ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : 番外編II

対トルコ要塞! リーガースブルク&ホッホオスターヴィッツ(オーストリア)

2005年春

[キリスト教圏/トルコ]
中世以降のトルコ隆盛期, オーストリア南部はしばしばその侵入を受けたため, 南東部を中心にそれに対処するためのいくつかお城が残っている. Steiermark州Graz(グラーツ)のSchloßbergは名前の通りかつて城が存在したが, ナポレオン侵攻時に破壊されてしまい残っていない. 現在残っている中では, Graz東部のRiegersburgの要塞と, Kärnten州北東部, Friesachの峠南にあるLaunsdorfのHochosterwitz城が双璧かと思われる. どちらも城以外周囲にめぼしい観光地がある訳ではないので, いずれも他の外出のついでに見学をした.

オーストリア全体地図

Riegersburg(リーガースブルク城)

周辺マップ
[谷間の奥に]
Thermenland線のHatzendorf駅北から西へ伸びる畑の広がる谷間を入っていく間, ずっと正面の小山の上に聳えているのがRiegersburgのお城だ. ただし駅から8km近くあるため, ちょっと遠い. 川の南のむやみにきれいな自動車道路ではなく, 北側の畑の中の道を自転車でとろとろ走ってゆくと, ようやくお城が近づいてきて自動車道路と合流し, 人口1000人に満たない小さな村のロータリーに出る. 自動車道路を少し北へ折れ, すぐに左へ更に坂をえいやと上ってゆくと, Riegersburgのお城への上り口へ到着だ. 歩行者はここから坂を150m程上る. その前に山の西側の狭い歩行者自転車道路を入ってゆくと, 森の切れ目から目の前に岩壁が現れて, その上にお城が建っているのが見える.
Riegersburg
比較的緩い西側斜面とは対照的で, 「キリスト教圏最強」の名が伊達ではないことが実感できる. そのまま山の北側へ抜けると自動車用駐車場があり, ここからはケーブルカーで山頂へ上がることが出来る. この程度でも案外横着して上らない人は結構いるから, それなりに使われているのかも.
[ワインは大事な収入源]
城南側の歩行者用上り口へ戻り, 入口脇に自転車を止めて快晴の中, 結構急な坂をてくてく上っていくと, まもなく城西側に伸びる頂上大地に出る. ここは一面ワイン用葡萄畑になっていて, 両側に葡萄の木々が並んでいる. 先ほど通過した城の上り口脇にはしっかりワイン販売の土産物屋もあったりする. この辺りに限らず, かつては修道院や病院など, あちこちワインを作ってはその売上げで収入を確保していた訳だ. 正面に城を見ながら緩い坂をもう少し上ってゆくと, 最後にレストランがあり, その脇から城へと入る.
[名物魔女博物館]
しかしこの「キリスト教圏最強」の要塞をローカルに有名たらしめているその原因は, その強固さではなくて, 城内にある魔女博物館であるようだ. ここの城はかつて, 魔女狩りの拠点となっていたのだ. 城の中庭への入口に土産物屋があり, そこで城内見学のチケットを購入して中へ入る. 売り子さん魔女衣装ですか? ご苦労さん.
城内は魔女博物館と城内展示の二部に分かれているが, まずは魔女博物館から. ここのお城は一応ガイドツアーがあるが, ガイド無しでも展示を見ることが出来る. もちろん説明はドイツ語だけだが. 一応内部は撮影禁止だ. 最初の部屋へ入るといきなりあるのが魔女裁判の再現部屋と蝋人形. 続くのは「魔女」の牢獄に, 鉄の処女を始めとする拷問道具(後から来た家族連れの子供が親に, 「これどうやって使うの?」などと聞いていた), まことしやかに書かれた, 「魔女の飛行経路や集合場所」の図に, 最後は近隣各集落で「捕まった魔女/魔術師」の数を年毎に掘った石版. あるわあるわ, 今だから苦笑いできるけれど, これだけ捕まって殺されたとなると(820人! うち300人火あぶり!), 結構シャレになっていない. キリスト教史の汚点の一つというべきか, ヒステリーの教訓というべきか.
[城も魔女狩りの歴史]
一度中庭に出て, 今度は城内展示へ. 一応対トルコ戦要塞ゆえ, それっぽい展示もないわけではないのだが…やっぱりなんか魔女狩りの歴史かもしれない. それはともかくとして, この城の展示はなにやらやけに演出が凝っている. みょ〜なBGMが流れていたり, 照明がぱらぱら切り替わったり, そしてやっぱりあちこちに頻出する蝋人形. まあ確かにインパクトがあって分かり易いのだが, なんか出てきた後印象に残っているのは蝋人形ばかりという気も(苦笑). よくやるなあと思いながら最後の部屋へ来ると, ご丁寧にデザイナースタッフの表示一覧が. あはは, 狙ってやっていたらしい. まあ面白かったから許す.
[辺りを見渡しながら一休み]
城から出て南側のレストランで一休み. ここはセルフサービスで, レジで会計を済ませて, テラスへとトレーをもって出る. 城同様このレストランも西側岩壁沿いにあるため眺めは抜群だ. この辺りはもう高い山はなく, 100-200m程度の差で緩やかに起伏する丘陵地帯が続く. 丘の上は林が広がり, 谷下は農村地帯だ. 山がちの国の中で北東部ドナウ〜ボヘミアの平原地帯とも違う, 東部Thermenlandの丘陵地帯は一般的な観光地とは無縁の「等身大の田舎さ」が魅力かな.


