ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 40

静かな山々はオーストリアの分水嶺(オーストリア)

2006年7月9日(日)

オーストリア地図
行程略図

帰国や出張などで, 少々間が開いてしまったが, 今年の夏は昨年の洪水で全てお流れになったチロル旅行の埋め合わせということで決めていた. しかしあいにくと, のんびり休暇を取って回る訳にいかない身分になってしまったので, 今年はたとえ天気が悪かろうと一日ずらしたり出来ず, 文字通りの週末旅行である. で, 早速今週は土曜日の天気が悪かったため, やむを得ず夜行日帰りを決行.
まずは今まで北チロルの訪問が少なかったため, LechとReutte経由Mittenwald/Seefeldを想定していたが, 後半カットでLechの日帰りとした. その代わり帰りの夜行列車にあわせ, Reutteへ出ずにBregenzへ出ることに切り替え.
座席夜行ということで座席指定は無しで行ったが, 夏休みスタート直後ということで, 少し早めに乗り込んで座席確保.


7月9日(日)

[Bludenz : 静かな佇まいの]
Lechへの通常の入口駅はLangen am Arlbergだが, Langenからのバスは始発が8時台と遅く, 東からの夜行では少々早く着きすぎ, 特にめぼしいものがある駅でも無いので, それならと先のBludenzで下車. それでもまだ時間に余裕があるので, Langenへ戻る時間を確認し, それからふらりとBludenzの町を散歩. もちろんまだ日曜の7時前なので, 通りはガラガラ. しかも昨日はチョコレート祭とやらがあったらしい. やたらとMilkaの旗とか横断幕とか….
しかしオーストリア西部を占めるVorarlberg州の平野部都市の一つではあるが, やはりライン川沿いの町に比べると, やや奥まっていて規模も小さいせいか, 商業的には少し寂れた印象を受ける. まあFeldkirchまですぐなのだから, 日用品はともかく, 買出しに出かけてもたいしたこと無いものね. ただし奥まっている分, そして以前行ったSchruns方面, Montafonの谷への入り口ということもあり, 周囲は山に囲まれていてとてもきれい.
[Bludenz → Zürs : 谷間から峠を越えて]
BludenzからLangenまでは列車でもいいのだがもうだいぶ乗ったので, 今回は谷下をバスで行くことにする. 駅へは戻らず, 始発のBludenz Postamtからの乗車は私だけだった. しかしその後ちょろちょろとお互い顔見知りらしい人々が乗り込んできたのを見ると, この辺りのグループでハイキングに行く日だったのかもしれない. 途中で一人遅れて, バス停へ向かって走ってくる人をお迎えに, わざわざ15mくらい戻ったのは御愛嬌. Braz辺りから谷脇の斜面を早々に上っていってしまう線路とは違い, バスは谷底付近の集落を右に左に. この辺りの村もリゾート滞在がそれなりにあるのか, 道路沿いには宿泊施設がそこそこある. 最後谷筋が狭くなり, 高速道路と併走して鉄道の線路をくぐるとLangenの駅前へ到着. 1分遅れだったがちゃんと隣に止まっていたいた1分接続のLech行のバスにみんなぞろぞろ乗り移る. このバスはちゃんと接続を取って出ると時刻表にも書いてあったしね. 焦ることは無い.
さて, 乗り換えたバスは今度は一気にトンネル&坂をArlberg峠方面へ上ってゆく. 左に見えるGruben Spitzeと手前のSchwarzer, Roter Turmの岩峰&緑の斜面が青空の下, 日の光を浴びて輝いている. 素晴らしい! Stubenの先, 九十九折の道で高度を稼ぐと, St. Anton側から来た道と合流し, 北のFlexenpassへと向きを変える. 左手の谷はもうだいぶ下だ. 奥に滝みたいのが見えるな. ちなみに現在いるArlbergの西, Flexenpassの南はライン川水系, Arlbergの東はInn川経由のDonau水系, Flexenpassの向こう側はLech川からFüssenを経由してDonauへ, Lechの北西側はBregenzeracheを下ってRhein川へ. 峠一つで流れる川が全然ちがってしまう分水嶺である. 工事のせいか片側交互通行で長い信号待ちをした窓付きトンネルを抜けるとまもなく最高地点, Flexenpass(1773m)へ. ここで数人ハイキング客が降りていった. ここからは緑の谷を緩やかに下りて行く. 間もなく到着の最初の村, Zürsで下車.
