読書履歴2002年8月


新刊23冊+古本0冊 = 合計23冊

23[8/28] 渡瀬草一郎/パラサイトムーン III.百年画廊(電撃文庫)
1作目の主人公に話が戻ってきて, 2話目の途中の場面がクロスするところから. それぞれの思いがクロスして, 承知の上で利用し利用されるところが丁寧に書かれていて切ない. しかしいい作品だとは思うが, 主人公のあっけらかんとした一途さのちょっと醒めた割り切り方は今的なのかなぁ. この辺の主人公の心情に今の中高生読者がどれくらい共感を覚えるのか, 興味があるところではある.
22[8/22] 米田淳一/プリンセス・プラスティック エスコート・エンジェル(ハヤカワ文庫JA)
講談社ノベルズで出たSFロボットものの早川での文庫化. 22世紀を舞台にした, ワームホールを用いて人間を遥かに凌駕する能力を持ち, 的確に判断する知能を持った女性(的)ロボットのアクションもの. 個々のガジェットはなかなか面白く, それぞれ興味深く読んだのだが, お話の方はやや平坦な印象が残った. あまり緩急の付け方がうまくない感じというか, 盛り上げるより主人公の心情を軸に叙情性を持たせようとしたのかどうかよく分からないけど, やや中途半端でその感じがするにしては物足りないという気がした. アクションのスピード感盛り上げ感と緩やかだったりぐっと来たりする叙情性と, どっちもあってメリハリがあるならそれこそ文句無いけど, 片方でもより完成度が上がればずっと魅力的な「SFストーリー」になったと思うのだが, どちらかというとまだアイディアの羅列から完全に脱皮できているとはいえないかなという気がしてやや残念.
21[8/18] 大野木寛/ラーゼフォン 1(MF文庫J)
7月に新創刊したメディアファクトリーのメディアミックス系らしいライトノヴェルズ. その中から1冊アニメ放映中作品のノベライズということで読んでみたが, 正直いかにもアニメノベライズらしい作品. まず周りの情景描写が薄すぎ. 複数の1人称の切り替えによる進行なのだが, 全体的に頭を使わないでフィーリングで生きている感じのキャラが多く, やりとりに深みが出ない. 頭を多少は使うキャラが悪役でちょっと足りずにやられ役だけに, 一層残念. アニメの時は情景描写は見てれば良いので問題ないのだが, 小説としてはこれではいかんのではないかと. 正直がっかりした. おそらくアニメを見ている人の補完にしかならないのではないかと. 全5巻らしいが, この調子ならおそらく2冊でやめるだろう.
20[8/17] 松岡圭祐/千里眼 運命の暗示(小学館文庫)
催眠を利用したというか拡張したアクションもの. アクション性のエンターテインメントを優先するためにそりゃちょっと大袈裟や, 思うところもあるのだが, 岬美由紀が→←なかなか壮観だった. 今回はうまく展開も追い込み追い込みでどんどん次ページをめくりたくなる流れ, 楽しめた.
19[8/15] 三雲岳斗/レベリオン 紅の翼に天使の詩を(電撃文庫)
これで完結. 例の裏ボスはこういう扱いだったか. このシリーズの「超能力」は基本的に生命物理的に超常現象にまで拡大しているわけで, それそのものは魅力的なのだが, やや説明が長すぎるかも. 一部は完全な説明は必要と思うが, 雑魚キャラ(?)の現象の解説をきちっとやった挙げ句あっという間に消えたら話の流れ的にあまりよくないような. もちろん説明してもらうのはそれなりに楽しいとはいえ, 話としてはどうかな. 逆に話を閉じる上でいくつか安易と思える設定や, 落としたと思えるものがあって, ちょっともったいなかったと思う. 特に学園モノの学生主人公&ヒロインでは彼らの成長過程をもうちょっと大事にして欲しいな.
18[8/15] 三雲岳斗/レベリオン 彼女のいない教室(電撃文庫)
新登場の梨夏の扱いが難しいかな. ある意味主人公回りが超上的になりながらも, 一般学生との接点を大事にしているあたりには好感度が高い. ただ裏ボスが見えて来るのはある意味物語の底でもあるような感じがして扱いが難しいかな.
17[8/15] 三雲岳斗/レベリオン 炎を背負う少年たち(電撃文庫)
今回はどちらかというと主要キャラクターの勢ぞろいの為の巻という雰囲気があり, 前巻の壮絶さと比較するとどうしても物足りない.
16[8/14] 矢崎存美/Dear My Ghost II.幽霊は身元不明(角川スニーカー文庫)
一応常識人の主人公の少年と, 外ウケはいいけど実態ははちゃめちゃな良い姉に, 頭の回る素敵な幽霊さん. あれだけフィーリングで突っ走る姉貴があれで話がまとまってしまうところが好き嫌いの分かれるところかも. オチとしてはすっぽりはまるところにはまるように出来ているが, その割に爽快感がやや乏しいのが, 姉貴の動きによるのかもしれないなと. ただ他が常識人なので, 彼女がいないと講談社ノベルズになりそうな気も? あとがきの雰囲気では3冊目以降は売れ行きと反響次第の雰囲気が漂ってくるが, これは続巻希望.
