ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 11

ぷちアルペンの中にぬっと鉄鉱山, アイゼンエルツ(オーストリア)

2004年5月30日(日)

[行程プラン : 衝動ハイキング]
今回の外出は本来は予定になかったのだが, 金曜日にMariazell関係で辺りの地図を眺めていたら, お隣さんのここが目に入り, 突然行きたくなってしまった. 絶好のハイキング日和という天気予報だった上に明日は祝日で休みという条件が揃い, どうせ近いし, ということで日帰りでぶらりと. ここはまさに名前の通り, 鉄鉱(Eisenerz)の掘り出されていた山のあるところで, 山肌に間断なく刻まれた階段状の道路が周りのアルペン気分の岩山に囲まれて異彩を放っている. ローカルに見ても観光地といえるかどうかぎりぎりで全国的にはほとんど知名度などなく, ましてやわざわざ海外から来る人などまずいないだろうが, 昨年6月に職場のハイキングで行った山のすぐ隣にあって頂上からちらりと見えていたのが印象深く, 一度こなくてはと思っていた. 同時にEisenerzから"Eisenstraße"を北へ抜けたHieflauから西のSelzthalへ向かう鉄道路線は景勝路線として名高いので, 一度乗ってみたかったということもあった.

中欧全体地図
行程マップ

[Leoben → Eisenerz : 意外に使われている]
現地へはレオーベン駅(Leoben Hauptbahnhof)からバスを使う. 日曜はいつもの半分くらいの本数だが, 結構地元の人が使っており, 一時期は20人くらいの乗車. 観光で乗る田舎路線にしては破格(?)の賑わいぶりだ. さすがに終点前でほとんど降りていったが. バスはLeobenからスキー場の町Präbichlまで九十九折を含めじりじりと700m程上り, この鉄鉱山, Erzberg(1465m)の真横に出る. ここから今度は谷を回りこみながら一気に500m高度を下げ, たどり着いたふもとの町がアイゼンエルツ(Eisenerz). 終点のBusbahnhofは, バスプールみたいなところかと思ったら道路の両脇に2台分ずつのスペースと一応屋根つき待合所があるだけだった. ちょっと拍子抜け. というか一瞬場所が分からず, 慌てて地図を広げる.
なお, バス乗車中結構MTBで行き来する人々と遭遇した. このLeoben-Hieflau間は割と手ごろなサイクリングコースらしい. このPäbichlへ上り下りするところだけ少々きついが, アルペンコース入門としてはいい道なのかもしれない.
[Eisenerz Bahnhof : 既にほとんど使われていない]
まず車道から南へ, 坂の一番下の細い川沿いまで下りるとそこが旧市街. 小さいがやはり石畳の狭い路地の両側に並ぶ家々がきっちり残されている. 例によって日曜で観光客も余りいないところということで, ちらほら観光客とウィンドウショッピングをする人, そしていくつか開いているGasthausでわいわい食事をする人々以外は, 基本的に閑散としている. ここから川沿いに北へ上がっていくとトンネルから出た鉄道線路と平行し, すぐにEisenerz駅へ. とはいってもここの駅, 既に通常の旅客営業はされていない. Leobenから北のHeaflauに抜けるこの路線(Eisenerzer Bahn)は, 通常軌ではオーストリア最高傾斜(7.1%)を誇る路線, かつその鉄鉱山の真中をぶち抜くトンネル路線を含むということもあってか, たまに観光客用記念運転がなされるらしいが, おそらく鉄鉱山の閉鎖とともに客もいなくなったのか, 駅には「1999年よりこの駅は無人」という張り紙とLeoben駅の時刻表が貼ってあるのみ. 駅附設のカフェでは地元の人か店員か知らないが, テラスで2人のほほんとだべっていた. なお北側Hieflau方面の路線は一応使われている形跡があり, おそらくその臨時営業の時などに列車を引き込むのだろうか. 一方でLeoben側は途中のVorernbergより南は草ぼうぼう. もうまったく使われていなさそう.
[Eisenerz : アルペンな山に囲まれた]
