ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 25

緑の谷間は国境線、タヤタール&レッツ(オーストリア)

2005年5月7日(土)

中欧全体地図
行程マップ

[新緑の季節]
4月末辺りからようやくだいぶ春らしくなり, 緑の増えてきてハイキングしたい気分になるが, さすがに山の上はまだ雪の世界. この季節はやはり平らなところ…ということで選んだのがここ. オーストリア北部のチェコ国境方面にはまだ来たことがなかったので, 一度来ようと思っていた, というのもある.

[農村地帯]
Wien南駅を出たチェコのZnojmo行ローカル列車はウィーンの郊外東半分をぐるっと半周し, ドナウ川の左岸(北岸)をStockelauへ向かう. 途中右側に端正なお城が目についたが, 後で調べたところによるとBurg Kreuzensteinといい, ローカルには有名らしい.
Stockelauから線路は北に折れ, いざWeinviertelへ. Niederösterreich州北東部1/4をWeinviertel(ワインの1/4)といい, 北部から東部にかけてはワインの産地である. 余談だがほかのViertelは北西部のWaldviertelと南西部のMostviertel(普段ほとんど聞かない)があるが, 南東部は1/4まとめてではなく, Wienerwaldなど幾つかの部分に分かれるらしい….
さて, そのWeinviertelは基本的になだらかな丘陵地帯で, その一面が畑, 草原, それにちらほら林. この辺がオーストリアの食糧生産の主役を担っているのですかね. ウィーン/ザルツブルクやザルツカンマーグート/チロルとは違った一面である. たまに集落と教会の塔が見えてくると決まって駅があり, 列車は停車していく. やがて北部に入り, Pulkauの谷間のZerndorfを過ぎるとぼちぼち斜面にワイン畑が広がり始め, まもなく国内最後の駅Retzに到着, 下車.
[目指すは渓谷]
Retz(レッツ)の町はWeinviertelのワイン中心地として有名だが, その観光は後回しにして, まずはそのまま駅前バス停へ向かう. 目的地はチェコ国境の谷間, Thayatalの入口Hardegg. 同様のハイキング風の人がもう4組くらいいて, 一緒にDrosendorf行のバスへ乗り込む. 旧市街の脇を抜けて林の中を更に100m程上ってゆくと, 再び視界がぐっと開け, あたり一面農村. 丁度季節柄, 菜の花の淡く黄色い花が緑の葉と, まだ植えられていない土の茶色の地面と3色の絨毯となり, のどかさ全開である. 集落を幾つか抜け, 最後に再び坂を100m下りて谷間へ下ると, 目の前にお城がでんと現れてHardeggに到着.
[川の真中は国境]
国境の村, Hardegg(ハーデック)のシンボルはなんといってもそのお城. Burg Hardeggはこのあたりのご多分に漏れず, 主要河川の渓谷沿いには大概ある古いお城の一つ. バス停からこのお城を回り込んで川沿いへ下りていくと, 裏側にこじんまりとした村の中心があり, そのメインストリートを少し歩くとThaya(タヤ川)の岸辺へ出る. 両側から緑の低い稜線で挟まれたこの渓谷を流れるThaya川, そう, この川の真中は国境線で向こうはチェコだ. ここには歩行者/自転車用の橋がかかっており, なんと夜と冬は通行不可という, まるきり観光用みたいな国境検問所があったりする. とはいえ橋の真中でカメラを構えてウロウロする人もいたりして, もう雰囲気はのんびり(苦笑). ただここで渡ってしまうと, 他に渡れる橋は両側にしばらくないので, 今回はそのままオーストリア側を川に沿って歩くことにする.
[緑の谷間は国境線]
さて, このThaya川はオーストリア側Waldviertelに源流を持ち, 一度チェコ領内を流れ, この付近ではしばらく峡谷に沿って国境線をなし, 再びしばらくチェコ領内を流れた後, 今度は北東部でスロヴァキアとの国境線をなして, Bratislavaの手前でドナウに合流する, 人生(?)の半分を国境線のために捧げている(?)ような川である. そのうちこのチェコとの国境の谷間部分はThayatal(タヤタール)と呼ばれ, オーストリア,チェコの両側で国立公園に指定されている. オーストリア側ではHardeggを中心に前後10km程度渓谷を歩けるようになっており, そのうち下流側を今回はハイキング.
