ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 12

コウノトリの町ルスト&ノイジードラー湖(オーストリア)

2004年6月10日(木,祝)

[行程プラン : 内陸国の海]
言うまでもなくオーストリアは内陸国で海はないが, ウィーンの身近に馬鹿でかい湖がある. それがノイジードラー湖. とりたてて際立った観光地ではないが, 海のない人々の水遊び場として, リゾート地兼用観光地になっているようだ. また沿岸のルストとメルビッシュの町はコウノトリが営巣する町として有名であり, 毎年春の間は家々の煙突の上に巣を作る. ということで, 水遊び本格的シーズンの前, かつコウノトリが住んでいる間ということで6月中のハイキングを考えた. またこのノイジードラー湖を含むブルゲンランド(Burgenland)州の州都アイゼンシュタットが近所にあり, その観光も兼ねるということにした.

オーストリア地図
行程マップ

[Wiener Neustadt → Ebenfurth : 一つのミスが大きな狂いを]
朝の列車でWiener Neustadtに向かう. 隣の駅で乗ってきたなんか酒臭い学生さん2組4人の騒いでいる中をなんとか抜け出して降りたWiener Neustadtは…. ここでは下りてはいけなかった! Wiener NeustadtからEbenfurth, Wulkaprodersdorf経由の路線が距離的にはEisenstadtへの最短ルートなのだが, EbenfurthからWulkaprodersdorf方面へ行く列車はすべてWien Südbahnhof, Wien Meidlingから来る列車であり, どういうわけかWiener Neustadt→Ebenfurthの列車とはまったく接続しない. しかも日曜祝日はどちらも本数が減り, Wiener Neustadt, Ebenfurthのいずれの接続でも平日なら次に走るはずの列車が運休という, まさに泥沼. 先の列車でWien Meidlingまで出ていれば(1時間分遠回りとはいえ)すっと繋がったものを, これでWiener Neustadtで1時間10分待ち, Ebenfurthで1時間50分待ちという, 間抜けな事態を引き起こしてしまった. 痛すぎ. しかもどちらも観光地からは程遠い「ただの町」. 仕方なくやっていたことはといえば, ホームや周囲をウロウロしながら違う方面に向かう列車を撮影すること. これがもっと風光明媚な田舎路線や観光列車ならともかく, なにせ小田舎を走る珍しくもない近郊線用City Shuttleの車両だからなあ. しかも失敗しまくってるし. 実はその列車運休の時間に代わりに一本ローカルのバスがあったのだが, 気づいたのはEbenfurthでバスが通過していったのを見たあと. もっともEbenfurth-Sopron経由-Deutschkreuzの路線はたとえ走っているのがÖBBの列車でも, 一応所属はRaab-Odenburg-Ebenfurther Eisenbahn AGという私鉄路線だったりするので, それだけの理由で気づいていても乗らなかった可能性大だが(苦笑).
[Eisenstadt : 小さくても州都]
最後のWulkaprodersdorfでのR63線(1両編成)への乗換えだけはスムーズに終了し, 家から実に6時間かかってようやくアイゼンシュタット(Eisenstadt)へ到着. いかにも田舎駅という雰囲気の駅舎から, 旧市街方向へ上っていく道の両側はマンション街. 確かに駅が昔の町外れにあることは多く, その結果駅回りは新興住宅街になったりすることは多いが, それにしてもまたここは極端.
旧市街中心部は基本的にメインストリート一本沿い程度で, 小さい地方都市並. ただし住宅街そのものは結構広くたらたらと広がっていて, トータルすれば一応州都なりにそれなりの数が住んでいるのだろう. この街はウィーンの森の低山の連なりがハンガリー平原に落ちていく直前のゆるい数百m程度の山並というか丘というかの中腹にあり, 平原を見下ろす格好になる. その中で一際目立っているのがメインストリートの一番端にある, エスタハージー城(Schloss Esterházy). すっきりと垢抜けた造りで山の下, 線路側からもよく見える. 本来はここで城の見学をするはずだったのだが, ガイドツアーのみで1時間おきということで, 融通が利かない. 消えた2時間はいかんともしがたく, 残念ながら町並と一緒に外観を眺めただけでおしまい.
