ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 42

8月の新雪は秋の気配を運ぶ、エッツタール(オーストリア)

2006年8月15日(火,祝)

オーストリア地図
周辺地図

[突撃! ザ・日帰りチロル PART 3]
7月下旬の出かけられない時期に続いた猛暑は8月に入った途端パタッと終わり, 寒い日々とピリッとしない天気にハイキングも延期を余儀なくされていたが, 祝日の火曜はようやくいい天気になるということでエッツタールを訪問. 多くのハイキングコースを抱え滞在向きのエッツタールは出来れば泊まりがけでゆっくり行きたかったのだが, 他のチロル地方で当初予定していた日帰りコースは帰りも夜行になるため, 翌日の予定の都合により不可能となり, その日のうちに帰れるところということで, エッツタールへ向かうことにした. エッツタール深部のハイキングはホッホゼルデン, フェント, オーバーグルグル〜ティンメルスヨッホ, 谷東部に分けられるが, 今回はホッホゼルデン方面を選択.
今回も座席夜行ということで座席指定は無し.

8月15日(火)

[Ötztal → Sölden : 吐く息が…]
早朝のÖtztal駅へ降り立つ. もうまもなく夏至から2ヶ月. 5時過ぎではまだかろうじて東の空が白み始めているだけ. 少し屋外をぶらつこうかとも思っていたが, 0度すれすれ, 吐く息が白くなる寒さに堪りかね, 結局駅の待合室でバスまでの時間を潰す. 同じ列車で到着した少女二人組にベンチは占拠されてしまったので, 閉じた窓口脇に腰掛ける.
6:30にImstからやってきたバスは乗客がぱらぱら. やはりこちらの人, 朝一バスでハイキングに出かけるような人はあまりいない. …いなくはないけどね. 途中多少のハイキング客を拾ってバスはSöldenへ. 村中は細々と停留所があるのでちょっと分かりづらいが, とりあえず中心の郵便局前で降りる. 空にかかっていた雲は徐々に減っている感じ. うん, 予定通りかな.
[Sölden : ぶらぶらと]
Hochsöldenへ上がるリフトは9時からのため, 1時間半で上がれるなら歩いて登ってしまおうか, とも思っていたのだが, どうもほとんどが森林内の道の上に距離が結構あり, ここで体力使って上でへろへろでも虚しいのでやめ, 9時まで村をぶらぶら. といっても別にまだ店が開いている訳でもなく, ぼちぼち宿泊客の朝ごはんのためのレストランの明かりくらいはついているという感じ. 車道沿いからはSöldenのシンボル, Nederkogelが既に頂上付近に雪を被って構えているのがよく見えるが, 谷が深いために全体的に山並の眺めはイマイチ. そこで川の対岸へ渡ってみると, ロープウェイで上がれるGaislacher Kogelをはじめ, 西側の山々の眺めが少しよくなる. もちろん車が通過しない分静かだし, 今回は泊まれないけど, 泊まるなら道路沿いよりはこちらがいいな(笑).
[Sölden → Hochsölden : いざ, 山へ]
昨晩夜行に乗る前に買ったパンで軽い朝食とし, 時間を潰した後, 9時10分前にリフトの駅へ. 既に2グループ8人くらい待っていた. 自家用車があればHochsöldenまで道路があるし, 実際Hochsöldenにも幾つか宿もあるのだが, バスがないのでイマイチアクセス悪いんだよな. 定刻1分前に係員が現れてチケット販売と運転開始. いえい, 本日9人目の乗客だぜ(笑).
リフトは時々草原や斜面に点在する宿の脇を抜けて行ったりするが, 基本的には森の中, あまり周囲の眺めはよくない. ただし真後ろは谷の反対側, 東側の山々の稜線が綺麗なので, ちらちらと振り返りながらちんたら20分の上り. やがてHochsöldenのホテルの脇を抜けて, 頂上駅へ到着.
Hochsöldenは既に森林限界の上. ただしもう8月中旬しかも先日までの冷え込みのせいもあってか, 花はほとんど終わってしまい, 草原の緑も枯れ草が混じった少しくすんだ色になってきている感じ. しかし見上げる斜面は一面草原に最後は急になって岩壁へ続くというまさに絶好のスキーゲレンデ. 標高も2000m越えるし, 眺めは素晴らしいし, 冬は賑わうのだろうな.
ここからは少し離れたところにもう一本リフトがあってもう300m程登れるのだが, 森林限界の上なら歩いても眺めもいいし, ということでこちらは使わず歩いて登ることにした.
[Hochsölden → Rotkogelhütte : 直登]
標識に従って登山口へ入ると, これが案外急である. 左手に浅い谷を挟んで向こう側をリフトが走っているが, それと平行に斜面をまっすぐ登るため, どうしても少し急になる. 東からの朝日が既に当たっているが気温は低い中, あっという間に汗が噴出す. でもまあ別に危険があるところではまったくないし, なによりあっという間に周囲の山々と高度が近づいていくのが快感! さくさく登りましょう! それにしても登れば上るほど後ろに控えていた山並が顔を覗かせ始めて, エッツタールの本領を徐々に発揮し始めた感じ. この懐の深さこそがエッツタールの醍醐味なのであろう. もちろんチロルとしてはやや珍しい赤茶色の荒々しい岩肌が特徴づけるエッツタールアルペンの山々はそれだけでも素晴らしいが, 2800m辺りから上, 3000m級の連なる頂上付近は週末の冷え込み&悪天候で既に雪を被っており, 青空と雪と岩の対比が素晴らしく映える. お花畑もいいしスキーシーズンもいいのだろうけど, これもなかなか味があると思う. 谷の反対のSöldenkogelも頂上付近に雪を被り, とてもすっきりとしたいい佇まいだ.
道は途中でリフトの下を潜り, 先に斜めに次の目的地, Rotkogelhütte方面へ向かう. 今度はその隣のスキーリフト沿いに更に登っていく. なにせ一面草原で, スキーリフトが高度の目印にもなるので, どの程度歩いたかは一目瞭然. もちろんハイキングにとってはある意味目障りでもあるのだが…. だいぶ下から見えていたRotkogelhütteがようやく近づいてきて, 最後の上りをえいこらさ.

