読書履歴2002年3月
新刊16冊+古本5冊 = 合計21冊
- 15,16[3/29] 草上仁/スターハンドラー 上下(ソノラマ文庫)
- 異生物訓練学校をトラブルで最低の成績で卒業してしまったミリセントは,
ようやく就職口を見つける. しかしこの会社, 変わり者ばかりな上になかなかの重労働.
ミリセントの活躍はいかに?
しゃべり方がキャラごとにやや区別がつきにくい部分があるが, キャラそれぞれのたたせ方はいい感じかと. 例の異生物はちょっぴしナウシカの王蟲を思い起こす部分があるのだが,
なかなかお茶目でしかも素数理論を無理なく話に絡めてうまく展開させていて楽しめた.
ミリのノリが結構ぐっど. 続編はこれを読む前に買ってしまったが外れではなさそうでよかった.
- 14[3/28] 松岡圭佑/バグ(徳間文庫)
- 子供に優しいというコンセプトで有名なゲーム製作会社の新作で遊んだ子供が次々に自殺未遂を計るという事件が起きた. 対立ゲーム会社や自社取締役達との腹の探り合いの中で,
真実を追い求める社長たちだが….
原作は確かポケモン事件より前だったような気がしたが,
文庫化に当たって一部書き換えられ, その辺の話も付け加えられている.
結末に関してはおいておいても, 途中の書き込みも十分エンターテイメントとして読み応えがある内容であったと思う.
- 13[3/28] 乃南アサ/夜離れ(幻冬舎)
- ねじれた男女関係の中で歪んでいく女性を描いた短編集.
男から見ると, この状況で女性にこんなになられると怖いところが….
- 12[3/27] 吉田直/トリニティ・ブラッド R.O.M. II.熱砂の天使(角川スニーカー文庫)
- 極秘裏に吸血鬼の帝国との交渉の道を探るカテリーナ枢機卿に,
ついに吸血鬼側からのコンタクトが. しかし同時にカテリーナに対抗するフランチェスコ枢機卿の側も対吸血鬼強硬派を送り込む. しかも吸血鬼側も実は?
D,HELLSING,トライガンの掛持ち小説(?)書き下ろし第2弾.
主人公&ヒロインの境遇や活躍の仕方はいかにもベタである印象が強いが,
設定の組み方はいつも通り独特のウンチクでまとめていて良い感じ.
奇をてらう必要はないと思うが, 後はやはり話の展開にはもう少し独自色が欲しいかなと.
- 11[3/26] 佐藤茂/DEKU 親愛なる来訪者(角川スニーカー文庫)
- 15年前に空から現れたスレイバDEKUはゴミを食べながら人間に従順に仕える物体だが,
生き物なのか機械なのかなぜ現れたのか不明である. その一体DEKUは少年エソラの無二の親友.
しかし彼の村ではこのDEKUに食べさせる種類のゴミが足りなくなり, 売る話が持ち上がった.
SFファンタジー.
アイディアはまずまず面白いし, 展開もばたばた動いていいのだが,
全体的にメリハリがイマイチな感じで, 能動的に読んでいるはずなのに,
なんか話に流されながら進んでいく感じがしてイマイチ楽しみきれなかった.
また男子向けライトノヴェルズという点に限れば, ヒロイン(?)の使い方がぱっとしない.
もうちょっとしっかり動かしてみたいよなぁとか思った. しかし何ゆえ牛?
- 9,10[3/24] 久美沙織/ドラゴンファーム 聖竜師の誓い(上下)(ハヤカワ文庫JA)
- ディーディーと結婚し子供も出来たフュンフはついに復活した一ヶ月以上に渡る飛竜遠距離耐久レースに出場する.
いまだ戦乱の只中の南の国までの長い旅路の中で彼が出会ったものとその結末は.
竜と人の関係に対する問いかけと答えがこの巻では男女の関係と対比されながら明示的に示される.
何度か出てくる竜が「飛ぶ」光景が効果的に使われている感じで印象的.
話の収拾としては→「謎のカリスマ(?)」に「血縁」←となるとなんとなく食傷しかねない部分もあるが,
あまり嫌味がないのと結果として出る情景が感動的にうまく描かれているのでまあ細かいことを気にしなければ十分楽しいかなという感じの完結編だった.
- 8[3/18] 霜越かほる/KLAN III.迷走編(スーパーダッシュ文庫)
- 伯爵の手から逃れながら次の手を打つべく, 分散して行動する虎ノ介たちだったが,
虎ノ介が偽名を使って札幌で借りたアパートの大家の娘は….
一方美笛たちは東京の伯爵の居城の鼻の先で行動を起こすが.
裏のかきあいが楽しい…といいたいが, 欲を言えばもうちょっとそれを有効に事態を動かす(解決するだけでなく)手段に使えると面白いかなと思った.
主人公側には弱いとはいえいい知恵袋キャラが2人入ったので今後悪役側にも頭を使った勝負を出来るようになれば, もうちょっと手に汗を握れるかも.
キャラクター描写に関しては高天原なリアルで見せたちょっと屈折したようなでも普通の高校生の描写の腕はこの作品でも生きているかなと.
- 7[3/17] 霜越かほる/KLAN II.逃走編(スーパーダッシュ文庫)
- ホテルイースタンの事件を偽装するために羆,虎,ライオンの屍骸を見せる工作を行った伯爵だったが, 検死に立ち会った動物行動学の大学院生美笛はその結果に疑問を抱く.
