「桃太郎完結篇」
川へ洗濯に行ったおばあさんが、発見・回収した桃から生まれた桃太郎が成人し
鬼ヶ島へ鬼退治に出かけた翌日、おじいさんとおばあさんは鬼ヶ島の方向にかつて見
たことのない強烈な閃光を見た。
「ばあさんや、ばあさんや、あの光はいったい何じゃろう」
おじいさんの問いかけにおばあさんが答えようとした瞬間、激しい衝撃波がふたり
を襲った。
激しい地鳴りのような音が聞こえたかと思うと畑に植えた作物が竜巻とともに天に
舞った。暴風で飛んだ小石と砂がふたりの老人に容赦なく降り注いだ。庭にあった材
木は踊るように転がった。
そして静寂が戻った。畳の上にうずくまっていた老人たちは、恐る恐る顔を上げ
た。おばあさんがおじさんの方に近づこうとしたとき、つぎの衝撃波がやってきた。
一瞬の静止は躍動へ変わり、あらゆるものが宙に浮いた。わらぶき屋根は粉々に
なって吹き飛び、畑の作物は地面ごと剥ぎ取られた。家畜の豚や馬は横倒しになり、
鶏は空の彼方へ吸い込まれた。必死に隠れようとしていた老人たちも、強烈な圧力の
風により吹き飛ばされた。おばあさんは山の方向に、おばあさんは川の方向に吹き飛
ばされた。
突如襲った衝撃波により、村は壊滅状態になった。田畑は荒れ、家畜の大半は死ん
だ。さいわい、おじいさんとおばあさんはかすり傷程度の軽傷で済んだが、村人の多
くは重傷を負い、死者もかなりの数に及んだ。
数日して村全体が落ち着くと、村民の災害対策会議が開かれた。
「今度の突風はすごかっただ。これじゃあ村の再建もできやしねえ。もうこの村もお
しめえだ」
「ばかこくでねえ。国が何とかしてくれるはずだ。わしらちゃんと毎年きっちり税金
収めてるだからな」
「じゃあなぜ救援隊が来ねえだ!!突風の日から電話も通じねえし、テレビだって写
りゃしねえだ!!」
殺気立って激しく口論する村人たちを抑え、村長がこう言った。
「まあ待て待て。何がおきたか誰にもわかっちゃいねえ。まずは情報収集だ。話はそ
れからにすべえ」
村長の提案により、ある程度情報を集めてから再びこの災害に関する会議をひらく
ことになった。
数日後、村一番の俊足の青年が隣村から情報を集めて戻った。
「わかったぞ!!わかった!!みんな、何が起こったかわかっただ」
俊足青年が叫ぶと、村中から人が集まってきた。
「聞くだ!!おらの話を聞くだ!!今度のことは、全部あのよそものの桃太郎が悪い
んだ!!」
「どういうこった。ちゃんと説明しねえと、わけがわからねえ」
「まあ聞いてけろ!!桃太郎が鬼ヶ島へ行った話は知ってるな。そこであの野郎、鬼
どもに負けそうになったからって、とんでもねえことをしやがったんだ!!」
「とんでもねえことって、何だ」
「野郎、核兵器を使いやがった!!こないだの閃光も突風も、みんな桃太郎が使った
核兵器の影響だ!!」
俊足青年の発言により、村中が騒然となった。
「じゃあおめえ、ほかの村も壊滅状態だってのか?」
「そうだ!!隣り村なんかもっとひでえ。ほとんど燃えちまった」
その言葉により、村人たちのざわめきは、ヒステリックなものに変わった。そし
て、誰からとなく、桃太郎を敵視する声があがった。
「みんな桃太郎のせいだ!!!」
「桃太郎をふん捕まえろ!!!」
「桃太郎をぶっ殺せ!!!」
そこへ桃太郎の育ての親であるおじいさんが割って入った。
「待ってけろ!!桃太郎は決して悪気があってしたわけじゃねえだ。相手は鬼だ。あ
あでもしないと」
おじいさんが言い終わる前に、殺気立った村人が叫んだ。
「何を抜かすかこのド蓄生!!てめえの息子こそ鬼だ!!それを育てやがったおめえ
らはもっと鬼だ!!みんな!!このじじいとばばあをとりあえず血祭りにあげろ!
!」
狂気の群衆はおじいさんとおばあさんを縛り上げた。誰もが口々に憎しみと怒りの
言葉を叫んだ。もはやこの狂った興奮状態はだれにも鎮められなかった。身動きの取
れないふたりの老人は、殴られ、蹴られ、畑の中へほうり出された。
「次は桃太郎の野郎だ!!やつをふん捕まえてぶち殺せー!!」
狂乱の集団は、手に手に刃物を持ち、鬼ヶ島の方向へ向かった。
その後、荒れ果てた村に残ったおじいさんとおばさんは、帰らぬ桃太郎の帰りをひ
たすら待ちつづけ、その生涯をとじたという。 (終)
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