15[8/12] 矢崎存美/Dear My Ghost 幽霊は行方不明(角川スニーカー文庫)
幽霊が見える高校生真人と幼馴染の守護霊美海が, あやしげな霊感探偵をはじめた姉に巻き込まれて殺人事件を解決する話だが, 犯人の扱い的にいわゆる推理ものではなくてファンタジー. ある意味富士見ミステリーの路線かも. それは別として主人公のどことなく飄々とした感覚と, 守護霊さんとの微妙な甘い距離感覚が, 殺人事件話という題材にもかかわらずやわらかい作風とぐっと来るオチにつながっているかと. まずまず楽しかった. なおこの話もイラストはなし. イラストが無くても十分イメージを膨らますことの出来るのが本来の小説ではあるのだが, ライトノヴェルズとしてはどうかなという気はしなくもない.
14[8/11] 出海まこと/シャドウプリム(電撃文庫)
メイドさんアクションの短篇集. 各話の主人公は別で, 巻き込まれ系. お色気ととオカルトアクションを混ぜ合わせた内容で, 設定もややとっぴだが, それなりに主人公も頑張ってるし一時代前の少年系ファンタジーののりですかね. 色物系としては今の電撃ということでちょっと抑え方が中途半端な気がしなくもないが.
13[8/11] 樹川さとみ/死神見習い修行中!(角川ビーンズ文庫)
変な死神の見習いをする少年と少女のお話. 読み切りで完結している. オチとしてはお約束かなと思うが, 適当にほっとするところほろっとするところ. まずまず面白く読めた.
12[8/11] 宮部みゆき/堪忍箱(新潮文庫)
今回はあくまで庶民的な大事件に庶民的な視線から当たっていく. 決して世間を揺るがす大事ではないけれど, その中で悩みながら頑張っていく姿勢をやわらかく見つめる文体が何時も通り良い余韻を残す.
11[8/10] 田口美貴夫/機長の一万日 -コックピットの怖さと快感!(講談社+α文庫)
空の好きなベテランパイロットさんのエピソードをつづったもの. トピックごとにまとめながらも説明臭くなく, 楽しく読めた.
10[8/5] 賀東招二/フルメタル・パニック! どうにもならない五里霧中?(富士見ファンタジア文庫)
ああテッサタイミングはずしすぎ(苦笑). 宗介かましすぎ.
9[8/5] 瀬名秀明/虹の天象儀(祥伝社400円文庫)
つぶれた五島プラネタリウムを題材にしたタイムトリップもの. タイムトリップの際にその時代の他人の体を利用し, 感情だけは残るという一ひねり加えた設定を, 恋愛ものに繋げている. 悪くはないかなと.
8[8/5] 山田正紀/日曜日には鼠を殺せ(祥伝社400円文庫)
なんか前半に比して後半はさっさと終わってしまったなと.
7[8/4] 久美沙織/いつか海に行ったね(祥伝社400円文庫)
短い中に無理なく複数場面を織り込んで, 過去から最初の導入で登場した現在へと戻っていく流れが鮮やか. リアリティ的にはそこのつなぎは厳しいのではと思わなくも無いところもあるが, バイオ系SFフィクションとしての盛り上げ効果としては割と常套的な感じで, まあいいのかなと. いろいろ取材したであろう題材をきちんと消化して繋いでいく出来はよかったと思う.
6[8/4] 田中啓文/星の国のアリス(祥伝社400円文庫)
田中系救いなしSFもの. 以上(苦笑).
5[8/4] 柴田よしき/Vヴィレッジの殺人(祥伝社400円文庫)
吸血鬼ネタなミステリー. ミステリーとしては割と何気ない(?)話だと思うが, まあまあ.
4[8/3] 菅浩江/アイ・アム I am(祥伝社400円文庫)
デュアルノヴェラより更に短い400円文庫の第2弾. 今回はいろいろ注目の作家さんが書いているのでごっそり購入. 最初に読んだこの作品は, 結末は見えまくっていてもやっぱりぐっと来るものがあるしっかりした作品. ただやはり, 話の途中(=感情変化の過程)をどんどんすっ飛ばしている印象があるので, 話の緻密さには欠ける感じで物足りないかなと.
3[8/3] 梶尾慎治/かりそめエマノン(デュアル文庫)
エマノン自身を通さず, 弟を出すことによって外からエマノンの血筋を見ている感じだが, その分普段のエマノンで描かれた社会的な対象がはっきりしないので, 普段の短篇より長いのにエマノンの王道を行く話にはなりきらなかった印象がなくもないなと. 最初の4ページ鶴田謙二イラストは大サービス.
2[8/3] 林譲治/大赤斑追撃(デュアル文庫)
軌道遊び大気効果付で気楽に読めて楽しかったが, あと50ページくらいもらえれば, 林さんらしい毒舌合戦も見られたかなと思うのだが….
1[8/2] 篠田真由美/聖杯伝説(デュアル文庫)
文明と文化について, 先進側と土着側から見て半分ずつ書いている. 中編の中で書ける範囲ではよく組まれていて, 感動を誘われるが, 『夢』が絡んで来る分でちょっと話がショートカットしているような気がした.