Rettenbachferner
そしてちょうど尾根にあるRotkogelhütte脇へ出ると, 正面にいきなり氷河が現れる! これは素晴らしい自然の演出だね. 思わず鳥肌が立ちそうなほど感動した. …立ち止まって急激に冷えて鳥肌が立った訳ではないぞ(笑).
このRettenbachferner(レッテンバッハフェルナー)はエッツタール一番手前の氷河. 夏も滑れる氷河スキー場もあるが, さすがに8月下旬はいろいろ問題があるらしく閉鎖中であった.

[Rotkogelhütte → Schwarzkogel : 雪山装備はアリマセン]
ここからはもう一上りしてSchwarzsee経由でSchwarzkogelへ向かう予定…だったのだが, なんとSchwarzseeへ向かう入り口に立ち入り禁止の標識が…. おそらく先週末の雪絡みの雪崩の危険とかだろうと上を見上げ, Rotkogelの雪は融けているのは確認して無視することにした. ここ通らないと予定が全部狂うし…. くれぐれも皆さんまねしない様に! 少しガレた斜面を登っていくと間もなくたどり着くのがSchwarzsee.
Schwarzsee
このSchwarzseeは標高2650m, 岩峰と雪の荒々しい世界の中にひっそりたたずむ美しい湖だ. さすがにここまで来ると空気もかなり冷たく, 上りでも羽織るものがないと寒い. しかしそれだけに逆に研ぎ澄まされた湖の美しさが際立つというか, 勝手に気分が盛り上がるというか. ほんと, こういう湖がみたくて毎度歩いているようなものだしね. 幸せ…. しかし対岸の, これから向かうSchwarzkogl 3016mはやはり頂上は雪の中. う〜参ったな. さすがに雪山上りの装備はないので, 雪の斜面を登る勇気はなし, というかむしろ下る勇気はなし. とりあえず取り付いてみたが, 3000m目前, 最後の100mでどうしても雪道を避けられなくなり, そこで断念. 残念…. でも隣のRotkogel 2947mと肩を並べた気分は爽快. 完全な満足とはいえないまでも, ここでも眺めは堪能できる. 向かいにはGaislachkogelの頂上駅がほぼ同じような高さに(まだ100mほど向こうが上だが), 奥にはTimmelsjochへと上がっていく道路が見える. あちらにも行ってみたいが, さすがに日帰りではどうしようもない. やはりこのバラエティの豊かさも, 3泊とか一週間とかハイキングしまくるのにベストなチロル, である所以なのだろうな. しばらく休憩してから湖少し上のコルまで戻る.
[Schwarzsee → Rettenbachkogel : 氷河の脇のレストラン]
ここからはHochsölden一帯の山々の南を深く切れ込む谷, Rettenbachtalへと下りて行く. やや急な斜面を一気に降りるとスキーリフトの麓駅二つがあるところへ出, ここからRettenbachtalの谷底を走る車道へ. 車道をしばらく歩いてRettenbach氷河の先端まで行く. この車道は夏場は有料道路として一般車も入れ, 氷河スキーをする人や氷河を眺めに来た人々がぱらぱらやってくる. そのもう一段下, 谷の反対側には歩道があるが, この谷上部はひたすらガレ場という感じ. 傾斜はきつくないが, これをSöldenの南から全部歩いてくるとなんか槍沢辺りを詰めている雰囲気になるかも….
という訳で到着したRettenbach氷河, ここも当然スキー場のベースで, スキーリフトとレストランなどの設備が並ぶ. この奥にもう一つTiefenbach氷河もあり, 同様の設備があるのだが, 道路脇の標識にこちらのレストランはクローズと書いてあったので, そちらへ行くのは諦めて, Rettenbachの方のレストランで昼食にする. 日が出ているとはいえさすがに寒いので, 食事は室内. セルフサービスのカフェテリア形式のカウンターで注文の品を受け取り, 料金を払ってガラス張りの窓から風景を眺めつつの食事に. グルメでない私には街中の高級レストランより, こういう眺めのような付加価値付の食事が何よりの楽しみ. お陰で少しのんびりしすぎた….
