ヨーロッパ週末ぷち旅行記 : Part 20

エメラルドグリーンの谷間とSL、イプスタール(オーストリア)

2004年9月11日(土)

[行程プラン : SL,狭軌,地方路線]
Niederösterreich州の山奥にエメラルドグリーンの川が美しいYbbstalという峡谷があり, ここを狭軌鉄道線が走っている. この路線の最奥部は現在旅客営業がなされていないが, 週末は観光SLが運行されている. またこのYbbstalの入口であるWaidhofen an der Ybbsへ南側から入ると, これまた深緑色の川面がきれいなEnnstalを抜けてゆくことになる. という訳で列車からの川の鑑賞とSLの線路沿いを歩いてついでに走るSLを眺めてこようと考えた. このSL路線部を挟んで反対の北側には幹線のWestbahnへ続くErlauf線が接続するため, 帰りはそのままそちらへ抜けることにする. 旅客営業が続いているYbbstal線も本数が非常に少なく, 日帰り可能な時間に乗れる列車は学校がある時期の土曜のみの運転ということで, 9月で学校が始まるのを待ち, 最初の土曜を狙って出かけた.

中欧全体地図
マップ

[Selzthal → Waidhofen an der Ybbs : 続くらしい]
Selzthal駅でKronprinz-Rudolf線のローカル列車に乗る. 3両編成+機関車で1両は半分荷物. 乗客はきっちり3人. Hieflauまでは以前も乗ったがともかく駅間が長く, 10分に一回程度の停車. 夕方に乗った前回とは反対に当たる日差しがだいぶ異なった雰囲気を醸し出しているが, それでもやっぱりHochtorの岩壁は素晴らしいのです.
Hieflauからはすぐに今は亡き南へのEisenerz線を分けて, こちらは北へ向きを変え, 流れが穏やかになったEnns川沿いを更に下ってゆく. 川の水は浅いところでは澄んでいて, 深いところでは深緑色, 周囲も岩っぽさがへって緑のなだらかな山並に囲まれた田舎路線をとことこ走るのは気分がいい. 一時間強で終点Kleinreiflingへ到着, 乗り換えのため下車. …って他に誰も降りないんですけど(汗). ここまではR3555, この先はR3519に変わって, そのまま同じ列車がAmstetten NÖまで走るらしい. 一度降りてしまった手前, そのまま何もせずに戻るのもなんなので, 発車まで10分ほど駅横の川沿いなどをぶらぶら.
KleinreiflingはSteyr経由でLinz方面へ向かう路線とWaidhofen an der Ybbs経由でAmstettenへ向かう路線の分岐点. Enn川はSteyr線の方に沿って流れるため, ここでおさらばする. Kleinreiflingの次の駅, Kastenreithあたりからはさらに谷も広がり, のどかな牧草地+畑の風景に変わる. Weyer Marktの小さな町を抜け, またしばらく牧草地帯を走るとやがてWaidhofen an der Ybbsへ到着する.
[Waidhofen : 駅は端っこ]
ヴァイトホーフェンアンデアイプス(Waidhofen an der Ybbs)駅は標準軌のKronprinz-Rudolf線と狭軌のYbbstal線の接続駅だが, Ybbstal線のホームはというと駅舎の反対側で, 番号はなんと101-103番線だったりする. のこのこそちらへ出ていくと, ちょうど一両ディーゼルのYbbsitz行が接続をとって発車するところであった.
さて, こちらでは良くあることだが, Ybbstal線への接続駅であるWaidhofen an der Ybbs駅は, Waidhofenの町の一番外れである. 一つ手前のWaidhofen Stadt駅も実はセンターからまだ距離があり, 最寄り駅はYbbstal線のSchillerpark駅だ. Ybbsitz行を見送り, せっかくLunz am See行までは接続が1時間以上もあるというのに, 町は3km彼方となると, さすがにほいほい見にいく訳にも行かず, 駅でぶらぶら. 売店があるもののこれではなんとも. はあ.
[Waidhofen an der Ybbs → Lunz am See : 澄んだ川に沿って]
11:30にYbbsitzへ行った列車が戻ってきて, これはそのまま車庫に入り, 入れ替わりに2両編成のやはりディーゼルが入線. しかもよく見ると2両目はやはりYbbsitz行. …前の車両を引っ込めた意味はあったのだろうか?
