ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 41

気軽な奥座敷は屈指のリゾート、ゼーフェルト(オーストリア)

2006年7月15日(日)

オーストリア地図
周辺地図

先週Lechに引き続き泊まりで行く予定で, 雨のためにカットになったMittenwaldとSeefeldを, 今週もまた日曜の天気が微妙ということで, 土曜日にやはり日帰りで訪れることにした. ただしはじめはMittenwald中心の予定だったのだが, 泊まらないなら別に宿泊料金が高いSeefeld中心でも問題なかろうというのと, そもそもSeefeldの方がハイキングコースが楽しそうということで, Seefeldが中心の予定に変更.
今回も座席夜行ということで座席指定は無し.


7月15日(土)

[Innsbruck → Mittenwald : おなじみ景勝路線]
始発でInnsbruckからMittenwaldへ向かう. まだ夏至直後なので朝は早いはずだが, 谷底はまたも地霧の中でしばらくどんより. かろうじてしばしNordketteの稜線が見えた程度. しかしまあこれは予報通り, 早朝には飛ぶはずだ…. しかし夏の谷底とはいえ, やはり山間の早朝. この時間はまだ10度そこそこと寒いので, もちろん一枚羽織るものが必要だ.
例によってドイツまで行く列車はドイツの近距離用客車をドイツの機関車BR111が引っ張る. 土曜の朝一列車ということもあり, 車内はぱらぱら人が乗っている程度のがらがらだ. 列車はInnsbruck西駅を過ぎると, Inn谷の北側斜面を一気に上ってゆく. 走り出すのにあわせた様に地霧が薄くなり, やや霞んでいるものの進行方向左手に谷の風景が広がる. Innsbruck空港を過ぎるとその先はやや木々が多いので, 谷の風景がいつも見える訳では無いけれど, しかし緑の谷底を流れるInn川と道に線路, そして多少の家々, それに対して対岸の山々. この路線も初めて乗る訳では無いけれど, 毎度とても美しい. Hochzirlからトンネルを抜けると, Inn谷からは別れを告げていざ高原台地へ. まだオーストリアだがこの先の川はドイツ方面へ北上する.
この列車ではSeefeldで降りずにそのまま乗車を続ける. Scharnitzを過ぎるとすぐに国境を越え, 谷の端の一段高い緑の中を抜けてまもなくMittenwaldへ到着.
[Mittenwald : ヴァイオリンの村]
まだ8時前であるから, 当然Mittenwald(ミッテンヴァルト)の駅前もガラガラ. 駅裏側に圧倒的存在感で聳えるWestliche Karwendelspitzeの稜線からちょうど朝日が昇ってきているところ. Seefeldへ戻るダイヤと乗り場を確認し, 1時間ほど町をぶらぶら. 旧市街へ駅前の道を歩いていくと, 壁に絵が描かれた家々がすぐに目に入ってくる. この辺りも多いらしい. 建物の作りそのものが大きく違う訳では無いけれど, この絵の存在だけで, オーストリア国境からわずか3kmながらチロルの村々の建物とは随分違った雰囲気を作ってしまうんだなあという感じだ.
しかしまあこの辺りもリゾート村であり, やはり宿泊施設や土産物屋をはじめ, 観光向け建物が多い. 旧市街教会脇からメインストリートを歩くが, 道路などの作りなどにもよく気が使われている感じ. それよりもう一本奥へ入ると, 割と一般的なお店が並んでいたりする. とはいってもそこはやはり小さな村. 相応の小さい小売店舗だが. お土産屋のショーウィンドウにかわいいショットグラスがあったので欲しいなとは思ったが, さすがにまだ開店前. 残念でした. まあ仕方あるまい. しかもまだハイキング前だし(苦笑). この村はヴァイオリン製作の村としても有名だが, さすがに土曜の早朝になにをしている訳ではない. 小さな楽器屋のショーウィンドウにヴァイオリンを発見して, お, これはここのだろうか? と思いをはせる程度.
旧市街の更に奥にはKranzbergを中心とした小さな湖の並ぶ緩やかな小山が広がっている. ファミリー向けのお気軽なコースらしいが, さすがに今回は時間無し. ぼちぼちオープンし始めたカフェやスーパーマーケットの間を抜け, 駅前へと戻る.
[Mittenwald → Seefeld : 国際バス?]
MittenwaldからSeefeldへはバスで戻る. SeefeldとMittenwaldの間, 線路から少し外れたところのオーストリア側にもう一つLeutaschという村があり, この三村をぐるぐると回るバスはむしろ列車より本数が多い. 一応オーストリア側のバス番号がついているが, 走っているのはドイツ, Oberbayernのローカルバスだったりする. もちろんこれも国境のパスコントロールが廃止された恩恵なのだろう. まとめて観光できるなら, 国が違うという理由だけでMittenwald観光とSeefeld観光を完全に区分けする必要は何も無いものね. 5分前に駅前へ戻ると, 駅前に既に止まっていたバスに, 逆周り(Leutasch経由)でないことを確認して乗車.
この区間, 基本的に線路の一段下の谷底をずーっと走ってゆく道路だが, 草原と家々の間を抜けていくバスは, 谷端の木々の中を抜ける列車よりむしろ眺めが良い. オーストリア-ドイツ国境をなす谷のGroße ArnspitzeとRotwandlspitzeが仲良く道路の両側に並ぶ. 地霧がとんだのもつかの間, 今度はあっという間に雲が湧き出してイマイチすっきりとした眺めにはならないけれど, でもまあ十分ではある. バスは子供向けの娯楽施設Play Castle Tirolを過ぎるとSeefeldの駅へ向かう前に線路から一度離れ, これから乗るRoßhütteケーブルカー駅前へ向かう. 私はここで下車.
[Roßhütte Bergbahn : 地上の楽園]
Roßhütte(ロスヒュッテ)へのケーブルカーはバスの到着と入れ違いでちょうど行ってしまったところで, しばらく待たされる. ここのチケットはケーブルカーと上部のロープウェイのセットで購入できるが, このロープウェイが二本ある. 従ってどういう風に回ってくるか決まらないとチケットが買えない. しかも二つの頂上駅を結ぶルートははっきりきっぱり山道なので, 天気が悪かったり道が険しかったりしても楽な迂回ルートがあったりするわけではない. とりあえず上へ上がってから天候と道の状況次第でルートを変更しようかと思っていたのだが, 仕方ないので地図を見ながらさくさく決めてチケット購入.
さて, 乗り込んだケーブルカーだが, いきなり日本人夫婦と一緒. こんなところにくる人もいるのか…. ケーブルカーの所要時間は10分弱. まだ森林限界よりは下だが, 半分近くは牧草地の中や, 高架橋を走るので, 眺めはまずまず. 線路付近のハイキング路を歩いて上り下りしている人の姿もちらほら. 作業車も入れる道だからもちろん足下はしっかりしているし, さして急でも無いからまあ歩くのは楽だろうが.
Roßhütteの駅を降りると, 目の前は…立派なレストハウス. ずっ. ここもまたリゾートスキー場であり, 冬場にスキー客が一休みする施設は充実しているのであった. そのレストハウスの脇にはなにやら長椅子なども. 日向ぼっこノンビリ滞在者向けか. さすがにこの時間だとまだそういうのんびりした人は上がってこないのか, ガラガラであったが, 結構な数並んでいたところを見ると結構な数の人が使うのかもしれない. そしてその裏がスキー場のゲレンデ, 夏は見事なお花畑, である.

