読書履歴2002年6月


新刊24+古本0冊 = 合計24冊

24[6/30] 風見周/ラッシュ・くらっしゅ・トレスパス!(富士見ファンタジア)
第13回佳作. スチームパンクと魔法じみた怪物を混ぜた世界観がいい感じ. 奇しくも(?)吸血鬼話が続いたが, こちらの方はメリハリの利いたキャラ造形で楽しく読めた. しかし警報装置の限界とか鍵の性能のチェックにはいいと思うがほんとに命がけだな. いいのかそんなので.
23[6/30] 伊澄優希/トレース&トレース でたとこ勝負の超新星(富士見ファンタジア)
第12回努力賞受賞者のデビュー作. 要は宇宙をまたに駆けたコレクター話らしいのだが, まず何ゆえコレクションがマニアだけでなく一般に大きな支持を受けるのか, それからなぜトレーサーに免許がいるのか, そしてそれがそんな難しい資格なのか. それにもかかわらずあっさりとれた主人公が実際の行動でそれを示す行動をしたのか(していない), ましてや初めて下りる知らない星に, 大気の検査もかけずに降りるのか. あげくは変な対立キャラ(?)がいるくせに何やってるのか分からないうちに一度も主人公と話が交わらずにおわるという, なんだそりゃ? 話の中身が有機的につながってない感じがするんだな. 勢いだけは買うが, どちらかというとがむしゃらに突っ込んでいって後は運と王子様任せか. デビュー作としてはシリーズのために伏線を張ることより, 十分にアピールし切ることに力を出して欲しいのだけどどう考えたのだろうこの編集さんは. とりあえずオレにはこれ以上この人の作品を読む気は起きない.
22[6/29] 鈴木鈴/吸血鬼のお仕事 The style of vampire(電撃文庫)
第8回選考委員特別賞受賞作. すっかり夜行性人間的になりつつある吸血鬼とその使いの猫に対し, 幽霊さんとシスターが絡み4者4様の人生が絡み合うのだが, 核となると思われる主人公の吸血鬼人生とシスターの裏事情が出ないまま終わっているため, 話が中途半端である. 敵役になる吸血鬼の裏事情も単純な悪役を回避させたみたいな程度の明かし方で, あまり痛くない. またこの話に関してはなぜ日本に吸血鬼がいてこれが棺桶で寝ていて十字架とにんにくが苦手かというところまで重要ではないかと思う. 作者がキリスト教徒で日本もキリスト教国家であるべき姿として書いたならまあ分からないでもないが, 安易に既存キャラクターを流用するのは歓迎できない. 日本と西洋の風俗を実際に融合させるならそれなりの設定やアイディアを練りこんで欲しい.
21[6/25] 高橋弥七郎/A/Bエクストリーム CASE-314<エンペラー>(電撃文庫)
ポイントは彼ら二人がなんで今こんなことをやっているのか, かな. 夢を…, というのはあるが, 明示しなくてももうひと突っ込み欲しい. これは全員である必要はもちろんなくて, 社長がなんで怪しいコネを持っているかなんてのは本題でないのだから1冊につめる必要はないし, やはり話の中での重要性の問題. 中身は普通でも用語の作り方は結構よさそうだったし, ゾーンや星追いなどにもそれなりの魅力はあると思うのだが. 多分もう一息かな.
20[6/23] 佐藤文隆/顕微鏡で宇宙を見る(岩波現代文庫)
うーん. 岩波のせいか佐藤先生のせいか物理屋であって天文屋でないせいか知らないが, 読むほどのものではなかった. どうせ知ってるトピックばかりだし. 途中まで読みかけてつまらなさにしばらく保留してしまった. エピソードや裏話とかあると面白いのだけどね.
19[6/22] うえお久光/悪魔のミカタ 魔法カメラ(電撃文庫)
電撃ゲーム小説大賞第8回銀賞. いやいや強いねカノジョ. 登場キャラがいちいちあくが強いのはいうまでもないが, 心の強いキャラ, 弱いキャラ, 強い愛憎が入り混じった時に現代の暮らしの中, 突然突きつけられる実在の悪魔の誘惑に耐えられるのか. それぞれのキャラに突きつけられた痛みがノンストップで迫ってきてある意味エグかった. 話の展開描写が非常にスピーディーで面白く, 夜寝る前に読み始めたが止まらずに最後まで一気読みしてしまい, しばらく寝付けなかったのであった. 始まりが非常にベタでいったいなんだと思うのだが, 全部読み終わるとこれも悪くないかと. 期待大…といいたいところだが, これをシリーズとして続けて収拾つくのかな? ひたすらズブズブと嵌っていくのもますます痛そうでそれはありかもしれないが, それでは異色のライトノヴェルズになりそう….
18[6/21] 有沢まみず/インフィニティ・ゼロ 冬-white snow(電撃文庫)
電撃ゲーム小説賞第8回銀賞. いきなり電波攻撃を食らってちょっと閉口するが, 前半耐えられればまあ後半はせつなさを発揮してくれるお話. ヒロインが初めからあんななので「サトーさんGO!GO!」なんてノリが却ってイタさを出している感じはする. ただ現代の価値観と旧来の伝統の血と技にまつわる観念を共存させるなら, もうちょっと踏み込んでぶつけて欲しかったかなと.