定刻11:33に発車した車両はこじんまりとしたかわいいWaidhofenの町を捲き, まもなくGstadtに到着. ここでわずか6kmの支線Ybbsitz行は分離し, 結局一両でYbbstalへと入ってゆく. Ybbs川は大きくEisenwurzenの山塊を回り込んで走るため, Lunz am Seeまでは直線距離だと高々20kmのところを約50km走ることになる. 緑の畑と牧草地の存外広い谷間をのろのろ走ってゆき時々民家や集落があると駅がある, という感じ. Ybbs川は両岸に木が茂っていることが多く, 必ずしも見える訳ではないのだが, 少し深さがあるところではエメラルドグリーンになる水はなにせきれいだ. 惜しむらくは水量があまり多くなく, 迫力不足だが. 学校日の土曜だけの運行というダイヤ通りまったく観光客を相手にしていなさそうな列車は, 地元客を少しずつ降ろしながら走ってゆく. ところがこの列車, 途中からやたらと減速して走るようになった. もしや車両故障では? とちょっと心配になったのだがどうやら途中で交換する対向列車がさらに遅れていたらしく, 10分遅れて到着したGroßhollensteinで, 対向列車はさらに数分遅れて到着. 後は順調に走っていたところをみると時間調整をしていたらしい. …駅で10分待つという選択肢はなかったのだろうか? すれ違った列車はかわいい客車の着いた3両編成だった. あっちの方が良かったな(苦笑). 約1時間半で結局ほとんど遅れ無しで終点Lunz am Seeに到着.
[Lunzer See : 奥だけど奥じゃない?]
ルンツアムゼー(Lunz am See)町外れにある駅からコンパクトな町並を横切り, 更に約15分ほど歩くとルンツァーゼー(Lunzer See)の湖岸に到着する. なにせローカル線とローカル線を乗り継いでたどり着いたところだけに, さぞかし山奥深い秘境かと思いきや…, 実際は車でちょいちょい来る人が結構いるローカル観光スポットであった. 単に湖畔のベンチでのんびりする人, 散策する人, ボートで遊ぶ人, 果てはダイビングする人まで. まあ確かに車でLinzあたりから来るには手ごろな距離だし, Salzkammergut等に比べるとマイナーで落ち着いてはいるが. 湖沿いのベンチは結構埋まっていたし, 他にすることもないのでとりあえず湖一周約4kmハイキング(笑).
Lunzer See
ところで一般的にはこの湖をLunzer Seeというが, 正確にはLunzer Seeというのは3つで, この湖は一番下のHinter Seeなのだそうだ. 上流側にちょっと岩っぽい谷間をさらに7,8km上って行くと, 約150m標高の高いMitter See, そして更にに400m上のOberseeへとたどり着く. ここまで行けばおそらくかなり秘境(?)なのかもしれないが, そこまでは時間がなかった.
[Lunz am See → Pfaffenschlag : SLトレイル]
さて, 15時程度にLunz am See戻りそこから更にハイキング. このYbbstal線(狭軌)はここから更に18km程北西のKienberg/Gamingまで線路が続いているのだが, 通常旅客営業は廃止されている. しかしこの60m上って250m下りるYbbsthalbahn Bergstreckeは現在週末を中心にSLの運行がされている. この土曜日も2往復走るので, その2往復目にあわせ, 線路際の遊歩道を歩いてSLとご対面(?)することにした.
しかしLunz am Seeの町外れから地図をみながら遊歩道の入口を探すが, 標識らしきものがない. よく見ると線路と道路の立体交差脇から線路へ上がる踏み跡があり, 上ってみると線路際に更に路は続いている. どうやら遊歩道というのはまさに線路脇らしい. ちょっと待て. さすがに線路から1m弱でSLとすれ違うのは避けたいぞ(汗). という訳で, とりあえず距離と時刻を考え, Kienberg/Gamingから来るSLと, もし線路脇に隙間がない場合最悪Holzapfelの駅ですれ違えるようにちょっとペースを上げて線路沿いをてくてく. 線路は谷間の端の一段高いところを走っているため, 谷間の景色は良く望める. もうちょっとのんびり歩けたら気分よさげだけどねえ(苦笑). Holzapfel駅直前で線路沿いにインカーブを切るところがあり, そこが開けて草原になっていて絶好の列車待ち合わせポイントになっていたので, そこで待機. 程なく軌条を走る音と警笛が聞こえ, SLが登場. さすがに夏休みも終わったせいか, 客車は結構空いており, のんびりお客さんや運転手さん車掌さんまで揃って手を振ってくれてちょっと嬉しかった.