これから上がるSeefelder Spitzeともう一方のロープウェイが延びるHärmelekopf, そして両者の間, 奥にReither Spitzeとそのカールがきれいに見える. ちょっと雲がかかっているが, どうかハイキングの間はもって欲しい! …でも確かにこういうところで一日のんびり景色を眺めながら寝ているのも気持ちはいいのだろうな(苦笑).
[Seefelder Spitze : 迫力の大カール ]
さて, ここからはSeefelder Jochへのロープウェイ沿いの道を歩いて上る. これ以上ロープウェイで上ってしまうと登山というにはあまりに上りが少なすぎるので(苦笑). ただしこちらは先のケーブル沿いとは違い, ちゃんと登山道. さすがにここを歩いて上る人間はまずいないらしく, 道中は完全な一人旅. ロープウェイの少し南側をついたり離れたり, という感じで, 上っていくとだんだん傾斜がきつくなるが, まあそれほど厳しいわけではない. ちょうどいいウォーミングアップか. さくさく上って隣のロープウェイが2往復半位したところで頂上駅, Seefelder Jochへ到着.
ここは既に稜線上. 裏側のKarwendelの山々を含めて一気に周囲の展望が開ける. が…あ〜だいぶ雲が…. まあそれなりには見えるのだが, やっぱりあちこち雲を被っているのが惜しい….