それに気付いた伯爵側が彼女を「消す」のを危惧した虎ノ介は彼女を助けるが….
田中芳樹原案, 霜越さんによる続編となったが, 特に違和感も無くそれなりにメリハリもついていていいのではないかと思った.
一般人(?)の新キャラがいいアクセントになっていて話の深みをうまく増しているかと.
- 6[3/17] 田中芳樹/KLAN(スーパーダッシュ文庫)
- 古くから続く「ハムル」を持つ者の一族. この4つの血族を統一して支配しようという者が現れた. 高校生日高虎ノ介も巻き込まれ, 父を殺され, 妹をさらわれる.
他の追われるハムランムルとも接触し, そこから彼の戦いが始まる.
これはjBOOKSの再版だが, このたび霜越さんが真ん中を書くということで続編がようやく出ることになり, スーパーダッシュへ引越し.
非常にジュブナイルらしい設定とシリーズものにしては少ない登場人数で読みやすいが,
同時にやや物足りない面も.
- 5[3/16] 久美沙織/ドラゴンファーム 2.竜騎士の誇り(ハヤカワ文庫JA)
- 3年後, デュレント牧場は立て直され, 平穏な毎日になっていた.
そこへ姉の結婚を目前にして絶縁状態の兄が…. それに続き事件が続き平穏な生活は崩れたのだった.
いきなり3年飛んでいて間の「試練」とかはすっぽり省略されてしまいちょっとびっくりしたが,
何も全部書かなくてはいけない訳ではないしね.
前作も思ったが, 男といっても主人公フュンフの考え方は非常にやわらかいと思う.
別に女々しいとかそういうのではないけれど, その他にも話や思考から思い浮かんでくる内容が微妙に男ではすぐに出てこなさそうな部分もあったりして,
その辺りが久美さん色(?)なのかなぁと思った.
それとは関係なく内容は面白い.
平穏を乱される事件といっても別にそんな大袈裟に風呂敷広げたりしないので, 軽く読める.
- 4[3/11] 田中啓文/ネコノメノヨウニ…(スーパーダッシュ文庫)
- 時系列順に20世紀前半から22世紀の未来まで, 伝奇ホラー短篇6編を収録.
たとえジュブナイルでCobalt連載であろうと, やっぱり田中啓文は田中啓文.
相変わらずどろどろで苦い後味を残す作品を並べること.
一応若い男女の恋ゴコロが絡んでいる辺りがコバルトということらしい.
話そのものは特に最初2ページで結末の分かる卵をはじめスタンダードなものが多いが,
一応タダでは終わらないというか微妙に田中味はそれぞれついていると思う.
連載分を強引に猫をネタにつなげたらしいが, これはなんかすごいな.
そうする必要があったのだろうか? よく分からなかったのだが.
- 3[3/8] 久美沙織/ドラゴンファーム 1.竜飼いの紋章(ハヤカワ文庫JA)
- かつての名門牧場の跡取り息子は隣の成金邸宅に泊っていた美少女から牧場の買収計画を聞かされる. 竜を愛することでは誰にも負けない彼だがまだ牧場ではペーペーの働き手.
そんな彼の奮闘と恋を描くシリーズ第1弾.
解説ではないが竜のキャラクターが犬的に個性豊かというのは読んでいて楽しい.
事態がころころとテンポ良く展開してゆくなかで各キャラが生き生きと動き,
わくわくしながら読める. 最初にいくつか話の大筋が示されるが, その辺りはまとまらずに終わっている辺りが気になって仕方ないが, 今後のシリーズで明らかになるのかな.
題材がクラシカルなファンタジーの一方で感性は今的にもフィットしている感があり,
安心して読める.
- 2[3/6] 片瀬二郎/スリル(EXノベルズ)
- 5人が参加して生き残った一人だけに莫大な金額が与えられるというゲーム「スリル」
噂を聞き, あまり実感を伴わずにいろいろな動機で参加した5人だったが.
ENIXの第1回エンターテインメントホラー小説大賞受賞作. いわゆるゼロサムゲーム的な話としては自発的だがあまり実感なくゲームに参加し,
実際に死に直面して心境が変わっていく辺りの描写に独自性があるのかな.
心理的に追い込まれていく様子の畳み掛け方などはオーソドックスだとは思うがきっちりかけていて読み応えもあり, 良かったと思う.
ただしせっかく考えたゲーム設定なのに, あまりポイントのやり取りの駆け引きを味わう内容ではなく, 頭を使って楽しむという点では物足りないのと,
「兆候」が後から見て感心できるようなものでない辺りが残念だった.
その他構成的にはそれぞれの参加背景を最初に全部並べたため話が動き出すまでしばらく時間がかかり, 冒頭部分の魅力がイマイチだったのがきつかった.
- 1[3/2] 乃南アサ/女刑事音道貴子 花散る頃の殺人(新潮文庫)
- 機動捜査隊所属バツイチ刑事の音道貴子をめぐる短編集.
あまり大きな事件にならないような話題を軸に彼女自身の問題も絡めながら描いている.
あまり重くもならず, 一方で変質者や世代間ギャップなどで悩んだりする姿がいい感じ.
インパクトのある内容ではないと思うが, 凍える牙を読んだ上で読めば問題はないか.
頑張れおっちゃん.