読書履歴2002年2月
新刊19冊+古本0冊 = 合計19冊
- 19[2/28] 乙一/天帝妖狐(集英社文庫)
- 学校にあまり使われないトイレがあり, そこでの落書きから騒動が…(A MASKED BALL).
行き倒れていた男を助けた女性の家に数日居候をすることになった男だが, 彼は体中に包帯を巻き,
なかなか心を開かない. ようやく女性に心を開き始めた彼だったがその彼を事件が襲い…(天帝妖狐).
ホラー中編2編.
A MASKED BALLはミステリー色のあるホラー, 天帝妖狐はせつない系のホラー.
100ページ強の中編でさらっと読めるし, ホラーといっても非常にやわらかく,
私はホラーはちょっと…という人でもまず問題ないのではないかと思う.
どちらもよい出来で, 短い中に無理なく着想と展開と結末を織り込んであり,
一読の価値ありだと思う.
夏と花火と〜が好きな人にはA MASKED BALL, 角川スニーカーの切ない系路線が好きな人には天帝妖狐の方があいそう. 逆に両方あるのだからお買い得とも言える.
- 18[2/28] 小林光恵/ときどき, 陰性感情 看護学生理実の青春(集英社文庫)
- 昔から笑顔が自然でないと感じてきた主人公が, 看護学校でいろいろな人と触れ合いながら,
自分を見つめていく.
いつも看護婦エッセイでおなじみだが, 今回は看護学校が舞台なだけで基本的には青春小説.
だからこれぞ看護学校の内容!というのは特に目立たない.
また青春小説にしては出てくるキャラが同じように基本的にいい人, つまり表はいろいろあるようで行き着く先はみな同じという感じと, やや話のつなぎ方でギクシャクした感じの印象が残った.
もっとも主人公の性格に関しては共感できるところもあるので,
そういう意味では今の歳になってもまた自分の場合はどうかと考え直してしまうきっかけにもなったかと.
- 17[2/26] 星野亮/ザ・サード 0.風花の舞う街で(富士見ファンタジア文庫)
- パイフウの若い時代の番外編.
仕事の以来を受けスノウ・フレイクスへ向かうパイフウは途中で事故にあった子供を拾う.
一方なんでも屋のMJはイレイザーアレクセイと組んで首長を消しにいくが, その際にパイフウをマークする.
火乃香が出てこないのでいつもよりはだいぶ色彩のトーンが暗めだが, 暗いなりに淡い感じで不必要に重くならなくて好感触.
ページ数の割に脇役キャラの描写がやや物足りない部分があるのと(わざと書いてなさそうなのは別として),
明らかに狙ったと思われる→最後のスノウフレイクの舞う場面も色彩が変わらなすぎて逆に効果を抑制してしまった感じがしたのがちょっと惜しいかな.
- 16[2/24] 榊一郎/スクラップド・プリンセス 9.獣姫の狂詩曲(富士見ファンタジア文庫)
- 隣国へやってきた一行は通称獣姫と呼ばれるはみ出し皇女と出会う.
兄姉達だけでなく, 秩序守護者をも倒して天下を取ろうという野望を抱く彼女に対し一行は.
本格的にストーリーがクライマックスに向けて動き出しましたという感じ.
話の展開自体は平易だが, いつも通り心に訴える他人との絆と自分, というのは良く見えていたかと.
世界設定のようなものは既にすべて出ているようなので, あとは対決になだれ込むのか,
はたまたもう一捻りあるのか,目が離せない.
- 15[2/24] 榊一郎/スクラップド・プリンセス 8.終わりなき恋歌(富士見ファンタジア文庫)
- 哨戒に出かけた兄が帰ってこない. いらつき, 情報を求めて町へ出た彼女達に占い師が接近する. 一方正体不明の甲冑に襲われた兄は川に落ちて没落貴族の娘に保護される.
しかし彼女は彼を人違いしているようなのだが….
久しぶりにじっくりと書かれた印象のある長編. 毎回絆を考えさせる内容だが,
今回も最後は安易といえなくもないが, 中身としては良かったかと思う.
- 14[2/24] 秋津透/ハルピュイア奮戦記 第二話 翼の決断(ハルキ文庫)
- 人類外文明の遺物である生体宇宙船により破壊された母星からかろうじて脱出したマリアと孤児達だったが, 軍事専制帝国カルヴァンドラの手が伸びる. 彼女達の運命は.