さすがにあまりメジャーではないのか, ハイキング客もあまり多くなく, 静かだ. 前半は出発して間もなく川沿いからしばらく上ってゆき, 何箇所かの展望台から谷を見渡すことが出来る.
Thayatal
最初の展望台からは谷間とBurg Hardeggが一緒に望めるが, 川が蛇行しているのでまもなく見えなくなる. 春の新緑で覆われた谷間はまだうっそうともしておらず, 若々しい雰囲気で心身リフレッシュ. しばらく歩くと川沿いの谷間へ戻る. 川沿いにはあちこち看板があり"Vorsicht Staatsgrenze Flußmitte"(注意 国境 川の真中)と書かれている他, あちこち櫓が立っていて小屋がある. 最近使われている気配はないようだが, 多分昔の国境監視小屋ではなかったか. なにせ一応昔は東西の境界でもあった訳だから.
後半に入ると, ところどころあまり道の良くないところもあるが, 全般的には良く整備されて標識も整ったハイキングコースを, 林と草地を交互しながらのんびり2時間半歩いて, 最後にチェコ側の砦を望みながら谷間から分かれる. ゆったりリフレッシュにはなるきれいなところだが, 水は必ずしもそう澄んではいない.
ここから約30分, 小川沿いに坂を上ってゆく. 途中古城の遺跡もあったのだが, 時間がなくて省略し, バス停のある集落へ戻る. バス停を発見したその直後に, 予定していたバスが4分早くバス停へ到着. …誰も乗っていなかった. さすが田舎バス. なにせ田舎ゆえ本数がないので, 一本逃すとあまりシャレにならない. ふう.
[畑の真中で待機]
このRetz行の貸し切りバス(苦笑)ではRetzまで行かず, 途中のHofernで下車する. ここはただの田舎集落, 別に観光施設も何もないのだが, お目当ては観光列車, Reblaus Express. Retzから西のDrosendorfの間は現在旅客営業運転は廃止されているが, 5月から10月の週末は日2往復観光用に懐かしのディーゼル機関車が引っ張る列車が走る. 乗っている時間はないけれど, これは是非畑の真中を走る勇姿(?)を拝んでおかねばと, ここで下りたのであった. バス到着から列車の通過予定時刻までは約40分あり, なにせ両側畑ということで, 写真撮影できる場所も地図で目星をつけておいた通り問題なく, 後はのんびり待ちぼうけ. 途中トラクターを引いたおじさんが往復していったが, 何やってんだこいつって顔してたな….
予定より数分遅れてきた列車は, 観光用の常として盛んに警笛を鳴らしながら, のんびりと走ってゆく. さすがにまだ5月前半だからか, いつもそうなのか, 3両の客車はガラガラで, 一組は乗っていたのは見えたけど…(苦笑). それはいいとして, 一番最後にくっついている客車は何ですか. 普通観光用列車なら観光用の古い客車を引くものだと思うのだが, 何故か客車の最後尾には現役のBp客車が…. …かなり浮いてるんですケド….
[レッツ : 最大のワインケラー]
バス停へ戻り, 通る地元の人と思しき車の人たちには何こいつ?みたいな目を向けられつつ, 一人待つこと20分. ここはタイミングよく別方面から来たバスと接続してRetzへ戻る. 駅前から小さな公園を挟み, 西へ少し歩いたところが旧市街. Hauptplatzの広場を中心に, 四方にある教会や塔などで囲まれた小さな区域だ. 旧市街は案外観光客もいて賑やかだった. ウィーンから1時間ちょいだけに, ここなら日帰りでふらっと来るのにいい距離なのだろう. 広場の中にドミニカ教会があり, そこでは結婚式もやっていたらしい.
教会の隣に観光案内所があり, そこで次のワインケラー見学ツアーの申込みをする. 窓口嬢の顔見知りらしいおじいさんがだべっていて, いきなり英語出来るか? と聞くので, 出来ると答えたら窓口から例の電話機型英語版ガイドを出されてしまった. いや, あの, ドイツ語も多少は分かるので, なくてもいいんだけど…. 出されたものを突き返すのも気が引けて, 何故かパスポートと引き換えにしてまで受け取ってしまったものの, 結局ツアー中一度も使わず仕舞いであった….
