読書履歴2002年5月

新刊21+古本1冊+再読1冊 = 合計23冊

21[5/31] 林トモアキ/ばいおれんす☆まじかる! 2.恋の呪文は修羅の道(角川スニーカー文庫)
スニーカーの受賞作にしては珍しくかなり短い間隔で2作目が出た. 同じキャラクターの流れの中で対戦相手を変えることにより主題を少し変えており, そういう意味では同じ作品の単なる2匹目のドジョウになっていないところは評価できると思う. ただし消化の仕方としてはやっぱりちょっと物足りないなぁ. 面白ければ気にしないという手もあることはあるのだが….
20[5/31] 林トモアキ/ばいおれんす☆まじかる! 九重第二の魔法少女(角川スニーカー文庫)
学園小説大賞の優秀賞作. さくさく進んでさくさく卑劣でさくさく仁義でさくさく学園で楽しいことは楽しいのだが, やや場面ごとの書き込みが不足で流れがかくかくする印象(ややスムーズでない)と, キャラの性格に寄りかかって内面の掘り下げが物足りない印象がした. や〜さんだったらもうちっと任侠道を突き進んでもらえるとうれしいのだが, や〜さんというよりはやっぱり近頃の暴力団なのかな. 卑劣度と仁義度がやや場面によって都合よく使い分けられてしまっている印象もあり. 角川の新人賞としては久しぶりにそこそこ売れているようでシリーズが続いているので, 軽快さを崩さないようにしつつその辺の柱をもう少ししっかりさせてもらいたい感じ.
19[5/30] 彩院忍/リバースド・ヘヴン 狼牙めざめる(角川スニーカー文庫)
うーん. 設定そのものがやや肌に合わない感じ. ってゆーか, せっかく空に上ったら自由に飛びたいという意識を持つやつは俺だけでなく, 決して少数だとは思わないのだが, バトルばっかりやってちゃあねぇ. もったいないと思わないんだろうか.
18[5/29] 高瀬彼方/カラミティ・ナイト II(ハルキ文庫)
全国5万人の優子ファンの一人として待ってましたとも, はい. 今回もおいしい役柄でおいしいイラストでグッド. で, 話の方は三十人衆側の登場人物をもうちょっと掘り下げると味が出たと思うのだが, という感じ. なんかサイコにはまりそうなキャラが出てきたのでどんどんいじめてつらい場面に陥らせてあげてください. しかしこんなのろのろだと, どんどん馬が過去になっていくぅ….
17[5/28] A.マクナブ/クライシス・フォア(角川書店)
ビンラディンが黒幕のアメリカ国内テロに関するイギリス秘密情報局の下っ端の話だが, 8月末に9月発売予定リストに入っていたのにもかかわらず, 発売時にはちゃっかり帯に「緊急出版!」の文字が. まあいいけどさ. ブラヴォーツーゼロですっかり有名になった元SAS隊員の作者だけに細部までリアリティに凝っているというか非常に緻密. ただしその話をしているうちにかなりページ数を食って話が動くまでだいぶかかるんだよな. フィクションと期待して読むとちょっぴりまだか〜?という気分になる.
16[5/25] 藤原征矢/クールフェイス 5.ラストフライト(ソノラマ文庫)
確かにそれまでの人間の価値観を一変させる体験だとは思うが, 「生きるための地球環境改変」, 「生きるための殺し合い」だと「元々大勢が思っているもの」を簡単にひっくり返すのは至難だろうなぁと思うわけだ. 卑小な権力争いとかその煽りの地球破壊とかは分かりやすいのだけど, そのあたりを詰めずにまとめて閉じてしまっている感じがするあたりがやや欲求不満. それからラスト前の手を繋いでみんなの過去を一緒に回顧するシーンはきっかけが自発的でもなく不測の事態でもなく, 一歩間違えると半強制からしゃんしゃんみたいでややしっくりこない印象. 劇的というよりなんか浮いているかなと. これでシリーズは完結だが後半は特にだいぶ政治哲学臭の強いライトノヴェルズとしては地味な話ではあったがよくまとまってはいたので, その分ちょっと惜しいなという印象が残ってしまった.
15[5/22] 宮部みゆき/天狗風 霊験お初捕物控 二(講談社文庫)
オカルトな要素を取り込んだ時代推理ものだが, 別に派手なサイキックなアクションがあるわけではなく, 女性を主人公に据えて江戸時代の風俗人情をベースにあくまでも心理を深く掘り下げた描写がメイン. そういう意味では本作もじっくりそれぞれの登場人物の人情の絡み合いと風俗を楽しみながら読むのがベター.
14[5/20] 酒見賢一/童貞(集英社文庫) 小説というより不要な肉をすっかりそぎ落とした説話伝承みたいな語り口で紡がれる話は極端な女尊男卑な邑の男性性に目覚めた少年の話. それだけにシンプルに骨のあるストーリーが伝わってくるかなと. 酒見さんらしい作風が出ている典型的な作品という印象で, 人類太古の歴史をベースにちょっとウィットを効かせた記述がグッド.