かわりに残った20分でハイドンの墓のあるベルク教会まで足を伸ばす. エスタハージー城からさらに先に進んだところにあり, 表の装飾の多いつくりとは裏腹に, ハイドン関係の教会やミュージアムの入口はすべて裏側だった. これまた残念ながら, 12-13時は昼休みだとか. だめじゃんか….
[Eisenstadt → Rust : コウノトリの町へ]
ノイジードラー湖(Neusiedler See)の湖畔の町, Rustへは鉄道がなく, バスでの移動. これまた日曜祝日は2時間置きということで, 一本逃すとそれこそほとんどとんぼ返りしてこないといけなくなってしまうので, Eisenstadtはほとんど見学らしい見学も無しでバスへ向かう. この町のバス停Domplatzは駅から旧市街中心部へ向かってくる途中の右側の町中にあり, やや窮屈. 前のバスとその横に止められた自家用車が邪魔でバスが発車できず, 仕方なくバックしてバス停入口から出る羽目に. なんだかな. バスはしばらくEisenstadt線の線路沿いを走った後, 折れてようやくNeusiedler Seeの湖畔の町へ向かう. この辺り, 見えるのは一面葡萄畑に時々集落, という感じ. Neusiedler See周囲もオーストリアでは有数の葡萄産地の一つであり, かなりあちこちに葡萄畑が見られる.
ただ一人ルスト(Rust)の郵便局前で下車すると, それなりに観光客はぱらぱらといるようだ. ただし距離の割に公共交通機関が不便なせいか, 圧倒的に自家用車で来る人が多い. また自転車で走り回っている人も多い. さすがに全部ウィーンから乗ってくると遠すぎるので, おそらく大方はマイカーに積んできたのであろう. 南北に走る自動車道路を東側(湖側)へ渡って旧市街に入ると, 即座にコウノトリの巣が目に入ってくる. 他にはとあたりを見渡すと, ああ, 確かにあちこちありますね. しめしめと思いながらあちこちデジカメを向けるが, 存外いい写真が撮れない. うまく行かんなあと思いつつカシャカシャ.
Storch
[Rust → Neusiedler See: いうまでもなくリゾート地]
湖畔の町とは言うものの, 実際はこの湖周囲はほぼ全域にわたり幅2km以上にわたる葦原で覆われており, 現在の湖岸線まではぶち抜き道路を歩くこと約15分. 振り返るとRustの町は向こうのほう. 隣をマイカーがすいすいと抜かしていく. 終点付近にでんと有料駐車場があり, かなりの台数が止まっていた. 道路の左脇(北側)は既に入江になっており, なにやら低い構造物が立ち並ぶ. もしや貸ロッジ? とか思ったが, よく見るとボートの倉庫らしい. 私有地とかいろいろ書いてあるし, 個人用ボートに見えるのだが. そんな大量にボートが並んでるのか! さて, 湖岸に出ると, 目の前にレストランがあり, 更に奥へは…いけないらしい. 岸辺の大部分は有料レジャー区画になっていて, どうやら金を払わないとは入れない.
Neusiedler See
フェンス越しに見える砂浜やプールでは水着の皆さんが楽しんでいたが, さすがに1時間の寄り道のために入る場所じゃないよなあ. みなフルに一日家族やカップルや友人同士でここに滞在して遊んでいくのであろう. 実際中には浜の他プールや各種遊具もいろいろあるようで, 飽きさせないようにしているようだ. しかしそのお陰で金を払わずにいけるのはボート乗り場の脇と船着場のみ. それだけではさすがになんなので, 湖畔というよりほとんど湖上レストランと化しているレストランの湖縁のテラスで昼飯. まあ一応湖を見ながらのんびりと. メニューはもちろん湖のお魚. ちなみに湖そのものはそんなにきれいではない. というかウェイターのおじさん, テーブル拭きながらごみを湖に落としてどうすんねん! 一応Neusiedler Seeは世界文化遺産である. ちなみにオーストリア最低標高地点(115m)でもあり, 大きさの割に最大水深は1.8mだったりする. 19世紀には一度まるごと消滅したこともあったそうな.