さて, Retzはその地下に伸びる, オーストリア最大規模のワインケラーで有名な町だ. その総延長たるや, なんと20km! 町の外周1周より遥かに長い. そのうち1kmの, 既に使われていない部分を観光化して見学ツアーをやっているという次第. 入口は旧市街の外にあり, 教会前の集合場所から結構集まった30人近い観光客は, そこまでぞろぞろ移動. 入口にあった地図によると, 20kmのケラーは別に全部繋がっている訳ではなく, それぞれの所有者がそれぞれ掘ったらしい. 地下に下りると中は8度. うわさすがに1時間半のツアーでは途中でだいぶ冷えてきた. 丁寧な, でもなんか微妙に名調子な(?)おじいさんガイドでのツアーは, まあなにせ潜って見られるだけでも楽しい. あまりの長さに中に軌条まであったのは興味深かった. ちょっと暗くてさすがにフラッシュ無しではろくな写真は撮れなかったが…. 最後に上がってくると, そこはワイン屋さんで, 一杯味見が出来る. オーストリア北部ワインの主力であるGrüner Veltlinerを飲むのは久々だが, 淡い辛口の中にある端正な甘さは, 人によって好みが分かれるようだが, 私はそこそこ好きである. そこでお好きな方はどうぞご購入も…とここぞとばかりにワインが並んでいたが, なんか抱き合わせ商売みたいなのでそれはやめておいた(苦笑). 普段は別にいつもの南部のワインでいいです….
ところで今回のツアー, 現地人に混じってもう2人, 日本人カップルが混じっていたのだが, さすがにレッツの見学にルイ・ヴィトンのバッグを抱えてくるのはどうかと思うのだけど? 実に分かり易い….
[雨…]
ツアーを終えて外へ出ると, ちょうど雨が降り出したところであった. ああ, 帰りの列車にのるまでもう2時間持ってくれれば…との願いもむなしく, 間もなく本降りに. 残念. ともかく広場の中の教会の塔へは1Euroで上れるので, 入口の箱に金を放り込んで上る. なにせ高い建物は教会の塔とサイロ(?)だけということで実に見晴らしがいい. 小さい旧市街を中心に, 東と南には草原と畑が広がり, 北と西の緩い斜面にはワイン畑が広がる.
Retz Umgebung
西には歴史的な風車があり, 近年あちこちで回っている風力発電用の大きいのではない, かわいいのが見え, これも観光できるのだが残念ながらこちらはケラー見学中にクローズ時間になっていた. それならそれで軽く散歩くらい, とも考えていたのだが, 雨ではね. 一応この辺りは北部有数の少雨地帯なのだが….
さて, 塔から下りるとあっという間に撤収されたテラスで一杯やるわけにもいかず, 仕方なくカウンターで地元の人がわいわいやっている中, のんびりもう一杯Grüner Veltliner. 夕飯までは食べずに駅へ向かい, 雨雲ですっかり暗くなった空の下, 帰路についたのであった.

現地の行程

5/7 Wien Südbahnhof(東) dep 08:47 ER1850 --
Retz arr 10:16
dep 10:23 Bahn Bus 2.7 Euro
Hardegg Burg arr 10:45
Thayatal start 10:45 徒歩散策
end 13:05
dep 13:05
Merkersdorf arr 13:45
dep 13:53(4分繰上) Bahn Bus 1.9 Euro
Hofern arr 14:02
Hofern散策,列車撮影
Hofern dep 15:04 Bahn Bus 1.9 Euro
Retz arr 15:12
Retz散策
Retz Erlebniskeller見学 16:00-17:45 7.0Euro
Retz散策
Retz dep 19:09 R2226 --
Wien Südbahnhof(地下) arr 20:34

参考


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