[Zürs → R&#fikopf : お花畑を独り占め!]
Zürs(チュルス)はLechの更に谷奥のスキーリゾートだが, まあだいたいLechとセットで語られる, らしい. お洒落な白壁の宿がぱらぱらと立ち並び, 両側の斜面にはスキーリフトが並んでいる. が, もちろん今はオフシーズン. 当然休業中の宿や, 改装中の宿もあり, スキー場の斜面には牛がのんびり. 今回のハイキングのスタートはここだ. 地図と標識を見ながら, まずは登山口へ. しばらくは作業道(作業車が入る)を歩く. といってもちゃんと両側はお花畑. まだ東側斜面は日陰が多いが, うまく日が差し込んできている部分などはカラフルに輝く小さい花々がとても愛らしい. あっという間にZürsの村は眼下になり, 反対側, 西の山々の岩峰に迫っていく. ちなみにそちら側には標高2200mの高原湖, Zürser Seeがあるのだが, このあたりまだ2000m以下の登山道からは見えない.
それにしてもやはり人が少ないのが気分がいい. 山小屋泊まりの人か, 2,3組すれ違ったが, 上りはスタート時に後ろにあっという間に引き離した二組だけで, 後は完全に一人旅. 30分ほど上って谷筋から裏へ入ると, 車の音もしなくなり, 完全に一人の世界.
Rufi Spitze
南北をRüfispitzeとTrittkopfに挟まれた高原地帯は日の光を浴びた, お花畑! いやあこれを独り占めできるのがチロルのすごいところ. 見とれますな.
お花畑の斜面を少し登ってゆくと, まもなくMonzabon Alphausへ到着. さすがにまだ時間が早く, 夫婦がテラス席の準備中. こちらとしてもまだ一杯のんびりする時間では無いので, 挨拶だけして通過.
車の入る作業道はここまでで, ここからはれっきとした登山道. 小屋の先のスキーリフトの下をくぐると, 後は一気の上り坂になる. 牛たちの間を一気にRüffispitzeとRüffikopfの間まで上がりきると, Monzabonseeは間もなくだ. 振り返るとSt. Antonの名峰Vallugaの後ろにPatteriolもその特異な山容を覗かせている. 後は緩やかなのぼりを少し歩いてMonzabonseeへ到着.
[Monzabonsee → Rüfikopf : 素晴らしい展望]
Monzabonsee(モンツァボンゼー)はRüfikopfの肩にあるような小さな湖だ. 湖そのものは取り立てて何かある訳では無いけれど, やはりバックの山々と組み合わせての眺めは素晴らしいの一言! さすがにこの辺りには何組か人がいた. もちろんRüfikopfへロープウェイで上がってきたのであろう.
ここからRüfikopf(リュフィコプフ)へはもう一上りになる. ロープウェイの到着時間と近かったのか, ちょうどぞろぞろ多くの人が降りてくるところだった. こちらの人は結構ロープウェイ往復だけでなく, 下りだけほいほい歩いたりする人が多いのだよね. スキーリフト乗り場の屋上だかが展望台になっていて, 裏から階段を上ると, 脇にある夏は使わないゴンドラ乗り場の建物の陰以外はいい眺めだ. ただし下のLechの村は角度的な問題か, 良く見えないが. 北のドイツ国境方面や東〜南東のSt. Anton, Samnaun方面もいいが, やはり素晴らしいのは Lechquellengebirgeの山々. レッヒ源流山脈とでも訳せばいいのだろうか? この辺りの山々はいずれも2500m級で目だった氷河等がある訳ではないけれど, きれいに岩の稜線と北側斜面の残雪が続いていていい感じ. その中に, 一際特徴的な山容で聳えているのがRotewand, Lech川の最上流Formarinseeの脇に聳える岩山だ. 特徴的な岩山らしく, 眺める角度でだいぶ眺めが違うとか. 予定より少々早く到着したこともあり, しばし眺めを堪能していたが, ぼちぼち雲が湧いて来たので, あまり眺めがさえぎられないうちに後半の行程へ出発!
[Friedr.-Mayer Weg : 谷を見下ろす花畑の中間道]