[Rust → Mörbisch : 湖の見えない湖岸ハイキング]
ちょっと遅い昼食後, 更に南の町, Mörbischへ向かう. 2kmの道を再び町まで戻り, 約6km湖沿いに南下. もちろん延々と続く葦原だか野原だか分からないものにさえぎられ水面はまったく見えない. 反対側は緩い斜面までひたすら葡萄畑か野原か. 途中に民家などまったくない道をてくてく. この道は平坦だけに手ごろなサイクリングロードらしく, 脇をひっきりなしに自転車が抜けてゆく. 対して一応ハイキング道路の標識のある道ではあるが, 町から1km離れるともはや歩いているのは私だけ. どうも雰囲気が浮いてしまったのか, すれ違う自転車の人々の視線が微妙にきついぜ…. ちなみに一組中国人親子がいたが, 東洋人はほとんどいなかった. ウィーンから一日遠足にはいい距離の場所なのだが.
メルビッシュ(Möorbisch)は南北に長いこの湖の西岸ではオーストリア最南の町. ここから更に数km程歩くとハンガリー国境に達する. なにせ湖南部はハンガリーで同様に葦に覆われた領域ゆえ, 東側時代は葦にまみれて密航して来た人も結構いたとか. そして国境から南へ向かうとまもなくショプロン(Sopron). この辺の国境地帯はまさに東欧民主化運動の直接の発端となる, 東ドイツ人約1000人が一気に西側へ亡命を図った, ヨーロッパピクニック計画の舞台である. もっともこちら側の町はのどかな田舎町そのもの. 言われなきゃなにも分からない, 甘い葡萄の香りの漂うコウノトリの町である.
さて, 予定よりやはり1時間近く遅れて到着したMörbischでも再び約2kmの道を歩き, 水辺へ向かったのだが, こちらは更に船着場部分を除き一面有料区画. 水しぶきときゃーきゃーいう声をバックに, 早々諦めて何もせず引き返してきた. あほくさ. しかしこれでほとんど帰りのバスまでの時間を使い尽くしてしまい, 残り20分ではさすがにホイリゲに寄っている間もなく, 楽しみにしていた貴腐ワインはお預けのまま帰路に着いたのであった. がっくし.
[Mörbisch → Wien : 結構途中の人も]
Mörbischからのバスは10分遅れてきて, もしや祝日運休?とやきもき. バスに乗った時はがらがら, 誰もいなかった乗客は, Rustで数人, Eisenstadtで数人と拾ったが, その後結構乗り降りがあった. 観光地とウィーン直通なんていかにも観光路線みたいだけど, 少なくとも今の時期に観光客の利用者なんてほとんどいないんだな. へえ.

現地の行程

Wiener Neustadt Hauptbahnhof dep 9:37 ÖBB-R2864
(R11線)
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Ebenfurth Bahnhof arr 9:51
dep 11:39 ÖBB-E2821
(R13線)
Wulkaprodersdorf Bahnhof arr 11:55
dep 12:00 ÖBB-R7870
(R63線)
Eisenstadt Bahnhof arr 12:08
Eisenstadt 散策
Eisenstadt Domplatz dep 13:15 Postバス
Bus 1156
3.0Euro
(2 zone)
Rust Postamt arr 13:40
Rust散策,Neusiedler See,(昼食)〜ハイキング〜 Mörbisch
Mörbisch am See Ruster Straße dep 17:57 ÖBBバス
Bus 1156
9.0Euro
(6 zone)
Wien Südtiroler Platz arr 19:47

参考


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