17[6/20] 田村登正/大唐風雲記 洛陽の少女(電撃文庫)
電撃ゲーム小説賞第8回大賞. タイムトリップの要素を加えてボーイミーツガールにしてしまった中国歴史モノ. 時間旅行と歴史改変に関する考察としてはなんかこの手のものがあったような気がしたのだが思い出せない. 光瀬龍だっけ? で, 気になったのはなんで幽霊が出てくるのか. 有名な両女性を登場させたいというのはいいとして, それならばどうして出て来得るのか, こういう設定はどの程度普遍性があるのか, 重要な部分だけに, (読み落しでなければ)一応触れておいて貰わないとややしっくりこない感じ. 後はキスとか風俗的にこの時代の描写が的確かどうか気になったのだけど, 自力で考証出来ないので保留. その辺りを気にしないときれいな流れの話で好感は持てる.
16[6/20] 漲月かりの/サンクトゥスは歌えない 名前のない少女(ビーンズ文庫)
角川ティーンズルビー第2回優秀賞. ティーンズルビーがあっという間に消えたため今回がラストかな? 日本の未来にあまり日本的でない舞台を作り出してあまり日本的でないイメージのキャラが日本的価値観で動くって感じか? グローバル化というにはちょっと混ざり方が不自然で一貫性がないかもしれないなと感じた. いろいろと伏線をひきまくったまま明らかにせずに終わっているところが多数あり, 余韻を残すにしてはちょっと書き込み不足の印象の方が強く残ってしまい受賞作の単巻としてはちょっと不満かな.
15[6/20] 深見真/ブロークン・フィスト 戦う少女と残酷な少年(富士見ミステリー文庫)
富士見ヤングミステリー第1回大賞. 学園モノで体育会というか格闘系でミステリー. ンな都合よく力が出てくる設定ありか? と思わなくもないが, みょーに詳しい格闘知識と描写がまずまずよかったのと, ミステリーそのもののネタが結構へえと思えたので(狭義ミステリーとしては反則かもしれないが?), とりあえずいいことにしておこう.
ただし大賞を出すのに難産したファンタジアと対照的に1回目から大賞を出したこちら, やはりレーベルの方針としてミステリーそのものの出来よりはライトノヴェルズとしてのアイデンティティの方が重要だと考えた方が良さそうな感じはした.
14[6/18] 山本敬弘/風の聖痕(富士見ファンタジア文庫)
富士見ファンタジア第13回準入選. 家系から落ちこぼれて他技能で身を立てたが, 考え方はいたって今風の主人公と, 家系上はエリートだが暴走するライトノヴェルズらしいヒロイン. 割とつかみやすいキャラ作りかなと. 家のしがらみの中で不器用に息子を突き放す父親とか, 実力に裏打ちされた現実判断のできる宗主とか, 全体的には新旧の価値観, 善悪をクリアに対比する話の流れの中で, 必ずしもパターンだけではなくて設定に深みを持たせた感じがそこそこうまく生きていると思うだけに, 更に敵側の痛みにもう一歩踏み込めて, 主人公の過去がもう少し豊かならば結構いい線いったのではないかと思う. その辺り, 売れ筋(?)キャラ造形で止まってしまったのが逆にちょっと惜しいかなと.
13[6/16] 野村美月/赤城山卓球場に歌声は響く(ファミ通文庫)
ファミ通えんため大賞受賞作. いやはや, 結構珍作かも? まじめでおとなしい方の常識人文系女子大生の一人称で書かれるため文体そのものではぜんぜん誇張された劇的な書き方がないのに, やたらと日常臭の漂う大学生活にアクの強いキャラが集団で入ってそれにこれでもかなヘンテコな事件とそれに伴う設定. いやまあ何の神様がいてもいいですけどさ. 一応適当に笑わせてもらいました.
12[6/15] 上島拓海/三ヶ月の魔法(ファミ通文庫)
ファミ通えんため大賞佳作. うーん. その結末は現実と虚実を混同して飛び降りてしまう困った人に失礼(?)だと思う…. こういうヘンテコな事態に対する色々な世の中の動きなんか自然で, その中で幼馴染の言葉に励まされて主人公が悩み吹っ切るという筋に無理はないと思うし, ある意味微笑ましいのだが, 大事なところがちょっと気になってしまった.
11[6/15] 松谷雅志/真拳勝負!(ソノラマ文庫)
ソノラマ大賞佳作. えーと, 要は回りがエスカレートしてどうこう言おうと, コブシのライバルはコブシだけで分かり合えるんだといいたいのか? って感じの内容. ただ主人公が始めからあっけらかんとしたキャラでヒロイン(すばるの方)が前向きで明るいので, だいぶテンポのいい展開になっているのがよかったかなと.
