ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 21

紅葉の世界遺産鉄道、セメリンク(オーストリア)

2004年10月17日(日)

[行程プラン : 要するに鉄道]
ドイツ・オーストリアからイタリアへ抜ける為にはどうしてもアルプスを越えないと行けない訳だが, ウィーンからの回廊として100年以上昔に選ばれたのがSemmering. そして現在もなおこのセメリンク鉄道はWienからGraz経由スロヴェニア行, Klagenfurt経由イタリア行の列車が頻繁に行き交う幹線として活躍している. 既に何度かこの路線は列車では通過しているが, なかなかきれいなところで, 当時の土木&鉄道技術にあわせて山肌に沿ってくねくねと上り下りするこの路線に沿って, いくつかの有名な鉄道橋をハイライトとするハイキング路があり, 是非一度は列車が渡ってゆく橋を外から見ようということで, 今回はここを歩くことにした.

中欧全体地図
マップ


[Semmering : 山の上は、雪]
セメリンク(Semmering)駅は900m近い標高の山間部ということで朝は霧が心配だったが, 曇り空ではあるものの, 幸い地面から周りの低い山付近はほとんど霧を被ることなく眺めは大丈夫. すぐ隣にある1300m峰Hirschenkogelのスキー場などは上のほうは早くも薄っすらと雪化粧していた. 全然考えていなかったのだが, 中腹は結構紅葉で色づいていて, 存外カラフルで楽しめそう. 駅の便所を拝借してからいざ出発. 都会の駅はどこも有料だけれど, 田舎へ行くと大概無料で助かる.
[Semmering → Wolfsbergkogel : 線路沿いという訳ではない ]
まず線路沿いに数百m程進み, トンネルの手前で斜面の迂回路へ入る. 案外山道っぽいトレイルを歩いていくと…家がある. こんなところに住むのか! 反対側は林道になっていて, 車一台は入れそうな道であった. しばらく森の中を進むと上にトンネルから出た路線の電線がちらちら見えるが, ここでは列車は見えないな…. やがて再び森の中の少し坂を上っていくと間もなくHaltestelle Wolfsbergkogelに到着.
[Wolfsbergkogel展望台 : ハイライト区間の中心]
このWolfsbergkogelは線路が斜面に沿ってぐるっと回り, 反対側を下りてくる区間の中心にある小山. 停車場から再び線路を離れ, しばらく森の中をゆるく上ってゆくと, やがて正面にDoppelreiterkogel櫓が見えてくる. まるっきり森の中だからこの櫓の階段を上らないと辺りの景色は見えない. なんか丹沢辺りを思い出す(苦笑). 上がってみると北側には, 既に雪を被って白くなっているSchneeberg山塊をバックに反対側の斜面を橋とトンネルでつないで縫うように走るBreitensteinからKlammにかけての線路が, 南側には先ほど通過してきたWolfsbergkogel停車場付近の線路が同時に見える.
Wolfsbergkogel
ちょうど間もなく列車が通過する時刻だったので, 櫓についていた写真付解説を見ながらしばらく待機していると, …先に来たのは貨物であった. やはり結構貨物列車も走っているんだよねえ. 続いて特急が来たので, 見え隠れしながらぐるっと回っていく様子を見物. 当たり前だがトンネルに入ると山間に響いていた走行音が聞こえなくなるので, どこを走っているのか分からなくなる….
ここから少し北側へ坂を下りていくとやがて道は西に折れ, 再び森から出たところにもう一つ展望台がある. こちらは高台から北のBreitensteinと西側のハイライトの鉄橋, KrauselbrückeとKalte Rinne Viaduktが遠望できる. 高さ46mの有名な二段橋であるカルテリンネ鉄橋(Kalte Rinne Viadukt)だが, ここから見ると下の森に半分埋もれてしまい, 下の段は見えないようだ. 今度は快速列車の通過時刻が間もなくだったので, 少々待機して2つの橋を渡るところを眺める.
