「浦島太郎完結篇」

子供に暴行を受けていた小亀を助けた礼として竜宮城で飲めや歌えやの接待を受け
て地上に戻った浦島太郎が見た光景は、無限に続く砂漠と乾ききった青い空だった。

「こ、これが、地上、なのか?」

変わり果てた故郷の地を見た太郎は、絶望のあまり涙を流し、叫び、熱く乾いた砂
を何度も叩いた。

「竜宮城へ行くと時間が速く進むとは聞いたが、まさかこんなことになるとは・・
・。いったい俺はどうしたらいいんだーっ!!」

その叫びに答える声はなかった。

泣きつかれ、途方に暮れた太郎だったが、やがて元気を取り戻し、生き延びる道を
模索し始めた。

「そうだ、竜宮城でもらった玉手箱があったんだ。食料が入っていればいいんだが
・・・。とにかく玉手箱を開けてみよう」

玉手箱の中からは、1足の靴と、1通の手紙が出てきた。手紙にはこう書かれてい
た。

”愛しの太郎様
この手紙を読む頃には、
人類は滅亡し、地上は砂漠と
化していることでしょう。
でもまけないでください。
生き延びてください。
そしてもう一度亀を助け、
竜宮城に来てください。
いつまでも待ってます。
                  魅惑の乙姫より”

玉手箱から出てきたナイキ・エアマックスを履いた太郎は、手紙を握り締め、北へ
と歩いていった。

地上に戻ってからもう二日目。もう数十キロは歩いたが、何も見つからない。生き
物の気配も無い。熱い砂漠と太陽がどこまでも続いている。だが俺はあきらめない。

三日目。まだ何も見つからない。水が欲しい。このままでは死ぬ。どうにかして水
を見つけなければ。

四日目。俺はこのまま死ぬのだろうか。もう汗も出ない。何も見つからない。疲れ
た。眠りたい。

五日目。幻覚を見たらしい。目覚めたら釈迦如来が立っていた。死が目前に迫った
が、わずかに残った気力で俺は歩く。

六日目。オアシスを発見した。わずかの水とほんの少しの草が生えていた。6日ぶ
りにのみ、そして食べた。命が満たされた感じだ。

七日目。オアシスを後にする。

八日目。オアシスで手に入れた水と食料が尽きてきた。再び飢えと乾きに襲われる
のか?怖い。

九日目。懐かしい潮の香りを感じた。だが見渡す限り砂漠だ。しかし、ほんの少し
風が吹いているようだ。風上に向かって歩く。

十日目。遥か遠くに、砂漠とは違う何かを発見した!!砂漠とは違う何かだ!!オ
アシスだろうか?あそこに水はあるだろうか?食料は?とにかくあそこを目指すしか
ない。生き延びられる希望が見えてきた。

それから2日の間、太郎は黙々と歩いた。遥か遠くに見えるその何かを目指して歩
き続けた。

夕方、とうとうその地のまじかに迫った。疲れ果て、朦朧とした太郎だったが、そ
れが何なのかを見定めるため、最後の力を振り絞り、そこへ向かってさらに進んだ。

そしてついに、太郎はその場所に到達した。太郎は目の前に広がる光景を見て、叫
んだ。

「これは・・・う・・・海なのか!?」

太郎が見たものは、石のように硬くなった塩の平原だった。果てしなく続くその平
原からは、太郎が故郷でかいだ、あの懐かしい潮の香りが漂ってくる。足元には、白
骨と化した小亀が埋もれていた。それは、地上に戻った太郎が最初に出会った生き物
の姿だった。

太郎は再び絶望した。

夕日に染まる塩の平原を目の前にし、砂の上に重く倒れ込んだ。

朝になり、太陽が砂の上に横たわる太郎を照らしたが、太郎の体が再び起き上がる
ことは無かった。

感想 待ってます。upaida@white.interq.or.jp

世紀末童話集へ  トップページへ