悪魔の見えざる手
馬鹿メディア、エセ知識人によってばらまかれる「日本の援助は悪」という大嘘
中宮 崇
日本は海外援助を止めてしまうべきなのか?そんなばかなことはない!
科学技術文明を築く事に成功したこの日本において、未だにある迷信が根強く信じられている。「日本の海外援助は、現地の貧困層を苦しめている」というたぐいの迷信である。
この手の迷信を広めているのは、例のごとく馬鹿メディアとエセ知識人の馴れ合い連合軍である。今回のペルー大使公邸人質事件においては、MRTAとかいう誘拐業者の戯言に惑わされたこの手の悪質な詐欺師どもが、またもや勢力を伸ばしつつあるようだ。
その連合軍の参謀とでも言うべき人物の一人として、新潟大学教授である鷲見一夫が挙げられる。彼はこの手の根拠薄弱の大嘘をならべた本を岩波書店から出している「大物」であるが、1月16日の週刊新潮で、ペルーに対する日本の援助について暴論を吐いた。いわく、「とりわけ日本は大統領が日系人ということで多額の援助を行ってきました。受け取り方によればODA(筆者注:政府開発援助)もテロなんです」。
ペルーの経済発展のために日本が行っている援助が、MRTAのような犯罪組織がやっていることと同じような「テロ」だと言うのだ。このような人物が堂々と大学で教授なんぞしていられるのでから、我が国の高等教育の行く末はそうとう暗い。
朝日新聞も1月20日の社説でこう言い切る。「日本でこうした大統領の強圧的な姿勢を無条件に支持し、その援助は一部の人々だけを潤している、と一般市民の目にも映っているのだとしたら、反省すべきであろう」。
そんな「市民」がいたら、ぜひとも取材してきて声を聞かせてもらいたいものだ。だが、悪質で無責任さで定評のある天下の朝日のこと、そんな取材など全くしていない。完全な邪推に基づいたこのようなでたらめを垂れ流す意図は、いったいどこにあるのだろうか。大体、朝日の言う事を忠実に実行するとすれば、一番先に停止しなければならないのは中国と北朝鮮向けの援助であろう。これらの国におもねる朝日新聞は、卑劣にもそのことについては口をつぐんでいる。北朝鮮の独裁者とペルーの大統領とどちらが悪人か、まともな頭を持っていれば答えは明らかである。だが、朝日新聞にはまともな頭を持った人間がいないようである。
確かに、日本の援助によって泣きを見る貧困層は居るに違いない。重箱の隅をつつくがごとく態度で探せば、天下の嘘つき朝日のこと、一人ぐらいは探してこれるだろう。だが、一方で現に経済的恩恵を受ける人たちが多数居るのだ。
水力発電所が作られる事によって、立ち退かされる人たちは確かに泣かされる立場の人間であろう。現地の業者や役人が、リベートをポケットにねじ込む事もあろう。しかし、発電所建設によってもたらされる経済効果は、万単位の人々の生活を、短期的にも長期的にも確実に向上させるのだ。そのことを無視して、食糧配給や井戸の掘削のような「草の根援助」ばかりを賞賛するこの手の悪魔たちは実際には、ペルーを永久に援助に頼らざるをえない極貧国のままにしておこうとしているのだ。道路や発電所の代わりに井戸ばかりたくさん作って、一体どうやって深刻な失業状態を解消できるというのか?失業を解消できなくて、一体どうやって彼らを貧困から救い出せるのか?連中には、1グラムほどの脳みそばかりか、1グラムほどの良心さえないようである。
確かにODAには様々な問題が存在する。改善の余地も多くあろう。しかしだからといって、「援助なんて無い方が良い」とか、ましてや「日本の援助は貧困層を苦しめている」などと言う馬鹿どもの戯言には、一片の正当性もない。我々市民は正しい知識を身につける事によって、「悪魔の見えざる手」に断固として立ち向かわなければならない。
なかみや たかし・本誌編集委員