参考


Burg Hochosterwitz(ホッホオスターヴィッツ城)

周辺マップ
[難攻不落の城塞]
オーストリア全国的にはRiegersburg以上に知名度のありそうなのがこちらのお城. 860年代の当初の建築物以降, 何度か所有者が変わりつつ, 拡張されていった. 谷間に立つ150mの小山の上に建つ城へは, 斜面につけられた道を14のゲートを潜りながら上らねばならず, それぞれのゲートには敵の侵入防止用にさまざまな細工がなされている. さながら日本の山城と似通った雰囲気もあり, そのあたりも日本人には魅力的なところかも.
[列車から, 道から]
この城はKlagenfurtからBruck an der Mur経由Wienへ向かうSüdbahnの車窓からも東側(右)に望むことが出来る. St. Veit an der Glanからカーブを描きつつ高度を稼ぎ, Launsdorfへ到着する直前に緑の谷間にでんと現れる.
Launsdorf-Hochosterwitz駅で下りると, 小さな集落を作る駅前の道を南へ少し戻る. すぐに道路が左へとカーブを切り, 集落を抜けると, 正面にでんとHochosterwitzの威容が目に飛び込んでくる.
Hoch Osterwitz
道路を一本渡るともう後は畑の中をいざ城へ! 間近で見るとやはりなかなか迫力がある. 道路は城の正面で右側へと迂回してゆき, 城の南側へ出たところで城への取り付き道路の分岐がある. ここから坂道になり, 城の裏側をてくてく上ってゆくとやがて駐車場に到着, 一番奥に土産物屋と料金所がある. 駅から40分程度, 歩く人にはほとんど出会わなかったが, バイクで上がっていく人が結構いたのと, 団体バスで来る人がかなり多かった. Riegersburg程ではないにしろ, やはりアクセスはあまりよくないが, 団体の量が知名度の差か.
[いざ, 潜らん]
ゲートで7Euro払っていざ上り坂へ. ここではゲートの中にやはりケーブルカーがあり, ゲートで別料金(4Euro)払えば, 頂上まで楽に上ることが出来る. しかし, ここは何しろ城よりむしろ上り坂の14のゲート自身が見物なのだから, いくら下りで見るからといって, それを上りでスルーしてしまったらやはり面白くない. …かなりの人が使っていたようだが.
14のゲートにはそれぞれ仕掛けがあり, これが落とし穴だったり落とし戸だったり, 跳ね上げ橋だったり, 矢を射るスペースだったり, それぞれ門に名前と解説がついていて興味深い. 片側は絶壁もう一方は崖下, 正面は仕掛けで上から矢, というのはあまりぞっとしないシチュエーションだよな. 結局破られずに役目は終わった訳だが, 実際見ればその気合の入り具合(?)はよく分かる. 何度か斜面をターンして全ゲートを潜り, ようやくてっぺんへ. 崖下側は基本的に壁がきちんとあるが, 合間合間から見える谷の景色はなかなか素晴らしい.
[小さな博物館]
城の中庭はテラスになっていて, 食事などが出来る. なにせ上ってきて暑いところ, ビール一杯…にはもってこいかも. 建物には土産物屋と小さな博物館があり, 後者はガイド無しで自由に入れるようだ. という訳で中へ. 基本的に武器や道具などの展示がメインで, こじんまりしている. 一応ゲートの模型などもあったことはあったが, さすがにRiegersburgと比べるとかなりシンプルだ(笑). 前の団体さんを抜かすに抜かせず, 一つ後ろの部屋をついていく形にながら, 20分くらいで全部見られる程度だ. まあお城そのものの見学のオマケみたいな感じか. もちろんここもドイツ語だけ.


参考


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