[Wolfsbergkogel → Fischermannbrücke : 読み違いです]
ここでもう少し待っていれば続いてICが来るはずだったのだが, この先の道中でも見えるところがあるだろうと思って進んでしまったのが間違いで, しばらく見通しの利かない森の中を歩いているうちに列車の通過音が響いてきて, かろうじて木立の隙間から最後尾がちらっと覗いて…行ってしまった. どうやらBahnwanderweg(鉄道ハイキング路)という名前の割に, 列車が見える場所はかなり少ないらしい.
せめて次のLjubljana行ECが来る前に次のハイライトであるFishcermannbrückeに到着しようと, しばし急ぐ. 結果…早く着きすぎて待ちぼうけ. まあ間に合わないよりはマシだが. 橋の手前で待つこと15分, ようやく音が響いてきて, 来た! と思ったら回送の機関車一両であった. 更にぼけーっと待つこと5分, ようやくSlovenia国鉄の水色車両とオーストリア国鉄の赤色車両の混ざった列車がやってきた. 橋が短すぎて全編成入らないのは仕方ないか….
Fischermannbruecke
[Fischermannbrücke → Kalte Rinne : 再び外し]
谷底へ下りてFischermannbruückeを潜り, 車道を少し行くと, 線路の向こう側にあるハイキング路への入口がある. ここからやや急な斜面を少し上っていくと線路の真横約20m上に出るが, 間に木々があるので完全には見えない. そんな中で快速列車とすれ違う. ん〜よく見えない. まあお馴染みの80-73系City Shuttleの客車だからいいけど. やがて一瞬Breitenstein〜Schotwien方向の視界が開けたのでちょっとだけ鑑賞. しかしながらここからはほとんど線路は見えないので次の列車の来る前にと先を急ぐことにした.
線路と離れて森の中をしばらく西へ向かって歩くと林道と合流し, やがて一瞬右手(北側)の視界が開けると, 目の前には雪のRaxalpeをバックにしたKalte Rinne Viaduktが下にバンと見える. ここからなら下の段もちらちら見えていい眺めだが, やはり下の緑が濃くイマイチ物足りない. あいにく早く着きすぎて次の列車まではまだ20分. ここからは隣のKrauselbrückeはよく見えないので, もう少し行ってみようかと進んでしまったのが今回最大の失敗だった. どうやらここが唯一の下段鑑賞ポイントだったようだ. 春先で下の森の木々がまだそんなに伸びていないころならもうちょっと良く見えるのかもしれないが.
[Kalte Rinne ViaduktとKrauselbrücke : よく見えないよ…]
ここからはまったく視界が利かない森の中の林道を進み, やがて右に曲がって谷底へ下りてゆく. 途中で線路を横切るのでそのうち視界が開けるだろうと思ったのは大甘で, かろうじて線路直下で木立の間を走ってゆく特急をお見送り. しまったあ, 上で待てばよかったと後悔することしきり. 坂を下り切るとようやくKalte Rinne ViaduktとKrauselbrückeが見えたが, どちらも手前の木立が邪魔で存外良く見えない. しかしこれ以上進んでももっと見えなくなるだけのようなので, 諦めてここで次のVenezia行ECを待ち構える. ところがところがあろうことかせっかく待っていたというのに, 肝心のKalte RinneのViaduktを渡る写真の撮影を失敗! 今回の時間帯の国際列車は先のLjubljana行と今回のVenezia行だけなので, なんとかこの2回はいいポジションで見ようと思っていたのに…. ああやっぱり私はまだヘタクソです. しょぼーん…. 一気に重くなった足をなんとか持ち上げて, 次のBreitensteinの駅まで再び反対側の坂を登る. 駅にたどり着くにも橋の分, 約50m坂を上らないといけないわけだ. こりゃああまり列車を使いたくない気にもなるよなあ(苦笑).
[Breitenstein : ギャラリー]