あまりきつくなさそうな稜線の先にはSeefelder Spitzeの頂上の十字架がもう見えている. たいして遠くもなさそう. 稜線といっても道幅はそれなりにあるようだし道自体もしっかりしているようだしさくさく行きましょ. で, すたすた歩いていくと, 最後の頂上への上りだけやや傾斜がある. 結構軽いハイキングな人でもこの辺りまでは来るようで, 山登り慣れしていない人はさすがにここで軒並みペースダウン, ところどころ道が細いところなどで行列になってしまっていた. やっとこさっとこ追い抜いて, 頂上直下でまた前の行列に追いついたのだが, これがなんと日本人おばさん団体! な, なんでこんなところで日本人にぞろぞろ会うのだ? いやまあ別に私が文句言う筋合いでは無いのだけれど…. ちなみにおばさん組は例によって長袖長ズボンに帽子つきフル装備, ガイドしていた地元の(?)お姉さんはタンクトップにハーフパンツ. あまりに対照的で面白すぎ(苦笑).
でもまあ日本人はともかく, その辺の家族連れが次々来るだけあって, Seefelder Spitze(ゼーフェルダーシュピッツェ)からの眺めはいい. 周囲の山並はもちろん, ここからはやはり次のReitherspitzeとその北面の大カールが眼前にでんと広がって圧巻である. というか, こちらから見ると, ほんとにあんな山, 一般人が登るのか? って感じだが…. 10分ほど休憩しつつ景色を堪能.
[Reither Spitze : 360度の展望! ]
日本人おばさん団体はここで引き返しらしいが, 私はそのまま先へ向かう. ここからは少し斜面を下り, それからカールの中腹を横切ってReitherspitzeの肩へ出るガレ道. 石がごろごろしていてちょっと注意が要るが, でも道は良く踏まれている. どうみても一見さんハイカーを除くと結構まわりの登山者もそのまま進むらしく, 歩いている人の姿もそこそこいる. ちょいちょいと追い抜いていくが, その中に同じケーブルカーに乗っていた夫婦の姿も. ああ, この人たちはまっとうに山登りなんだ. 挨拶して追い抜く.
カールの最下部にはまだ少しだけ残雪が残っている. 北側斜面なんかだと2000m級でもちょいちょい雪が残っていたりするものね. まあここは歩くのには関係ない場所だが. カールの真ん中なんかに道があると, 端から見るとなんかすごいところを歩くように見えるが, 実際にはここのルートは楽. 適当にまわりの風景を眺めながらえっちらおっちらカールを横切ると, 残すはReither Spitzeへの上り. さああと一息だ. 見上げると, さすがにここは結構傾斜がある. いわゆる通常の登山道には必ず出ている, 「この先は登山者の領域ですので云々」の標識もここに立っていた. 一応ここまで来ればもう一つのロープウェイ駅へ向かうエスケープルートもあり, 一瞬躊躇するが, 実際はここを通る登山者はみなReitherspitzeへと向かい、 エスケープルートへは誰一人向かわない. さすがにここまで歩いてくる人はみんなReitherspitzeが目的ということか(苦笑). 一休みして, いざ私も!
いきなり梯子を上り, その先もかなり岩っぽい道の急な上りだが, さすがにメジャールートだけあってルートはきちんと切られているし, 岩の斜面などにはロープなども張られていたりするから, 多少山に慣れてさえいれば全然難しいコースではない. …あまり下りたくはないかもしれないが. なにせ頂上のゴールが見えているのだから, 気合さえ入れてしまえばあとは一気. 約20分で頂上の十字架まで上り切る. ちょうど正午前に無事本日の目的地Reitherspitze(ライターシュピッツェ), 2373mへ到着. うーん360度の素晴らしい眺め! 朝ちらりと眺めてきたMittenwaldのWestliche Karwendelspitzeも, 先のSeefelderspitzeの後ろにきれいに見えている. Reitherspitze自体の影で今まで見えなかったInntalやその南の山々もここからは全て一望の下. こうみるとInntalの展望台としてもいい位置にある山であるということがよく分かる. 下にはZirlの村が見え, そこからLandeck方面の上流へ谷間がまっすぐ見えている. 谷の南側にはAxamsの奥, Kalkkögelの岩の稜線と残雪が見えていて, いいアクセントになっているし, 西側にはHohe Mondeのこんもりした山がSeefeldの村を挟んで反対側に聳え, 北側はドイツ国境稜線の山々だ. そして東側はInnsbruckの後衛, Hafelekarspitzeへと続くNordketteの稜線が延びる. ほんとまわりの山々が分かるようになってくると景色の楽しみも倍増である. ただ残念ながらドイツ最高峰Zugspitzeは雲の中…. 振り返ると追い抜いた日本人夫婦がちょうど最後の急斜面に取り付いたところであった. せっかくの眺めだし, 時間に余裕はあるので, あの人たちが上がってくるまで休憩をかねて景色を堪能していよう….
[Nördlinger Hütte : 山の上の昼飯]
結局30分ほど頂上でのんびりする. 名残惜しみつつ南側の急斜面を少し降りると山小屋があり, そこで昼食にする. もちろんテラス席. なにせ雲のお陰で頻繁に日が出たり翳ったりするので, 日が出れば暑く翳れば寒く, 一枚羽織ったり脱いだり大変. しかもハエが…. やはり私はこちらの人ほどおおらかに自分の食事にハエを止まらせてあげたりはできません. でもやっぱり山の上で食べる食事は気分がいいのでした. 都会では平気な顔して昼飯すっ飛ばしたりするが, 山に来ると結構ちゃんと昼飯食べてるし(苦笑).
[Härmelekopf → Seefeld : 追い抜き常連]
最後の行程, Nördlinger HütteからHärmelekopfのロープウェイ頂上駅までは約45分の下り. 快調に飛ばしていく途中ぽつぽつと人を追い抜くのだが, 中にはすっかりなじみの人も. カールの途中, Reitherspitzeへの下りとあわせて3度目の追い抜きの人になど, すっかり覚えられていて, 若い人は速いねとか言われながらさっと脇に避けてくださったりで, 毎度恐縮でございます. 実際のところSeefelderjochからSeefelderspitze-Reitherspitze-Härmelekopfのルートは事実上一本道だったようで, Seefelderspitzeで引き返しす人, 下山まで自力で降りる人を除くと, ほとんどこのルートを通っていたような気がする.
ロープウェイ駅までは結局30分で到着したものの, ちょうど出発直後だったようで結局25分の待ち合わせ. まあ下で待つのと違い, 上で待つ分にはまわりの景色を眺めていればいいだけのこと. ロープウェイ頂上駅は基本的に眺めのいいところに出来ているから, その辺りの心配は無い. 約5分の空中散歩ののち, 接続のケーブルカーでそのままSeefeldへ降りる.
[Seefeld : 夏もバカンスの村? ]
RoßhütteからSeefeldの村の中心までは歩いて15分ほど. お洒落なホテルやペンションなどの間を抜けて駅脇の線路を渡るとすぐに中心街だ. 冬のリゾート地ゆえ, 先週の静かだったLechのような落ち着いた雰囲気を想像していたのだが, こちらは全然違い, 人々で大賑わい. ホテルやレストランの表のテラスはぎっしりビールなどを飲む客で埋まり, 通りも人々がわいわい. チロルのリゾート地という文字をそのまま建物にしたようなお洒落なホテルやレストランが建ち並ぶ中, 歩いている人の格好の方はいたってラフで, 例によってキャミソールショートパンツにサンダルとかそういうノリ. Innsbruckからわずか20分で標高1000m以上というロケーションを考えると, 結構ふらっと来る人が多いのかもしれない. いやまあリゾートなんだからラフなのは当たり前かもしれんが…(高級リゾートがよく分かっていない).
帰りの列車までの時間が微妙だったので, テラスでのんびりビールを飲むのは諦め, ぶらりとお土産物色. 時間を見計らって駅へ向かうと…また会ってしまいました御夫婦に. せっかくなのでInnsbruckまで一緒に戻る. お話を伺っていると元来山好きらしく, 元々日本でも結構登っている上に, 今回もHohetauernから東Tirolにかけて随分マイナーなところも回ってこられたご様子. もともと山の好きな人が自分で調べて, 選んで, マイペースで歩くにはチロルは絶好なところ. 残りわずかなようですが, 存分に楽しんでいっていただけるとうれしいです.