話としては逃げた彼女達がこれからどうするかという話で, 実際には何もしていない,
「準備編」という感じ. …だったのだがあとがきによるとこれで一区切り, 続きは売れ行き次第,
らしい. 設定が明らかにされただけで,
その上孤児達それぞれのキャラクターや動きがあまりクリアでないこともあり, かなり物足りない.
ここで終わりとなるとそれこそ読んだ意味はほとんどないような内容といえなくもない.
といっても出てもこの後も買って読むかなぁというような出来ではあるが….
- 12,13[2/23] 林譲治/暗黒太陽の目覚め(上下)(ハルキ文庫)
- 宇宙都市オデッサに向かっていた貨客船フェニックスとこれに乗船していた桜叶みさとだったが, 宇宙犯罪組織龍党を名乗る組織に襲われる. 一方オデッサにはマヤ設計局が手を伸ばし,
更に恒星オデッサを観測していたサンジェルマン博士は異常な質量の不均衡を観測し, 災厄を予期した. これらが絡み合った末の結末は.
話そのものの結末はだいたい見当がつく範囲で, 一寸先の分からないスリルみたいなものはあまりないが, 社会組織の絡み合いの中にSF的なアイディアを埋め込んで,
それをうまくストーリーに織り込む力は秀逸かと.
- 11[2/21] 恩田陸/三月は深き紅の淵を(講談社文庫)
- 作者不詳でわずかに自家出版だけが出ている希覯本「三月は深き紅の淵を」にまつわるオムニバスミステリー4部作.
別だが共通する設定の本にまつわるオムニバスで, ある意味独特な作り.
一応ミステリーではあるが, その後に残る印象が恩田さんかなと.
- 10[2/17] 中村恵里加/ダブルブリッド VII(電撃文庫)
- 鬼斬りに寄生され, 自分の意識すら危うくなってきた山崎に対し, 危険を感じたアヤカシ八牧は彼を倒すことを決心する.
ほとんど八牧の話. この「事件」が山崎と優樹にどう影響してくるか, ということだろう.
それにしてもすっかり救われない話になりつつ…? さてさて.
- 9[2/16] 中村恵里加/ダブルブリッド VI(電撃文庫)
- EATと米軍の合同演習がということで久々に勢ぞろいした元六課のアヤカシだったが,
そこには米軍の陰謀が.
だんだん壮絶になって来ましたな. 演習というにはかなりプランニングが杜撰なのが気になるが.
- 8[2/15] 真保裕一/密告(講談社文庫)
- 警官である主人公の上司が業者と連れ立って料亭から出てくるところが密告された.
主人公は8年前, 上司の過失を密告したことがあり,
今回も当然彼に目が向けられたのだが今回は違う.
かくして密告者探しに乗り出したのだがその裏にはいろいろな影がうごめきあまたの妨害が….
うーん. 女心は微妙だ. ところで徹底した取材によるリアルな描写とその中でストイックなまでに逆境に立ち向かう特殊な仕事経歴を持つ主人公はこの作者ならではだと思うのだが,
細かい中身に関してはどうなんだろう.
→密告に関しては声紋などは取られないようにするのはまあ当然としても, 男女の違いって分からなくなるものですかね?
それから密告者本人, 結局自分の仕業を突き止めてもらうことを協力していたようなもんだが,
それをどう考えていたのか分からんのだ.←(以上バックグラウンドと同じ色)
結末がいつも以上に痛々しい人が多いので, そういう部分を気にしてみたりもするのだが….
さすがに580ページとなるとちょいと長いが, 徐々に追い込まれて徐々に解明して,
という流れの中の内容のよさには一気に読ませる力が十分あると思う(実際は時間の都合で切れ切れであるけれど, 時間があったらたぶん一気に読んだであろう).
- 7[2/11] 佐藤ケイ/天国に涙はいらない 3.あだ討ちヶ原の鬼女(電撃文庫)
- ひょんなことから兄を呪殺した犯人を追う巫女さんが, 賀茂の家に住み着いてしまった.
人間に化けて家へ復帰した是雄とたまだったが….