ここからはMonzabonseeの湖岸までは戻らず, 北側のもう少し高い尾根へ進む. すぐに道は東のKrabach SpitzeやStuttgarter Hütteへ進む道と分かれる. 更にZürsまで降りると5-6時間の行程で比較的人気のある道なのか, ぱらぱらと入っていく人の姿が見られる. 私はそこから分かれて北側へ向かう. こちらの道も時々と人がいる. やや急な斜面を一気に200m程降りると, 後は気楽な水平道…と思いきや, 結構小刻みなアップダウンがあってちょいと閉口. でもまわりの愛らしいお花畑や, 振り返るRüfispitzeの堂々たる姿にはやはり励まされる. 再びKrabach Spitze方面への道を分岐すると, そこからはようやく水平道になる. この道には名前がついていてFriedrich-Mayer Wegという. 由来は知らないが.
Friedrich Mayer Weg
この後だいぶ雲が増えてしまい, 岩壁は灰色の雲をバックにイマイチさえなくなってしまったが, 幸いそれ以上厚くなったり低くなったりする気配はなく, 雨は大丈夫そう, 少し安心. 約一時間半で下山口に到着. ここで一休みしていると, 一足先に到着していた団体さんに写真を依頼される. お礼についでに私の写真を撮ってくれたりする. 自分で自発的に自分の写真を撮ることはありえないから, 実際には年に数枚あるかだもんね(苦笑).
[ → Lech : 牛の間を抜けて ]
後は一気に下り坂, Lechの北側の集落, Ober StubenbachとUnter Stubenbachの間まで下る. ジグザグに降りていく道はややきつめだが, 足場はしっかりしているので下りやすい. 下から牛の鈴の音が聞こえてくるようになり, 森林限界を過ぎてもう少し降りるとまもなくTäli Almだ. もちろん放牧中の牛がわんさか. すみません通らせて下さいとこちらを向いてくる牛さんたちに御挨拶しつつ抜けると, 後は再び作業道となり, 緩い下りをちょい. なんだ, 案外簡単に降りてきたな, と思ったのもつかの間, ここからLechの村まで戻るのが2kmある. 下りの後の水平道は結構足が上がらない(苦笑). でもまあともかくOber Stubenbach, Oberlech, Lechと村を見ながら林, 次いで草地を行くのも気分は悪くない. なにせヨーロッパ有数の「美しい村」だから. それが夏の改修工事真っ最中でもね…. …でもやっぱり宿泊費高いのかな…(苦笑). ただまあ冬の社交場も夏はおとなしいのか, あまり人も多くなく, おだやかな雰囲気. それがチロルの夏のよさでもある.
[ → Schlegelkopf : 反対側から振り返る]
村で開いていたパスタ屋で少し遅い昼食を取ったが, バスまではもう1時間半ある. ということで, リフトで反対側斜面を上がり, 歩いて下りて来る事に. Oberlechまでのゴンドラも動いていたが, それはあまり面白くないので, その隣のSchlegelkopfへのリフトを使う. 標高差300mの斜面をのんびり…止まってしまった…. 前に乗った学生の団体が悪乗りしてリフトを揺すったため, 安全機構が働いて止まってしまったらしい. どこにでもいるよな, クソガキめ. 2分ほどで動き出したけど, やれやれって感じ.
Schlegelkopfの頂上駅からはもちろん向かいにRüfikopfが聳える. 南のOmeshornもきれいだね. ただこの時間, 風が強くて半袖だとちょっと寒い. しかし上一枚羽織って歩くと今度は暑い. 脱いだり着たり調節が大変だ.
さて, まずはOberlechへ向かう. この辺はもうスキーリフトだらけで降り場の脇を抜け, 二本潜り, それから少し林の中を抜けるとようやくお花畑へ. 下に見える集落とセットで美しい. こういうところに泊まるのも素敵だろうが, 自力でとなるといろいろ…. やっぱり送迎つきか?(笑). レストランのテラス席で一杯やっていこうかとも思ったが, それで乗り遅れると馬鹿なので, 結局さくさくLechまで下りることにした. 後はもう森の中の道を行くだけ. 一杯やらなくても結構いい時間だった.
[→ Bregenz : ちょっと遠回り]
夏場はLech - Dornbirn間を直通バスが走っているのでこれを使う. 結構な乗客が乗った. Vorarlberg付近の人間だったら軽く日帰りできる距離だものね. まずWarthまでは, 険しい峡谷沿いを走る. Lech川が先にどんどん下っていってしまうので道路から川面ははるか下に…. そこをバスが通常はすれ違えない細い道がくねくね延びていてそこをすたこら走る. しかしすれ違うために退避部分をフェンスぎりぎりでバックしたりするのだから, 心配性な私としては結構怖い…. そりゃ冬期通行止めになるわけだよ…. でも(もちろん)無事Warthへ到着し, そこからはReutte方面と道を分けて左のBregenzerwald方面へ. Hochtann-bergpaßを越えるとSchröckenまで, 400mの一気の下り坂になる. ちなみにOberlechからここSchröckenまでは結構気楽なハイキングコース&マウンテンバイクコースらしい. 宿などもちゃんとあり, 道沿いのテラスで一杯やっている人の姿がたくさん. ここまで来るともうLechというよりはBregenzerwaldの風景に変わるね.