この町は四方がきれいに岩山に囲まれている. 西側にはKaiserschildの稜線が伸び, 北にはSeemauerの岩壁が立ちふさがり, 東にはPfaffensteinの岩峰が聳え立ち, 南にはEisenerzer ReichensteinがErzbergの後衛のように控えている. おいそれとチロルやスイスアルプスを見にいけない身としてはこの程度でも十分わくわく. 別に観光用ロープウェイがある訳でもなく, ほいと上れたりはしないけれど. そんな山々に囲まれつつ, でもやっぱり中心は鉄鉱山. いや目だってます.
[Rundwanderweg : どの道?(汗)]
Eisenerzの北西約3km, Seemauerの岩壁の麓にレオポルドシュタイナーゼー(Leopoldsteiner See)という湖があり, 駅を後にして次はこちらへ向かう. 地図をみると車道のある谷の両側少し上にRundwanderwegなるEisenerz一周ハイキング路と思しきものがあるので, これを行ってみることにする. なんとかそれらしい標識を見つけて約100m程上ると, 谷の向こうのKaiserschildがぐっとよく見えて気分がいい. 地図に書いてある合流するはずの道が良く分からないまま行くと, 最終的に林道に出てともかく道があっていることは確認(苦笑). そこから今度は斜面を一気に150m下りたところが湖の東端. これまた危うく標識見逃すところだった. ん〜, しばらくハイキングしなくて鈍ったか? 道路整備や標識が不足なのか?
[Leopoldsteiner See : 気軽な憩いの場]
ハイキング路の途中ではMTBで上がってきた2人組と, そんなところ沿いに住んでいる(!)すごい家の人数人以外には会わなかったが, 斜面を下りていくと下から結構人の声がする. 湖畔へは車で直接入ってこられるので, ここまでは遊びに来る人が多いらしい. この湖は約1.5kmの長さで北側は湖畔からすぐ斜面になりそしてすぐ600m近い岩壁へと続いて, 目の前にどーんと聳えている. こちら東端が上流側で, 流れ込む小川の水はすばらしくきれいだ. 湖はこの透明な水と白っぽい砂利の岸辺から, 深くなるとエメラルド系の色へと変わっていく. こちらもまずまずきれい.
Leopoldsteiner See
湖畔にはGasthausがあり, 休憩というよりビール片手にのんびり過ごしている人が結構いる. そして多少ある砂利スペースでは寝ている人や水遊びしている人までいて, 賑わっていた. まあLeobenから車で1時間でこられるのだから, 自家用車がある人にはお手軽な場所なんだろうな. 湖北岸と岩壁の間, 岸沿いにハイキングコースがあり歩けるので, こちらを歩いて西端まで行く. 犬を連れている人が結構いてちょっとびっくり. みんな車で連れてくるのかな. 結構現地の人も多いらしく, 顔見知りにここは"Liebsten Berg"なんだ, なんていいながら挨拶しまくっている人がいたが(ということは挨拶されている人も地元民), 結構気に入ってリピーターしている人も多いんじゃないかな.
[Rundwanderweg(西) : またも?]
市街への帰りはしばらく車道に出て戻り, 途中で西に外れて行きと反対側のRundwanderwegに入る. この道の入口は民家の間を入っていくもので, しかも入口部分はしっかり下草が生えていて周りと区別がつきづらく, 標識をしっかり探していないと見落とす. こちらでは途中のベンチでだべっている親子とおじさん一人に遭遇. こちら側は全体的に森林の中が多いが, ぱっと草地に出た時に正面に見えるPfaffensteinの岩峰は見事. あと, 先ほど歩いた反対側斜面の道沿いにある数軒の家が目立っている. 見晴らしがいいえらそーなところに住んでいるけど, 車がないととても行き来していられないよね(苦笑). 駅の手前で線路脇に降りて再び旧市街へ.
[Erzbergwerk : 15時まで]
旧市街から今度は川沿いに東へ向かう. 小川脇の小道で, 水音と多少の風が涼しげでいい. 道沿いに鉄鉱石の簡単な標本と解説みたいなのが並んでいたが, みんなドイツ語だし, 読むのはパス. 教会脇を抜けて1kmちょいくらい歩くと, Abenteuer Erzergという, 要するに鉱山見学ツアーのセンターにたどり着く. とはいってもこの時点で16時過ぎ. 途中の標識で気づいていたが見学は15時までだそうだ. ツアーごとらしく, しばらくその辺りでうろついていると, バスで見学の終った団体さんが下りてきた. 中からはオレンジのカッパを来た人々がぞろぞろ. どうやらツアーはこのカッパとヘルメット着用らしい. へえ. せっかく来たのに鉱山内部を見ないのは, ちょっと惜しいことしたかな? でもガイド聞いてもドイツ語分からんか(苦笑).
