふわふわ」を売りに出す.
それは世界を変える力を持っていた.
また馬鹿でかい構造物を作りましたな. なんとなく解決(?)しているけど共振とか大変そう.
でもまあオゾン層より上となると装備はいろいろ要りそうだけど, いけるもんならいってみたいもんだ.
- 5[10/5]富永浩史/機巧天使サンダルフォン(ファミ通文庫)
- 10年前に某独裁国家にとらわれたマッドサイエンティストの祖父を持つ矢見雲はひたすらアベレージを目指す現在高校生.
そんな彼の元にいきなりバニーと中華な格好をしたロボットが. 祖父の遺産らしいのだが,
これをきっかけに米軍や宇宙人とのトラブルに巻き込まれるのだった. 彼の運命は.
まず最初に. かの祖父はマッドサイエンティストというよりはどうもマッドエンジニアですね.
メカの改良や開発に無上の喜びを感じる方. 両者に違いがあるかというと…なんかちょっと違うようなという感じの話だけど.
で, まあ中身的にはいまのところありがち, かなあ. 次の展開は次のうちどれか,
とか思うとどれかが来るみたいな.
もうちっとなんか魅力的なテクノロジーとか欲しいなあと思ったのでした.
- 4[10/3]秋田禎信/エンジェル・ハウリング 2.戦慄の門(富士見ファンタジア文庫)
- 無機質的なものばかりでほとんどの生物の生存の許されない硝化の森で精霊を集めていたフリウと父親の前に突然空から女性落ちてきた.
それからまもなくいきなり襲ってきた殺し屋, 帝都からやってきた警衛兵と最高刑執行官が相次いで現れる. 彼らの目的はなにか. 裏で大きな力が働く.
前作は謎設定ばかりで終わってしまったこのシリーズだが, 今回はそれなりに進行と解説にめりはりがついた印象. 世界の設定はオーフェン同様結構しっかりしている可能性(?)があるので,
早めに各キャラの魅力を確立したいかな.
- 3[10/3]竹河聖/風の大陸 第二十部 水面下(富士見ファンタジア文庫)
- 太陽神殿はついに正式にティーエに大神官就任を打診する.
一方次期王位を狙う第三侯と太陽帝国の混乱を誘うローダビア帝国のソグドム教の者たちは,
第六侯カリスウェンの動きに対し法律上はありえない彼の王位への意欲を感じて,
追い落とすべく動き出す.
あいかわらずゆっくりゆっくり進んでいるこのシリーズ, ここしばらく続いていた「動」への準備がだいぶまとまってきてぼちぼち動き出すかなぁという雰囲気は感じられるようになってきた.
ライトノヴェルズ系にしては珍しく小エピソードも1〜数冊で完結せずひたすら続くので,
単行本でさえもなかなか話が動かずじりじりする. やっぱり全部終わってからまとめ読み…,
なんていっているとまだ10年ぐらい続いてしまったりもしそうだけど.
- 2[10/2]対馬正治/紅蓮の猟魔士 2.血を啜る偽りの聖剣(富士見ファンタジア文庫)
- 猟魔士をしながら表では探偵業をする2人はある有名な剣匠の孫だという弁護士から伝説の勇者が魔王を倒したという聖剣のレプリカの回収を依頼される.
気が乗らないダレットだったが何故かペイが大乗気で引き受けたのだが….
キャラの設定がはっきりしてだいぶ生きて動くようになったかなぁと思ったもののこれで終わりとか. 逆にいうとキャラの出自が明らかになって終わりということか.
作者の事情で1,2巻の間が開いている間になにか状況の変化があったのかもしれないが,
中身自体は終っていない, というか始まっていない(?)のでやっぱりもったいない感じ.
- 1[10/1]榊一郎/ストレイト・ジャケット 2.ツミビトのキオク〜THE ATTACHMENT〜(富士見ファンタジア)
- 魔法の使いすぎが魔族化につながる世界. 魔族化してしまった人間のなれの果てを魔法で狩る仕事をする主人公. そんな中警察の特殊部隊が動き出すが,
その裏で魔族化の増加や違法な商行為などが広がるなど, きな臭い動きが目につき出す.
先が見えない世界で仕事を続ける彼が生きていく上でこだわるものはいったい何か?
斜に構えた主人公のちょっとだけハードボイルドもどきなファンタジー第2段.
彼が何にこだわって生きているのか悩んでいるなんていうのは面白いのだが,
今回は敵側が敵側たる所以があまりうまく出ていない感じがして若干痛さ不足の印象.
なまじ本が厚めだっただけにちょっとね.