バスは更にBregenzerwaldをひた走る, が, さすがに寝不足が効いてうとうと. ふと人が動く気配に目を覚ますと, バスの乗客が軒並み降りていくところであった. え? まさかもう終点? それとも車両乗換え? と思ったが, 降りない人もいる. ということは別に乗換えでも終点でも無いらしい. 外を見るとBezauだった. ああ, まだ大丈夫か, と思い, バスが動き出したとき, 後ろにちらりと見えたのは, Bregenz行バスの姿. あ! ここで乗り換えればわざわざDornbirnに戻らずBregenzへ直行できたのか! 普段は調べまくって漏らさない筈のバスルートだったが, 今回は直前変更でどたばたしたため, 調べ損ねたらしい. …まあいいや.
乗車中のバスはそのまま昨年訪れたSchwarzenbergを抜け, その先はEggを経由して遠回りでDornbirnへ. まあDornbirnでの列車への接続も良かったので, それほど時間をロスしたわけではないし, まっ, いいね.
[Bregenz : 音楽祭目前]
Lechの午後の曇り空とは違い, Bregenzは夕方でも快晴のいい天気. しかも標高が低いから暑い. 昨年懲りたので, 今年はちゃんとサンダル持参(笑)で, 湖畔のベンチで履き替える. 湖畔は人出でわんさか. 日曜の午後は結構こういうふうに地元民がのんびりすることが多い. ちなみに音楽祭まではもう2週間あるから, それ目当ての客はまだ来ないだろう. もちろん昨年今年の湖上舞台であるアヤシゲな石油コンビナートみたいな建物は健在で, 湖岸から見ることができる. …舞台に見えない(苦笑).
駅の裏でなにやら舞台セッティングをしていたので何かと思ったら, W杯の決勝戦パブリックビューだった. 私も見ようかと覗き込んだが, 人ごみがすごくてろくに見えない…. 途中で断念. 切り替えて晩飯に. 湖岸のテラスで取った席の隣は日本人おばさん4人組. な, なんでこんな時期にこんなところへ! マイナーな(苦笑). しかもどうもそんなに海外旅行暦が長そうではない. さすがにおばさんたち側も気づいただろうが, 私は隣で全てドイツ語で済ませ, 日本語は一言も出さなかった(苦笑). なんかやや経験の多そうな人が新しそうな人に薀蓄を語っていたので, 余計なこと言わんほうがよさそうだったし…. 食事は例によって塩辛い大盛りでやや多すぎて閉口したが, ともかく全部食べ切り, 後は帰るだけ. 帰りの夜行も混んだが, 今度は2席のクロスシートを死守, なんとか横になってきた.

強行軍ではあったが素敵な眺め, 懐かしい眺めで特に素晴らしいお花畑に感激した. これだからチロルハイキングは止められない.


現地の行程

7/09
(Sun)
Bludenz dep 07:37 Post Bus 70 VVT-Maximo 11.70Euro
Langen am Arlberg arr 08:18
dep 08:18 Post Bus 91 (11.70Euro)
Zürs Sparkasse arr 08:34
dep 08:40 徒歩 --
Monzabonsee via 10:05
Rüfikopf(Seilbahn) arr 10:25
dep 10:50
下り口 arr 12:05
dep 12:25
Lech arr 13:30
Lech散策, 昼食
Lech dep 14:35 Schlegelkopf Berg
(リフト)
5.2Euro
Bergstation arr 14:50
dep 15:00 徒歩 --
Oberlech via 15:25
Lech Postamt arr 16:05
dep 16:17 Post Bus 42 (11.70Euro)
Dornbirn Bahnhof arr 18:24
dep 18:27 R5654
Bregenz arr 18:42
Bregenz旧市街,Boden湖畔散策, 夕食
Bregenz dep 21:44 --

参考


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