10[6/12] 長谷敏司/楽園 戦略拠点32098(角川スニーカー文庫)
スニーカー大賞金賞. 戦争システムに対する疑問を「楽園」を舞台にその住人マリアとの交流を通して落ち着いて見直してみたということになるか. 登場人物が少なくその分各キャラが丁寧に書かれていて, やがて明らかになる「楽園」とマリアに関するイタイ部分を効果的に引き出しているかと思う. SF設定をあまり強く前面に出さず, 人間模様を大事にした雰囲気はまずまずよかった.
9[6/11] 時無ゆたか/明日の夜明け(角川スニーカー文庫)
最初読んだ時イマイチ話のつながりがぴんと来なかったので珍しくひっくり返してぱらぱら読み返してみると, しっかり伏線や設定など押さえていたのだと分かり結構感心した. 読み出しはどちらかというとオカルトホラーかと思ったのだが, ミステリーの要素を含んだ学園小説といっていい内容だったかな. スニーカー大賞の優秀賞だが, なかなかよかったと思う. 次作を楽しみにします.
8[6/9] 関口和敏/デモン・スィーパー 運命を刻まれしモノ(角川スニーカー)
スニーカー大賞奨励賞受賞者の第1作. 近未来未来世界設定を用いたサイバー退魔師の活躍とまだ若い彼らの人生(運命)への哲学といくつか混ぜ合わせた意欲的な作品には見えるが, 描写がやや粗削りな印象がした. 仕事の原因の事件の描写がいまいちとか, 人物の書き分けがやや甘い印象があるとか, 「運命」と立ち向かうにあたり, 結論だけでなくいかに悩んだかが落ちていて物足りないとか, その辺がしっかり書き込めればより面白くなったのかなと. そんな感じがした.
7[6/7] 飛田甲/ハイブリッドユニバース(ファミ通文庫)
だいぶ遅れていてようやくでた第2回佳作. 異物理(?)法則異人種のパラレルワールドとつながった世界での学園ボーイミーツガール小説. 舞台としてはそれなりに魅力的ではあると思うが, 世界に関わることを一部だけごそごそやっていてあわやというのは科学屋さんとしては悔しいところ.
6[6/6] 米澤穂信/氷菓(角川スニーカー)
学園小説大賞ミステリー&ホラー部門奨励賞のもう一作. 割と日常的な中で「伝説」を少ない資料から掘り出していくこじんまりしたパターン. まあ雰囲気は悪くないがあまり驚きのなんとかとか, 謎が解けた後の余韻みたいのはやや物足りない感もあったかなと. 今後オリジナリティのある謎と推理を組み立てられるかが鍵かな.
5[6/5] 北乃坂柾雪/匣庭の偶殺魔(角川スニーカー)
学園小説大賞の今回からスタートしたミステリー&ホラー部門の奨励賞作品. 犯行の動機をどうもってくるかというところの落しどころが一番読みどころかと. 「影恐怖症」で家から出られないことさえある人物の一人称であるところがひとつポイントだが, 謎解きへのつなぎとして効果はあったかと思う.
4[6/3] 野島えいじ/ネクストエイジ(角川スニーカー)
カバーのあらすじを読んでバトルロワイヤルで一瞬はやったゼロサムものかいなと思ったが, 読むとそういう訳ではなさそうというのはすぐ分かった. お約束どおりきちっと話を組んでいっているなとは思うが, 根本的にロボット格闘にそんないちいち指図してられるのかという疑問が??
  • 3[6/2] 都築俊彦/まぶらほ 〜にんげんの巻〜(富士見ファンタジア)
    こちらはドラマガ連載版のほう. あいにくと, この巻の結末は知ってしまっていたのでまあなんとなくサラッと読んでしまったが, でもやっぱり命かけてるんならもうちょっと前から悩んでおいて欲しいな. チカゴロノワカイモンはしないのか? という気はしないでもないのだが.
    2[6/2] 都築俊彦/まぶらほ 〜ノー・ガール・ノー・クライ〜(富士見ファンタジア)
    龍皇杯獲得作の長編版が先に発売. 魔力行使がほとんど出来ないが最高の血筋の男の子を種馬目的にカワイイ女の子に奪い合わせるというふうに, 実にクリアに堂々とギャルゲーハーレム(?)設定を持ち込んだ学園ボーイミーツガールもの. 各女の子のパターンもまあしっかり売れ筋(?)をついていて, 振り回されつつ節目節目でおいしいところをさらっていくというメリハリ感はうまく王道をついているかなと.
    1[6/2] 矢崎存美/刑事ぶたぶた(デュアル文庫)
    デュアルでは順番がひっくり返って3冊目だが本来は第2弾のぶたぶたシリーズ. 今回もふんわりゆったりぶたぶたの空気が充満するが, 対象が一応犯罪だったりしつつ, それは最後まで解決しないで残るので, 各話事に雰囲気がほっと緩む感じあまりないのが(あるけど), 個人的にはややもったいない気も. おそらく長編より連作短篇みたいな方がいいのかなと感じた.