笹本祐一さん

作家/シナリオライター.
現代と宇宙をつなぐスペースオペラを好んで書いているようです. 主人公は高校生あたりが多く, 突然の地球外の高度な文明との接触にも, 多少は動じながらも体当りしていく彼ら彼女らの心情描写の構成とバイタリティが, この作者の作品のウリでしょうか. この構成の善し悪しが傑作と佳作の境かな, と私は思っております.
全般的に技術的(テクニカル)な面ではかなり細かい描写もあり, 特に地球などでは時代にのったリアリティのある描写をします. 特にバイクが趣味だけあって, このあたりの描写は特に詳しいです. もっとも 必然的に古い作品になると, 一世代前というイメージが強く感じられてしまう 場合もあります.
科学的(サイエンティフィック)な面では初等物理から出ることはあまりなく, 先端的なことも言葉は出てくるものの, 深く踏み込むようなことはしていません. 通常地球の科学を遥かに凌駕しているとして出てくる宇宙人たちの宇宙船関係 の描写も, 作品に登場する高校生たちが感じたイメージから大きく出ることは ないのではないでしょうか.
これらの技術設定に関する解説部分はこういう話には不可欠な一方, 通常この ような部分の記述が冗長になると作品がつまらなくなるのですが, 笹本さんの 場合はこの点は非常にうまいのではないかと思えます. 基本的に大きくは外さ ない作家さんでしょう. 最近の本格SFがとっかりにくくて, あまり読む気が 進まないという方は, SF考証という意味では甘い部分もあるようですが, このあたりの小説で気楽に気分転換してみるのもいいかもしれません.
当初は良く街が破壊される, ドタバタ系がめだったのですが, 最近は割とおとなしくなったかな?

バイクの他, 飛行機系は元々好きなようで, こちら系の描写は詳しいです. それに加え, 最近はよくロケット打ち上げを見に種子島や内之浦まで行っているようで, (M-V-3(のぞみ)で10 回目らしい), すっかり宇宙関係にもはまってしまったようですね. 星のパイロットはまさにその産物のようです.
一方でコンピューター系はあまり強くないようで,かなり最近まで手書きだったとか. でも最近はネットワークにもあちこち繋だしたようで, ここももうバレてるかも?(^^;;

シナリオライターとしてはヴィナス戦記の他, エリアルコミックによると, まんがはじめて物語, ダーティペアなどもやっていたようですが, 良く分かりません. 最近はこちら系の話は聞きませんね.

'99年に星のパイロット2彗星狩りが国内長編部門で星雲賞を受賞しました。