[Rettenbachkogel → Sölden : 東アルプス最高といっても]
食後, バスまで1時間弱で, このレストランからもう少し上にある, この道路の最高地点まで歩いて往復してくる. このGletcherstraße(氷河道路)の最高地点標高2800mは, ただの行き止まり, 別に何もない…. しかしぽつんと「東アルプスで最高地点のStraße(車道)」と標識が立っている. いったい何のためにここまで延ばしたのか意味不明だが, まさか二つ隣のKaunertalの道路, 2700mに張り合って無意味に延ばしたわけでは….
ちなみにここから隣のPitztalへはBraunschweighütte経由で越えられ, 一時は真剣にPitztal側から越えてくることも考えていたのだが, 当然ここも標高3000m近い峠, 急斜面は雪の中で, 私の装備ではとても歩ける状況ではなかった. 止めておいてよかった(苦笑).
ここからバスでSöldenへ戻る. ここのバスは有料道路を走る地元バス会社のバスで, 料金は通常のチロル州統合料金システムのものではなく, 国鉄のダイヤ検索からも出なかった. そのこともあり現地に来るまでダイヤが分からなかったのだが, 結構本数が走っていて助かった. 数人だけの乗客を乗せて, バスは一気に高度を下げていく. 標高2000mの森林限界付近まで来るとようやく緑が増えてきてそしてまもなく森の中へ. さすがに疲れて少しうとうとしかけたところであっという間にSöldenへ到着. 上の寒さと比べて
Söldenの緑はまだやわらかかった(笑).
さあ, 短い滞在で名残惜しいが, 駅へ向かうバスで帰るとしましょう! ちなみにこのバス, 乗った時は大入り満員だったが, ほとんどの乗客は谷の途中の宿に泊まっている客らしく, 駅まで乗ったのはほんの数人だけだった. 一人ばたばた日帰りなんて, 普通の人がやることじゃないよね….

風景にはとても満足だが, やはりここは腰を据えて滞在したかった. そしてここの魅力は晴の日に山上へ上がってこそ. もし機会があれば, 是非また天気のいい時に訪れたい.


現地の行程

8/15
(Sat)
Ötztal Bhf dep 06:30 PostBus4194 6.7 Euro
Sölden Postamt arr 07:32
Sölden 散策
Sölden dep 09:02 Sesselbahn
Hochsölden
5.5 Euro
Hochsölden arr 09:20
dep 09:25 徒歩 --
Rotkogeljoch Hütte arr 10:25
dep 10:40
Schwarzsee arr 11:05
dep 11:10
Schwarzkogel頂上直下(~2950m) arr 11:30
dep 11:40
Gletscherstraße合流地点 via 12:15
Rettenjochferner Restaurant arr 12:40
昼食休憩
dep 13:35 徒歩 --
Gletscherstraße最高地点 arr 14:05
dep 14:15
Rettenjochferner arr 14:35
dep 14:42 Ötztaler Verkehrs m.b.H
Bus
4.7Euro
Sölden Pltze arr 15:07
Sölden Gaislachkogelbahn dep 15:41 PostBus4194 2.0Euro
SonderticketWE
Ötztal Bhf arr 16:42

参考


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