[Rundwanderweg : 残り時間で]
そこから車道に上がり, バス停まで戻ると16:40. バスは18:20の予定なのでまだ時間はある. ということで, 最初歩かなかった東側ハイキング路の南半分にもう一度上りなおして歩く. 100mを毎度上り下りだから, ちょいと疲れてきたが…. こちらはほとんど林道沿いなので, MTBで走っている人や休んでいる人, 押して上がってくる人とそれぞれ遭遇. 森沿いが多くあまり眺めの利くところは多くなかったが, こちらからはErzbergが近くて, 下の市街の町並みや後ろのEisenerzer Reichensteinの山共々良く見える. この時間になると陽が北西に回るため北側斜面が照らされてくっきり見え昼とはちょっと違ってまたいい眺め. 山は時間場所によってまた少しずつ違った見え方になるから飽きないね. 18時過ぎにバス停近くに戻ったが, まだもうちょっとだけ余裕があるので約10分程もう一度旧市街の広場のベンチまで行って休憩し, 本日のハイキング終了.
ところで今回は途中5回くらい主に子供から挨拶された. 観光客のあまり多くない町に現れた東洋人ということで, いかにもよそ者の雰囲気が目立ったのかもしれないが, 気分はいい(こんな小さな町でもやはり中華料理屋は存在するのだが). 言うまでもなくその他にも, 人の少ない山中のハイキングコースを歩く時は, すれ違う人にはたいてい挨拶する.
[Eisenerz → Hieflau : 貸切バス]
帰りは北側のヒーフラウ(Hieflau)へ抜ける. 平日はそれなりに本数があるのだが, 日曜は2本のみ. それがなぜか16:45と18:20と夕方. …どういう人を対象に運転しているのか良く分からないのだが, 今日は私以外誰も乗らず, 完全貸切. まあいいけど….
このルートは緑豊かな谷間を抜けていく道路. 線路と川が走るその谷筋を, 自動車道路は右に左に渡りながら約25分でHieflau駅に到着. いいルートなんだが町は寂れてるのかな….
[Hieflau → Selzthal : 隠れ景勝路線]
ヒーフラウ(Hieflau)からはゼルツタール(Selzthal)までは国鉄で移動. 3両編成のローカル線にはハイキングか登山の帰りのような人が何人かぱらぱら乗っていた. この路線, 標準軌のマイナー路線のためあまり知名度は高くないが, Enns川の峡谷沿い南岸に聳えるHochtorの岩壁を中心とするGesäusebergeの眺めは圧倒的.
Hochtor
夕方走ると南東の青みが濃くなった空をバックに西日が当たる岩壁が素晴らしく映え, 更に今日はちょうどタイミングよく上弦過ぎの月が岩壁の上に昇っていて, 思わず鳥肌立ててしまいそうないい眺めでした. ああ, Leobenに引き返さなくてよかった. 感じとしてはSalzburg-Bischofshofen線に似ているが, 鉄道マニアなら乗って損はないと思う. ハイライト区間が約15分程度とちょっと短いのと, ローカル線で本数が非常に少ないのが痛いが….

現地の行程

Leoben Hauptbahnhof dep 11:43 ÖBBバス820 5.6Euro
Eisenerz Busbahnhof arr 12:30
散策(Eisenerz旧市街〜Eisenerz駅〜ハイキング路北東〜Leopoldsteiner See) 12:30-14:10
散策(Leopoldsteiner See〜ハイキング路西〜旧市街〜鉄鉱山) 15:20-16:40
散策(ハイキング路南東) 16:50-18:00
Eisenerz Busbahnhof dep 18:20 Postバス921 3.3Euro
Hieflau Bahnhof arr 18:43
dep 18:53 ÖBB-R3554 ---
Selzthal Bahnhof arr 19:31

参考


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