Bergstrecke Ybbsthalbahn
さて, この列車はLunz am Seeで折り返してくるので, その間にもうしばらく歩くことにする. Holzapfelを過ぎると本格的な上り坂になり, 遊歩道は線路から少し離れて先に坂を上ってしまう. 約10分歩くとじりじり上がって来た線路と再びご対面. この先は岩の切り通しなど, しばらく線路は狭いところを抜け, 遊歩道は何度か迂回するため, この辺りもSLとご対面するにはイマイチ視界が利かないなあと思っているうちに結局遊歩道の端に到着してしまい, Bodingbachで線路から分かれて一般道へ降りる. Bodingbachと次のPfaffenschlag間は分水嶺で, ここまでは南に流れてYbbs川へ, ここから先はこれから帰る方向のErlauf川へと流れ込む. Pfaffenschlagまでほとんど車の走らない車道をてくてく上るとPfaffenschlagの民家がいくらかある. ここが線路脇ハイキング路の終点らしく, もう線路脇を道路が走らなくなるので, 結局その端っこの牧草地の中を横切る道路際で折り返しのSLを待つことにした. ところがこのSL, 予定時刻になってもさっぱり現れない. そろそろバスの迫ってくるだけに, ちょっとそわそわし始めた15分後にようやく到着! ほっ. デジカメ写真を撮って列車を見送ると, Pfaffenschlagのバス停まですたこら戻る.
案の定途中でほとんど止まらない田舎のバスは予定時刻の3分前に到着, 乗客は他に1人だけだった. この旅客営業廃止区間のLunz am SeeとGaming間はPost Busが走っているが, なにせ土曜は3本だけ. それでがらがらなのだから, 確かに使われていないのかもしれない…. のんびり走るSLを尻目に, バスはSLを追い越して先にKienberg-Gamingの駅に到着した.
[Kienberg-Gaming → Pöchlarn : 非観光ローカル線]
キーンベルク・ガミング(Kienberg-Gaming)駅は田舎の行き止まりローカル線の終点らしく…かどうかは知らないが, 切符販売業務無しの駅. ホームの端に旧型車両を利用したようなお土産屋さんがあったが, これも営業時間外. しばらく待っているとPöchlarnからのワンマンカーが到着したのでそれに乗り込み, 運転手さんから切符を購入する. 遅れて到着したSLの乗り換え客はほとんどおらず(どうやらここまで車で来る人がほとんどだったらしい), 4-5人だけの乗客を乗せて列車は出発した. ただし途中でそこそこ地元民やサイクリング帰りらしい自転車持参の人々が乗ってきたので, まあ使われてはいるらしい. Scheibbsを過ぎると谷間はぐっと開け, あとはトウモロコシ畑の中をとことこ走って約1時間でWestbahnのペヒラーン(Pöchlarn)駅へ到着した. この駅は特急(IC/EC/ICE)の停車駅ではないので(通過専用線まである)快速列車(Eilzug)でのんびりWienへと戻った.

現地の行程

9/11(土) Selzthal dep 8:29 R3555/R3519
(土日運行)
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(19.4Euro)
Waidhofen an der Ybbs arr 10:29
dep 11:33 R6907
(登校日土曜運行)
Lunz am See arr 13:00
Lunz am See散策〜Lunzer See往復,一周 ---
Lunz am See dep 15:05 徒歩
Bahn Erlebnis Wegハイキング
Pfaffenschlag dep 16:51 Postバス1670 1.9Euro
Kienberg-Gaming Bhf arr 17:05
dep 17:13 R7031 10.2Euro
(18.5Euro)
Pöchlarn Bhf arr 18:13
dep 18:34 E1807
Wien Westbahnhof arr 20:00

参考


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