13[5/19] 庄司卓/トゥインクル☆スターシップ 2.お前が一番, 凶暴そうだ(ファミ通文庫)
ようやく出た庄司さんのスペオペ新シリーズ. 女の子たくさんに男一人でお約束の展開がぞろぞろなこてこてな部分とSF的な設定を混ぜて宇宙でラブコメという感じ. ちょっとキャラ設定に違和感と既視感がある部分があるが, 星くず英雄伝のこてこて度とヤマモト・ヨーコの女の子達のノリが大丈夫なら楽しめそう. ただし片鱗はちらちら覗いているがSF的設定がヤマモト・ヨーコのスタート時に比べるとあまり鮮烈に効いて来ていないのでその方面では物足りない部分がある. この作家なら説明だけでなくキャラの軽い台詞や動きで読ませることが出来るはずなので今後に期待. しかしイラストがかわいいのはいいがカットごとに年齢がばらばらに見えるなぁ.
12[5/19] 庄司卓/トゥインクル☆スターシップ 1.☆も名前の一部です(ファミ通文庫)
11[5/18] 清水文化/気象精霊記 5.思惑違いの流星豪雨(富士見ファンタジア文庫)
まー虚実いろいろと詰め込んだという感じ. 今回はあんまりエネルギー開放(?)してくれなかったのでちょいとさびしいが, まあ楽しめた. でもこんな風にいくのかな?
10[5/16] 中井紀夫/イルカと私が歩く街(EXノベルズ)
中井さんらしいちょっととぼけた会話とやわらかい雰囲気にしっかりしたSF設定で, 気軽に読める. OLが主人公で少女漫画の岡野さんをイラストに起用しているあたりも効果的かと.
9[5/16] 上遠野浩平/ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト(電撃文庫)
久々のブギーポップの新刊は, なんか青春してるなぁ. 例によって王道からははずれた醒めた感じの視線が今的で, やっている中身が現実と乖離していてもなんとなく感情が移入できてしまう微妙なバランスの上に成り立っているような感じ.
8[5/15] 若木未生/メタルバード I(デュアル文庫)
若木さんのスペオペ新シリーズ. といってもまだ登場キャラクター紹介という感じで, 話が動き始めたところで終わってしまった. 今から読むならそろそろ出るはずのIIが出てからまとめてでも良かったかも.
7[5/14] 宮部みゆき/人質カノン(文春文庫)
現代ものの短編集. 推理の要素を適宜混ぜながらも単純に解決とかそういうのではなく, 次の一歩を踏み出す時のきっかけと心の動きを掘り下げるところがやはり宮部さん. 半分近くがいじめ関連の話題とうことでやや重めだが重さ負けしない佳作と思う.
6[5/11] 廣井脩/流言とデマの社会学(文春新書)
災害時などに一気に広がるデマと, 知り合い同士での口コミなどでじりじり尾ひれがつきながら広がっていく流言を実例を多く並べながら整理してある. 本質的に需要に対する情報の不足が非常に大きな影響を与えるということで, やはり慌てずに信頼の置ける情報を出来るだけ迅速に手に入れましょうということだよね.
5[5/10] 山之口洋/オルガニスト(新潮文庫)
ファンタジー小説大賞受賞作の文庫化だがだいぶ変わっているらしい. 凡庸な天才の1人称で語られる天才の中の天才ということで, 揺らぐ気持ちと音楽に対する情熱,信念がくっきりと描かれていてそれだけに痛い. 以前NHK-FMでラジオドラマ化されているため話の大筋は知っていたが, オルガンにまつわる詳細な描写や話の展開にまつわる生医学のネタ等はやはり本でこそと思う. ファンタジーノベル大賞の作家は不遇な人が多いが, というのか賞をとったところで終わってしまうのかもしれないが, この人はその後も作品がぼちぼちと出ている. 楽しみだ.
4[5/7] 岡本賢一/傭兵グランド 3.クレイジー・ウォー(ソノラマ文庫)
やっぱり岡本さんは擬人化動物やなぁ. AIだけど. 結末に向かって話がころころ転がっていくのはいいが, なんか予定調和な印象が残らなくもない. …かな. 最後にそんなのが出てくるってのがやっぱりオチとしては問題になるのかな.
3[5/5] 宮部みゆき/R.P.G(集英社文庫)
ネット上のバーチャル家族を題材にしたものだが, ネットワークに関するテクニカルな事はミステリーにはまったく関係なく, 完全に実際と架空の家族間の問題として取り扱っている. 宮部さんのネットワーク知識のなさ所以でもあろうが, それだけに逆に登場人物の心を直接的に扱って掘り下げているのが良いと思う.
2[5/5] 秋田禎信/魔術士オーフェンはぐれ旅 我が館にまどえ虚像(富士見ファンタジア文庫)
本編もいよいよあの人が帰ってきて佳境でしょうか. 強力キャラの登場が続いたせいか, 準主人公のクリーオウやマジクの扱いに不満を感じないわけではないが, 主人公がしっかりいて, 端役に成り下がってもキャラがしっかりしていればそれはそれでいいのかもしれない. 各キャラが自分の味方で考え, 流れが噛み合い始めたところなのでクライマックスに向けて頭の整理もしておいた方が良いかも.
1[5/3] 秋田禎信/魔術士オーフェンはぐれ旅 我が庭に響け銃声(富士見ファンタジア文庫)