思ったよりは簡単なコースで実質歩いたのは3時間強とやや楽なハイキングになり, 雲も多くて若干惜しい点もあったが, それでも期待を裏切らない素敵な風景を楽しめた.


現地の行程

7/15
(Sat)
Innsbruck Hbf dep 06:34 R5404 5.5 Euro
Mittenwald arr 07:35
Mittenwald散策
Mittenwald dep 09:08 Post Bus 4186
(von RVO)
3.6 Euro
Seefeld Roßhütte
(Talstation)
arr 09:32
dep 09:45 Roßhütte Berglbahn
(Standseilbahn)
16.0Euro
(Type-C)
Roßhütte arr 09:55
dep 10:00 徒歩 --
Seefelder Joch arr 10:22
dep 10:27
Seefelder Spitze arr 10:55
dep 11:05
Reither Spitzeのコル arr 11:30
dep 11:35
Reither Spitze arr 11:55
dep 12:25
Nördlinger Hütte arr 12:40
昼食休憩
dep 13:20 徒歩 --
Härmelekopf arr 13:50
dep 14:15 Härmelekopfbahn (16.0Euro)
Roßhütte arr 14:22
dep 14:30 Roßhütte Bergbahn (16.0Euro)
Talstation arr 14:40
dep 14:42 徒歩 --
Seefeld Bhf arr 14:55
Seefeld散策
Seefeld dep 15:46 R5455 --
Innsbruck Hbf arr 16:22

参考


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