まあ結末はほとんど読まないうちにバレバレなのはまあ仕方ない内容か.
それだけにさすがにあまり感動は狙えないかも?
適当にテンポ良くギャグを挟んで時々笑えるが, しばしば滑っていることもある感じ.
もうちょっとギャグのヒット率を上げたいかな.
- 6[2/11] 朝松健/秘神黙示ネクロノーム 3(電撃文庫)
- 相変わらず反目し, かつ権力を求め戦闘を繰り返す各派の思惑に揺さぶられるネクロノームの操縦者5人だったが,
ネクロノームとの交流を通し地球の危機を悟った5人は互いの反目を乗り越えて動き出すのだった.
完結.
全3巻として見ると2巻の時点での進み具合から最後があっけないんじゃないかと心配していたのだが, こうしたのか. まあそれもありか.
ただそうすると小ざかしく脚を引っ張っていた某キャラ約2名が中途半端な扱いになってしまった感が強い. 完全にオチをつけろとは言わないけど,
何のために出てきたのか良くわからないほどの扱いはどうかなという気がした.
全体的に5人以外の描写が粗めでちょっともったいないが,
まあジュブナイルとしてはそれなりに読みやすいか. そんな感じの作品だったと思う.
ひとつだけ. 高度11万km(20Re)に地上監視衛星置いたって見えないってば(苦笑).
- 5[2/9] 朝松健/秘神黙示ネクロノーム 2(電撃文庫)
- 覚醒した最終兵器ネクロノームをめぐり, 軍事覇権をめざすコスモ・マトリックスとそれに対するファルウスの間の戦いが激しくなっていく.
それに呼応するようにネクロノームを束ねる母機が目覚めるのだった.
もうとてつもなくお久しぶり. かすかな記憶をひっくり返しながら読む.
この作品, いつものクトゥルー物に比べると朝松さんらしからぬくらい色が薄い.
あとがきの感じだと狙ったらしいんだが, クトゥルーをはずすと結局ほとんど巨大ロボットものオカルトファンタジーの王道になってしまって,
朝松さんと思って読まない人には実に普通の作品になってしまうような.
筆力はあるし, 別につまらないわけではないけど, 最近の出来のいいものとくらべると,
とりたててアドバンテージがなくなってしまったようでその辺もったいない気がするのだが.
- 4[2/8] 荻野目悠樹/双星記 5.歴史は宇宙で作られる(角川スニーカー文庫)
- 惑星からの脱出を図る提督に対し, 惑星側の艦隊を影から操る存在の魔の手が.
そしてこの戦いの裏が明かされる中, 生存をかけた両者の戦いの行き着く先は.
- 3[2/7] 荻野目悠樹/双星記 4.凍てつく月の戦い(角川スニーカー文庫)
- 衛星を奪われそこにマスドライバーを建設された惑星側は奪還作戦に出るが,
惑星各国の足並みが揃わずに裏のかきあい.
一方攻勢側の艦隊も叛乱を受けて提督が惑星上に脱出してやはり足並みが揃わず.
奪還作戦の結果は?
国家対決である以上状況が複雑になりティーンズ対象としてはやや説明部分が多いが,
特に見せ場の作り方がうまいとかそういう類の話ではないので世界の骨格の深さで勝負したいとなればまあ仕方なかろう. 話自体は次へ続くので感想はそれを読んでから.
- 2[2/5] 酒見賢一/語り手の事情(文春文庫)
- 英国ヴィクトリア朝時代に, 性妄想にとらわれた男がやってくる屋敷があり,
そこの「語り手」から歪んだ性癖が語られる.
ぶっちゃけていえばポルノ, もうちょっとまっとうにいうと歪んだ恋愛小説か?
20ページもあとがきで現代の性問題を語ってしまう辺りがやっぱりあいかわらずというか.
- 1[2/1] 安井健太郎/ラグナロク 9.背神の遺産(角川スニーカー文庫)
- 嵐を避けて湖を北上する人工島の上でリロイたちはウィルヘルム派に襲われるが.
まあいつも通り. クライマックスへ向けて(?)衝撃の新事実(?)にリロイがどう成長していくか,
とはならないんだろうな, この話は. それはそれでもいいけど.
ところでもうちっと誰か考えんのかね, ラグナロク(人型)のこと.
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