このBreitensteinの駅は, 切符販売なしの田舎駅. しかも川式ホームにも関わらず, 両者を結ぶ地下道も陸橋もなく, 横断も駅員以外不可の標識があり, 駅の隣にある踏み切りを越えて反対側へ行かないといけないらしい. 駅舎のトイレを借りようとホームへ上がったものの, 反対側へ渡るために結局ホームの端まで引き返すはめになりげんなり. あげくは便所に入っている間にぴったりICが通過. なにやってるんだか.
ところでここの駅舎の待合室にはSemmering鉄道の写真がいろいろ飾られている. 既に走っていない旧型車両や観光用SL, 通常のハイキング路からは撮れない橋脚手前の線路際からのアップの撮影など結構素晴らしい写真が多く, しばし見物させてもらった. 誰もいないような田舎駅にも関わらず他に2人ほど鑑賞している人がいて, やはり見る人は見る, 名所なんだなあとちょっと実感した.
[Breitenstein → Klamm-Schottwein : 森の中]
Breitensteinからは森を抜けて牧場へ出る. 列車のトンネルの上にある牧場では牛が草を食んでいた. 谷を挟んで反対側に先ほど上ったWolfsbergkogelの櫓と展望台が見え, 紅葉でカラフルな森がなかなかきれいで楽しいが, 残念ながらここからではほとんど線路は見えない. Weinzettlwandの岩壁の上を迂回して反対側へ下りていくと道は線路沿いになるが, 間に木々が立ち並んでいるため今度はイマイチ眺望が利かない. ここからKlamm駅まで, 橋は3つあるが, 一つ目は短すぎで機関車と客車がうまくおさまらなそうで断念, 二つ目はまったく森の中で撮影不可, 三つ目は橋の足元をハイキング路が走っているため, 列車がほとんど見えず…. どうもこの辺りは列車を見るには適していないらしい….
ところでこの国で森の中を歩いているとよくリスに出会うのだが, 今日は一度珍しいものに対面した. サラマンダー. 黒の体にオレンジ色の斑点を持つこのあたりのサラマンダーは, つい先日行ったSchneebergの登山列車の車体のデザインに採用されているくらいだが, 実物は10cm強で結構かわいい. ハイキング路をのったりのったり横切っていったのでしばらく鑑賞していたが, あろうことか写真はピンボケしてしまった. がっくし.
やがてKlammの集落に出ると再び少し線路沿いを走り, ここで久々に(?)ICと対面. この村(?)も駅は集落から随分と外れた斜面にあり, 森を抜けて反対側の斜面に出たところで駅へ. 駅舎は一応線路脇にあるものの, 待合室があるでもなく, しかも駅舎からホームへ上がれないという, もはやただの駅長の家と化している. 駅舎とはまったく反対側の立体交差道路沿いからホームへ上がる階段があり, ここからホームへ上がる. ちょうど反対行の快速が来る時間だったので待ち構えていると, 休日限定運行の深緑色の観光用列車(Erlebnisbahn)が来た. いつもCity Shuttleばかりだとつまらないしね(苦笑). さて, 私が乗る予定の列車は更に1時間後だが, なにせ何もない駅で…暇. 次の駅までは時間的に歩くのは厳しそうだし, 仕方なくここで本を読みながら待ちぼうけすることにした. 薄日が出ていたとはいえ, さすがに気温10度そこらのホームのベンチではちょっと寒かった.
下調べをきちんとしていかなかったのが悪いとも言えるが, 通過列車鑑賞目的のハイキングとしてはかなりすれ違いや失敗が多く, ちょっと消化不良のハイキングになってしまった.

現地の行程

10/17(日) Semmering arr 07:42 鉄道 ---
dep 07:50 徒歩 --
Doppelreiterkogel展望台櫓 arr 08:15
dep 08:25
Wolfsbergkogel展望台 arr 08:30
dep 08:35
Fischermannbrücke arr 08:55
dep 09:20
Kalte Rinne arr 09:55
dep 10:15
Breitenstein Bahnhof arr 10:30
dep 10:55
Klamm-Schottwien Bahnhof arr 12:20
dep 13:23 鉄道 ---

参考


Mittel Europa Platzトップへ